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【大切なお知らせ】亜鉛華顔料によるトラブルについて。(2008/10/23)

 

これまでも亜鉛華にまつわるたくさんのトラブルがありましたが、現在も気づかない形で続いていて、ホルベインは大きな危惧を抱いています。せっかくの大事な作品が台無しになってしまわぬように、ご注意していただきたいと思います。


本来、顔料(色の粉)は不活性(他の何ものとも化学反応しない性質)でなくてはなりません。絵具の糊と顔料を混ぜ合わせたときに糊と顔料が化学反応してしまうと糊が糊としての働きをすることができません。


様々な顔料の中で、唯一、乾性油(油絵具の糊)と反応するのが亜鉛華です。絵具としては、ジンクホワイトがそれに相当します。ジンクホワイト自身、塗膜が硬く、脆くなっていきますが、塗り重ねられた色は、現象としてはもっと顕著で、重合が阻害されて、亀裂や剥離を起こします。絵具は基本的には色の着いたボンドであるため、それ自体、必ず下地にくっついて固まろうとします。従って、それがくっつかなかったり、割れたりするのであれば、まず、下地の方に原因があることは疑いようがありません。しかしながら、絵を描く立場からしてみれば、割れたり剥がれたりすれば、上に塗った絵具に問題があると考えるようです。


最近起こった、特徴的なトラブル例をご紹介しましょう。


ある作家さんが、キャンバスを再生するためにホルベインのクイックベースを塗ったところ、部分的に剥離したというクレームでした。最初、お宅のクイックベースが悪いとかなり、お叱りを受けました。たまたま、作品が小品であったので、実物をお預かりして、これを調べてみる事に致しました。すると元々塗られていた絵具層の一部に亜鉛華を含む部分があり、この部分の上に塗られたクイックベースが剥離している事が分かりました。その作家さんに、結果を報告し、ジンクホワイトをお使いになった記憶はありますかと聞きましたところ、使っていないとのお話しでした。では、お使いの絵具の中で、組成にPW4と表示のあるものはありますかとお聞きして、調べてもらったところ、それならばあるとのご返事でした。結局、下地に塗られていた絵具層に亜鉛華の入っていた事が真の原因だったわけです。

 

最近では、ほとんどの方が、ジンクホワイトの危険性について認知されるようになってきたものと思われます。ホルベインでは20年ほど前から、ジンクホワイ ト以外の色(コンポーズ系、グレイ色など)に亜鉛華を使うことを止めました。しかし、今も亜鉛華を含む絵具は世界に数多あり、それらについては、ユーザー の危機意識が及ばないわけです。今回のトラブルでも、作家の方はまさかと思われたことでしょう。


亜鉛華の混色時の美しさ故に、世界中のメーカーが様々な色を作り続けています。作家自身が最も被害を受ける事になりますので、ホルベインのみならず、


『絵具組成のCI.Nameに「PW4」とあるものや「亜鉛華」「酸化亜鉛」とあるものについては、絶対に下地に使わない。』


と言うことを徹底していただきたいものと考えています。尚、先程の例のように、下地にどんな絵具を使っていたか分からないキャンバスについては、再生の際に、余程慎重にやられるべきでありましょう。

CI.Name

 

最終更新 ( 2011年309日(水曜日) 19:16 )