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See, that’s what the app is perfect for.

Sounds perfect Wahhhh, I don’t wanna

最後に

これまでお付き合い頂いて、ありがとうございました。

もうまもなく、店舗はオープンします(大丈夫か?)。オープンしてからが本番ですので、まだまだ書いてないことはありますが、ブログはこれにて終わりです(開店直前には、ホームページもリニューアルしますが、そちらでもアーカイブで読めるようにしております)。

店舗は独力で作った訳ではありません。とても全ては書けないのですが、最後にお世話になった方々を。

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福岡の独立書店・ブックスキューブリックの大井実さんには、独立を考えたときから相談にのっていただきました。キューブリックの小さいながらも町に溶け込んだたたずまいは、店を考える際に大いに参考になりました。何事も先を照らしてくれる人があってこそできるものです。ありがとうございました。名古屋のON READINGの黒田夫妻にも何かとうるさく聞きました。書店では私が先輩ですが、独立しても常に挑戦している二人には見習うところが多いです。

ロゴ、イラストと看板は、nakabanさんの手によるもの。公開はまだですが、ホームページの写真は齋藤陽道さんに撮って頂きました。いずれも自分が素晴らしいと思っているアーティストに快く仕事を引き受けて頂いて感謝しております。ホームページは宇賀田直人さんに作成していただきました。偶然にも宇賀田さんには、一週間の間に誠光社さんとTitleの両方から依頼が来たようです。本屋づいてますね。

内装をお願いしたフォレストピアの中村さんには、感謝してもしきれません。今後もお忙しそうですが、とりあえず早く寝ることができる日がくるように。

そして、古巣・リブロの方々には、辞めた人間にも関わらず、物心両面でお世話になりました。休みの日にわざわざ棚詰めに来てくれた後輩もいましたし、三浦正一社長には様々な便宜を図って頂きました。この場をお借りして、お礼申し上げます。

最近は独立する方へのアドバイスを聞かれる事が多いのですが、「円満退社が何より大切」ということで締めたいと思います。ありがとうございました。

開店日のお知らせ

Titleは1月10日(日)の11時にオープン予定です。営業は11時〜21時まで。毎週水曜日と第三火曜日に休みを頂きます(今月の13日は営業致します)。
なお大変恐れ入りますが、しばらくの間カフェはドリンクのみの営業とさせて頂きますので、予め御了承くださいませ。

当分は落ち着かなく、商品やサービス、設備などでまだまだ行き届かないところが多いかと存じます。順次、店の営業とともに直していければと思い、まずはとにかく開店することに致しました。

みなさまのお越しを、心よりお待ちしております。

お金のはなし

このブログで書いてきました通り、これまで本屋開店への準備をしてまいりました。いま、その形が出来上がりつつあるのですが、本日は書ききれなかった事、伝えきれない事など。

マニアックな話で、普段より専門的、テクニックによった話が多いです。おまけに長いですので、興味がある方がいらっしゃれば読んでくださいという感じです。

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ここまで書いてきて、お金の事にはあまり触れませんでした。生々しいことなので避けてきたのですが、恐らくは皆がぼんやりと気にかかっている事ではないでしょうか。

本屋を作るにあたっては大まかに言って下記のお金の支払いが必要になります。

①    物件取得の金額(月の家賃に加え、敷金+礼金など)

②    内装工事の金額。業者により様々かと思います。通常は工事業者が電気やガス、空調システムなどの諸々の設備工事を間に請け負い、まとめてやり取りするケースが殆ど。

(但し、業者によりここの分け方は様々です)

③    設備費(本棚、備品、その他運営に関する資金/カフェなど他業種を併設して行うならば、その金額も含まれる)

④    商品仕入代金(本の仕入、その他)

⑤    運営に関する資金(人件費、予備費、消耗品費など)

「店を開くには」というような本を買ってみると、そんな事がつらつらと書かれており、実際に開いた人のインタビューなどが載っていますが、「結局ケースバイケースなんだな」という事しかわかりません。実際に始めてみると、想像外の「こんなお金も必要なのか!」という事が多く発生します。

個人で一から始める場合は、決められたフォーマットや、企画書通りに物事が運ぶという事はまれで、出てきた事案にどう対応するかという事が求められます。

きちんと決まり通りに動く社会に慣れていると「こんなので本当に良いのかな」と心配になりますが、とにかく使えるものはなんでも使って、あり合わせのもので何とかするという構えが必要です。お金と質と、はかりにかけなければならないことがその都度発生しますので、何が譲れないのかがずっと問われたような気がしました。

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①と②に関しては、その経緯を細かく書きました。これは場所と自分の趣向をよく考え併せた上で、事前リサーチを行う(と言っても、歩いてピンとくるかどうかという程度ですが)のが良いかと思いますが、その上に運の要素が大きくかかってきますので、とにかく粘りです。

現実的には、従来書店の出店地とされていた駅前の一等地は、家賃が殆どの場合高く、他の業種に負けてしまう事が多いです。いかに二等地・三等地でも人に来て頂くモデルを作れるかがこれからの書店(特に路面では)には重要かと思いました。


③は値段を抑えようと思えば工夫次第で何とかなる部分です(自分で内装まで行える人は②とも絡む話です)。Titleでは什器・備品などは裏技を使いました(書けません…)。

厨房まわりだけでなく、本棚なども中古屋さんがありますので、調べればすぐに出てきます。ただ、イメージと合う合わないもありますので、そこはDIYの可能性含めて考えましょう。


④が重要です。Titleの初期在庫は最終的に約1万冊ほどです。それだけの数の本を仕入れるのはかなりの金額になるのですが、工夫次第ではここも抑えられます。

一般に本は取次という問屋と契約し、そこから仕入れをして取り寄せるというシステムです。売れなかったものは殆どの商品が返品可能で、返品したものは仕入をしたものより差し引かれますので、殆どの中小書店は、そうして月の支払いをやりくりしていると思います。いわば他の商売とは異なり、最初の元手が大きく必要ですが、そこからは調整がある程度効くというものです(ただしこの事は原則論で、変化の予兆は色んなところで現れています)。

これだけの大きなお金は払えませんので、初回の仕入れ値の支払いを抑えるために、二つのやり方を取りました。

・直取引

・出版社との長期(常備)契約の個別契約

「直取引」は、上記のように問屋を通さず出版社と書店が直接取引を結ぶというものです。取次を通さない分だけ、出版社と書店の取り分が増えるうえ(契約によりますが)、委託契約を結べば、年に何度かの売上調査を行い、売れた金額のみを精算するだけなので、書店にとっては在庫として支払う金額が少なくなるメリットがあります。ただし、年に何度かとはいえ、店内に散らばった在庫をカウントして報告、支払いという面倒がありますので、そうした手間を考えなければなりません。

「長期」「常備」とは一般の方には耳慣れない言葉ですが、今回のパターンで言うと支払いを後にする、そして支払い時期に全てその商品を入れ替えてまた次の年度を迎えるというものです(ああ、説明しずらい…)。

そうすることで、書店は在庫金額の負担を減らすことができ、版元は自社の商品をある一定期間、ずっと置いておくメリットが出てきます。Titleではあらかじめ自店のコンセプトに合った出版社が分かっていたので、そこと交渉して出来るだけこうした条件を付けて仕入れる事にしました(もちろんすべての出版社が対応してくれる訳ではありません)。

そのためには、出版社と交渉する必要があり、こうした店を作りたいという説明が必要です。後の問屋の窓口の開設の話とも絡みますが、予め店の商品コンセプトを固めておくと、説得力と必死さが増します。どのような出版社と深く付き合うかは、店の方向付けに大きく関わります。

Titleでは、こうした二つのやり方を取りながら、初回の支払金額は、仕入れた商品の70%弱に抑えております(高額な専門書の出版社に多く助けて頂きました)。

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取次に支払うのは、商品の支払いだけではありません。取次はこちらがお金を支払う前に商品を送るため、お金の回収が出来ないリスクを避けるための信認金を、取引予想金額を計算した上で、前もって預けます。

随分前には、それがものすごい金額のように言われておりましたが、今回口座を開設してみると、理由も含め妥当なものだと感じました。

取次は全く門戸を開いていないという訳ではありません(商売なので当たり前ですね)。それよりも、どうしたら本の売上の底支えが出来るかと考えているので、気運としては出来るだけ取引を増やしたいと思っています。

今回やり取りを行い、取引高の大小というよりは、信頼関係を問われているのかと思いました(支払いより先に商品を送るので当然の話です)。これは考えようによっては、本だけに頼らない少額の取引(例えば月に新刊本は100万も売れなくても、他の売上でそれ以外の部分を賄うなどのケース)でも、納得させるだけのモデルと期待感があれば、新刊本の問屋と取引を行える可能性が増えているのかもしれません。

(もちろん商品の輸送にも人件費やガソリン代、商品を置いておく倉庫代などコストがかかっているので、例えば他の店がない離れたお店に本を届けるのは、割に合わないという現実もあります。それをお互いどう歩みよるかだと思います。あと、取次にはもう少し新規の取引を増やすための、明朗さが必要なのではないかと思っています)


最後⑤ですが、これは忘れがちですが、月々の支払いになるので、予め準備金に入れておくのが大切です。消耗品(カバーや袋)などは、どの程度までお金をかけるのかはコンセプトによります(本来は書店の「サービス」なので)。もっと言えば、お金をかけないところには、それをコンセプトに合わせて「かけない事が当然」のようにしてしまうのも良いかと思います。


色々と書きましたが、こんなにめんどくさい事をやっているのだから、お店の中身はあれこれ反応を考えずに、思った通りにするのが良いと思います。

儲けるためだけにやっているのなら本屋でない方が儲かると思いますし、譲れない何かを持っている方が個人店の場合はお客さまに伝わりやすいと考えています。

2016年

あけましておめでとうございます。

今年は、Titleにとってはあたらしい年とともに、はじめての年になります。

どうぞよろしくお願いします。

この一年は、Titleの実店舗がまずは地に足付いたものとなるところから始めます。

近所に住んでいる方、遠方からご来店される方、どんなお客さまがいらっしゃるかをよく感じて、本屋・カフェ共にまた少し変わっていくでしょう。

あとは、本当を言えばオープン時にはやっておきたかったことを少しずつ進めます。

具体的には、

・オンラインショップ

・グッズ制作

・月替わりのオリジナルブックフェア

・古本の扱い

など。雑誌のようなものも作りたいなと思っていますが、これはもう少し先の話ですね。

お店のオープンに併せて、このホームページも新しいものに変わります。こちらも趣向を凝らしたものになりますので、ぜひ楽しみにしてください。

今年もみなさまと本との出会いが幸運なものでありますように。

年末

慌ただしい一年でした。これが今年最後の投稿になります。

今年は、私にとっては激動の一年でした。春に勤めていた店(リブロ池袋本店)の閉店が発表になり、それからは閉店に関する準備と対応に追われ、さまざまな涙、励まし、出会い、etc…があった後、同店は7月20日に閉店、7月いっぱいは後片付けをして、その後私は会社にいかなくなりました。

それからは、大体これまでブログで書いたような日々を過ごし、Titleの準備をしてきた訳ですが、いま思い出しても前半と後半で同じ一年を過ごした感じがしません。近年にない密度の濃い一年でした。

今年は年末年始は、ほぼ店の準備をしております。なんとなく体の芯が寒い、でも張り詰めたような時間です。受験生の時の正月を思い出します。

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みなさまは風邪などひかぬように、良いお年をお迎えください。来年、ほんとうに出来た本屋でお目にかかりましょう。

ギフト/内装工事・後編

多くの古民家がそうらしいのですが、この物件も図面は残っておらず、工事は壊しながら構造を確認し、線を引いていくところから始まりました。

建物の中で立ってみると、ところどころ湾曲したり膨らんだりしており、不思議な空間感覚。設計図通りにはいかないとはこの事で、人間臭い建物でした。

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天井を貫く大きな梁も、天井をめくる前はある事すら知りませんでした。天井はそのままでは使えない状態でしたので、はがす事は決まっていたのですが、この梁が出てきた時は、大きなギフトを頂いたように思いました。東京の住宅街の真ん中に、こんな古民家が残っていること自体が驚きであり、他にはないものですから。

木造建築は壊していくと、時間の積み重ねが見えてきます。材料が元々寄せ集められ、建てられた事を物語るかのように、柱には使われないホゾが多くの箇所に開き、この家の増改築の歴史を物語るように、かつて玄関だった事を思わせる屋根が家の横向きに付いていました。

そうした家に沿うように店を作っていきます。築何十年という建物なので、こちらの図面通りに物事を進めるというよりは、元々あった家の中に、どうすれば店が出来るかを考えて、あわせていく感じ。

そうした全てが面白かったのですが、店を作るには面白がってばかりではいられません。建物の中に入り、実際に動いているシーンを思い浮かべ、一つ一つ何が必要なのかを思い描くようになりました。限られた空間なので、無駄にする場所がないように、そこに置かれる商品の特性と合わせて当てはめていきました(階段下など、完成したら面白いスペースになっていると思います)。



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中村さんは、これまで勤めていた会社を辞めて、十数年前にフォレストピアという会社を起こしました。自分もそうした立場だから、独立して店をやる人の苦労はわかると仰っていました。

こうした予算も知識もない店舗づくりに関わって頂いて本当に感謝しております。幸運な出会いがなければ、そもそもお店というものは出来ないものだとわかりました。

ギフト/内装工事・前編

*この話は物件探しの顛末(前・後編)の続きです。

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お店をイメージ通り作るには、良い内装業者の手助けが必要になります。この分野に関しては素人同然なので、どこから手を付けて良いかわかりませんでした。しかも予算が限られているので、そもそも店を作ってくれる人がいないと話になりません。

店舗物件を借りる権利を得た時に、実際の契約は内装業者の見積もりを取ってからで良いというありがたいお話しも頂きましたが、決まるまで何か月も待ってもらえる訳ではないので、最低一週間位で借りるかどうかの目途は付けるというタイトなスケジュールでした。飛び込みでお願いするよりは、知り合いのつてなどを辿り紹介をお願いする方が安く済むかと思い、何社か細い糸を辿りながらアポを取っていきました。

しかしどこの会社も忙しく、工事の着工にかなり日にちがかかるケースが多かったり、普段大きな会社相手のところであればそもそも基本の料金が高かったりするので、「内装業者は決まらないが、物件契約を先に決めようか…」という気持ちに追い込まれてきました。

この度の抜け道のきっかけは、吉祥寺のひとり出版社・夏葉社の島田潤一郎さんでした。

会社を引っ越したので事務所で飲みませんかと誘ってくださったのですが、行ってみた事務所はすっきりと統一された、木の香りがツンとする部屋でした。聞いてみると、普段は個人の古本屋さんを多く手掛けている方にやってもらったみたいで、そうした方ならイメージの共有もしやすいのではないかと、その場で名前と電話番号を教えてもらいました。

翌日の朝、その中村さんに早速電話すると、その日の午後に吉祥寺の喫茶店で待ち合わせて話を聞かせて欲しいという事になりました。電話に感じの悪いところがなく、話が早い(これは仕事の受注に際しもっとも重要)ので、密かに会う前から何となく通じるものを感じていました。

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荒れた物件の現状写真を見て、中村さんは、「この物件に関しては見たところ築年数も古く、現状のものを壊してみないと作りそのものがわからないので、実際に進めながら話し合いを重ねて、予算に合わせていく事になります」と言いました。いわばブリコラージュ。決まった設計図ありきではなく、あり合わせの条件で、そこに合ったような店を作っていくという事です。

その方が面白いなと直感的に思いました。その後何社か別の方にもお会いしましたが、この予算・建物に必要だった人は中村さんだったのでしょう、この人にお願いしようという腹も決まり、不動産の契約も急ピッチで進めました。

*後編に続きます

4:6で選びました

よく、色んな人に「本はどうやって選んでいるのですか」と聞かれます。

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つい先日までオープン後の店に並ぶ本の発注を行いました(まだ延々とやっていますが…)。数えてみると、大体これまでで約8千冊の本を注文しました。それだけ聞くととても多いように感じますが、世の中に出回っている本から数えればほんの一部です。その中から、自分の店に合った本を選んでくるのです。

最初は、この本もあの本も置けないという事がとても気になりました(何しろこの夏まで、Titleの50倍の広さの店におりましたから)。しかし、一生かかっても世界中のすべての人と会う事ができないのと同じで、どれだけ大きな店でも世の中のすべての本は置くことができないという事を考えれば、店という限られた世界の中では、多かれ少なかれ「選ぶ」という作業が発生する事は仕方がなく、そこが面白いのだと割り切って考える事にしました。


ブログの最初に、Titleはセレクトショップではないと書きました。

本は実用的に読まれるものと、趣味的に読まれるものとがあると思います。どちらがどうだという訳ではなく、Titleは住宅街の中にある本屋なので、趣味的な本だけではなく実用的な本に関しても、いろんな方面で基本的な本を何冊かは置くように心がけました(極端な例ですが、病気になった人に近所の店として、少しでも実用的に協力出来るような事が必要だと思いました)。

まずは自分のこれまでの経験や、目指したい店の方向性に合うような4割位の本を選びました(これにはカギとなるものを選び出し、そこから様々に本を引っ張ってきます。例えば肌の合う本をたくさん出している出版社の一覧表、人物の著作リスト、キーワードからの抽出、などなど…)。しかしそれだけでは、何かしらの偏りがありそうですし、新刊書店としての敷居を上げたくないと思っていましたので、取次店からのジャンル別の売上データを利用して、そのリストから残り6割くらいを選ぼうとしました。

取次のデータを見ていると、本のコア層ではない人の動向が少し見えるような気がします。最近のデータはかなり分類が細分化されて順番になっているので、机上でジャンル分けをして、ジャンル毎に上から本を取っていけば店を作ることは可能なんだなと改めて思いました。流しながらですが、全部で30万タイトル位の本は見たでしょうか(チェック後、少し自分を誉めました)。

それでも実際には、かなり数を入れ過ぎていたので、そこから「売れてそうだから選んだが、それだけの理由だった本」「Titleに置いてある姿に、リアリティが感じられない本」などをひたすらはじいていき、結果として注文を出したものに落ち着きました。ここまで書いた通り、心ならずも結局本を「選んで」しまったので、ある統一された雰囲気になっているかなと思います(まだ実際に本が入ってきていないので、結果はわかりません)。

この上に、直接取引しているリトルプレスなどの種類が多いので、個人の色はどうしても消せなかったというのが、実情かもしれません。そうでなければ、わざわざ個人でやる意味もないですが、でも本当に最初こんな風には考えていたのですよ!!

*リトルプレスや、直扱いの商品に関しては、リストを別途公開する予定です。

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ワイナリー訪問

Titleのカフェでは、席数の割にはアルコール類をしっかりと置いています。その中から今回は、カフェで取り扱うワインをつくっている、ワイナリーに行った話を。

那須に行った時に飲んだ、「農民ロッソ」の味がどっしりとしているのにも関わらず飲みやすく、記憶に残っていたので(ついでに言うとネーミングとラベルも良かった)、店を出すときには、ここのワインを出そうと随分前から決めておりました。

秋も深まった11月、収穫祭の少し前に、ワイナリーのココ・ファームを訪れました。

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ココ・ファームは栃木県・足利市駅から車で15分ほど、少し山に入ったふもとにありました。

昭和33年、特殊学級の教員だった川田昇さんとその生徒さんにより開かれた葡萄畑から始まった農園は、現在も、こころみ学園の生徒さんが働いており、聞くところによれば元々は彼らになるべく仕事を与えようと、わざと手のかかる葡萄という作物を選んだそうです。

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一日山を登ったり降りたりしながら作る葡萄作りは大人でも大変ですが、そうした根気のいる作業を生徒さんは一生懸命行います(話を聞いたワイナリーの方が生徒さんの事を「農夫」と呼んでいたのが印象的でした)。

最初に学園前の山から始まったワイナリーでは、今では県内に幾つか農場があるほか、県外や海外の農園との提携もありワインづくりをしております。収穫のシーズンには、学校の生徒さんだけでなく、地域の人の手も借りてワインづくりを行うそうです。

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こころみ学園は、福祉の分野では先進的な施設でパイオニア的な存在ですが、中で働いている人は、生産物のワインが市場の商品として評価されている事こそに誇りを持っています。それはすごく健全な事だと話を伺いながら感じました。

ワイナリーでは、試飲や施設の見学が出来るほか、美味しい山の幸を中心とした食べ物を楽しめるレストランもありますので、ぜひ行ってみてください。東京から二時間足らずで、静かですが温かい場所がありました。

(ココ・ファーム・ワイナリー公式サイト)

http://cocowine.com/

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個人で本屋をやろうと思ったわけ

勤めていた会社を辞め、わざわざ個人の本屋をやる。「だいじょうぶ?」とか「なんで?」という感想が多いと思います。

「だいじょうぶ?」に関してはこれからの毎日で答えていくしかありませんが、「なんで?」という問いにはいくつかのお話し出来ることがあります。

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いまだに自分でもこうして開店準備をしている事が、どこか現実離れしていて、本当のことのように思えない瞬間があります。自分の強い意志というよりは、流れに乗っていると、いつの間にかその場所にたどり着いたような感覚が本当のところ。周りに個人で本の店をやっている友人・知人も多かったので、何となくイメージとしてはありましたが。

母親が一昨年の冬になくなったという事もありました。直接には関係のない話のようにも思えますが、違う時間の流れに身を置いている人のそばにずっといると、自分の立っている足元を考えてしまうようになるものです。

あとは、経済原理に振り回されずに、自分の言いたいこと、売りたい本を売りたいと思ったからでしょうか。逆説的な言い方ですが、いまでは本を売る会社にいては本を売る仕事が中々出来づらくなっています(もちろん会社によりますが、多くはそうではないかと推測します)。食べていくための最低限の事は考えていかなければなりませんが、それだけではない価値も大事に持っていたいと思ったのです。

組織が大きくなればなるほど、それだけの働く人を養っていかなければなりません。そこで話されることは、知らない間に殆どが数字の話に終始していきます。そうではない生き方を考えれば、自分で場所を作るしかありませんでした。

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そんなことや、勤めていた店が閉店する事もあって、タイミングとして〈いま〉になりました。いろいろ書きましたが、結局「やりたかったから」という言葉に尽きるような気もします。

幸い個人でやる小さな本屋だからこそ、一冊の本を丁寧に売ることが目の届く範囲にあり、それがどれだけ伝わるものなのかという事を、自分自身楽しみにしているところもあります。


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