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東芝が見せた意地、原子力技術を医療へ

超伝導を使った「重粒子線」、世界展開目指す

2016/01/13 00:00
大下 淳一=日経デジタルヘルス

 「超伝導や加速器など、原子力で培った技術を医療に提供できることは光栄だ。日本発の重粒子線治療システムを世界へ供給し、がん患者の役に立てたい」――。

発表会に登壇した東芝の畠澤氏
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 放射線医学総合研究所(放医研)と東芝が2016年1月8日に開催した、重粒子線がん治療装置向け「回転ガントリー」の完成発表会(関連記事1)。登壇した東芝 電力システム社 原子力事業部長の畠澤守氏はこう胸を張った。同席した同社 代表執行役副社長の綱川智氏は、医療機器子会社の東芝メディカルシステムズの売却に触れながら、重粒子線治療装置の事業は「東芝本体で責任を持って続けていく」と強調した(同2)。

 放医研と東芝が開発したのは、患者に対して360度の任意の方向から重粒子線を照射できるガントリー(治療中に患者の周りを回転して重粒子線を照射する構造体)。重粒子線の制御に超伝導磁石を使うことで、大幅な小型化と軽量化、そして省電力化に成功した点が特徴だ。装置サイズや稼働コストの低減により、「普及型」の重粒子線治療装置を実現する狙いがある。

 「超伝導を使った回転ガントリーは実現できないだろうと、世界の研究者からは言われていた。これを実現できたことはエポックメーキング。重粒子線治療に新たな世界が広がる」。放医研 重粒子医科学センター長の鎌田正氏は、今回の成果にこう自信を見せた。

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