海外のポッドキャスト番組「Penn’s Sunday School」にて、エンターテイナーのPenn Jillette氏は、『Desert Bus』のVRリメイク版を計画していることを明らかにした。『Desert Bus』は2011年にチャリティ企画としてiOS/Andorid版がリリースされ、8時間ただトラックで砂漠を走り続けるという馬鹿馬鹿しさで注目を浴びたタイトルだ。実現すれば、ただVRマウントヘッドディスプレイを装着して8時間ものあいだつまらない運転を続けるという、世界で一番無意味なVR体験が生まれることになるかもしれない。

8時間ただ走り続けるバカゲーム

『Desert Bus』は、もとは1995年にリリース予定だった未発売のメガCD向けオムニバスゲーム『Penn & Teller’s Smoke and Mirrors』に収録されていた作品の1つ。プレイヤーはバスの運転手となり、アリゾナ州のツーソンからネバダ州のラスベガスまでの道のりをひたすら走り続けなければならない。近年流行している運転シミュレーター系の作品などでは無く、道中は完全な1本道で風景も変化せず、ほかの車両とすれ違ったりすることも無し。たまに登場するのは岩やバス停だけで、自身が運転するバスには乗客すら乗っていない。

無味乾燥なゲームプレイに加え、最高時速72km程度でツーソンからラスベガスまでの延々と続く道のりを走らなければならず、クリアにはおよそ”8時間”が必要になるというのも本作の馬鹿馬鹿しさの1つだ。しかもゲームからはポーズ機能が完全に排除。またプレイヤーが操作する車は徐々に右へと傾くという仕様が設定されており、道路から外れてしまうとレッカー車に運ばれ、今まで走ってきたのと同じ時間をかけてスタート地点へと戻されてしまう。つまりゲームをクリアするには、中断することなく実際にリアルタイムで8時間、車の運転を続けなければならない。

ラスベガスにたどり着くと「1ポイント」が与えられ、エンディングを迎えるか折り返してプレイを続けるかを選択することができる。最大スコア99ポイントを獲得するには、実に33日間もの時間が必要と伝えられている(ビデオ: Loading Ready Run’s Desert Bus Speed Run Channel

『Desert Bus』は未発売で世に出回っていなかったものの、幸か不幸か2005年に業界メディアGamasutraの編集者によって発掘され、その後多くの愛好家たちから注目を浴びることとなった。2011年には前述のChild’s Playチャリティ企画「Desert Bus for Hope」に合わせiOSとAndroid向けにリリースされ、チャリティマラソンにて311万ドルの寄付を募っている。

そしてこのゲームの主役だったエンターテイナー/マジシャンコンビ「Penn & Teller」のJillette氏は、現在さらに同作のVR版を開発することを目論んでいるわけだ。開発には『Borderlands』シリーズの開発として知られるGearboxのCEOのRandy Pitchford氏が関わっているそうで、今回もチャリティ向けタイトルとしての展開が予定されているとのこと。Jillette氏は複数のタイトルを収録したゲームバンドルとしてのリリースを模索していると伝えており、対象プラットフォームはおそらくOculus RiftかPlayStation VRになるとも続けている。

実に8時間にわたりVRマウントヘッドディスプレイを装着するとなれば健康面への心配も考えられるところだが、はたして世界一無意味なVR体験が本当に生まれることとなるのか、続報に注目したい。

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