騙されるな!「居住専用賃貸を自宅兼事務所にすると契約違反」は大ウソ

公開 更新

2016-01-12_1005
契約上「事務所可」と明示されていない居住専用賃貸アパートで、大家さんに無断でアフィリエイト事業をしてます。@web_shufuです。

最近、多くのウェブサイトが「居住専用賃貸を自宅兼事務所にすると契約違反」との主張をしていますが、全部真っ赤なウソです。

契約違反になんてならないし叩き出されもしません。

「事務所可」と明示されていない居住専用物件であっても、そこで事業をすること自体には全く問題がありません。

居住専用マンションを自宅兼作業場兼事務所としているブロガーやアフィリエイターは、そのまま安心して事業を続けて下さい。

見出しdeあらすじ確認

説明の前に読んでほしいこと

「居住専用賃貸を自宅兼事務所にすると契約違反」がウソである理由を書く前に、多少の事前説明をします。

ウソに踊らされると余計な出費を強いられる

自宅で事業を営む人がこのウソを信じてしまうと、以下のような無駄遣いにつながります。

  • 不安になって、「事務所可」と明示されていない物件から、明示されている物件に引っ越してしまう。
  • 部屋探しの際、「事務所可」と明示されていない物件を避けてしまい、条件の良い物件をみすみす逃す。

住居費の無駄遣いは家計に大きな打撃を与えます。ほかの費目の節約でこれを挽回するのは大変です。

ウソに騙されないで下さい。

上場企業がウソをついているから始末が悪い

「騙されるな」と言うのは簡単ですが、上場不動産会社のアパマンショップが主張すれば普通は騙されます。

これに騙された下記ブログ記事が、はてブ400近くの大拡散。特に目立つネガコメがないので、これを読んだ人も騙されます。

別の不動産業者による、アパマンショップ記事のコピペリライトにも、騙される人が多くいるでしょう。

弁護士の見解も「自宅兼事務所は契約違反ではない」

私はFPですが法律の専門家とは言えません。しかしこの件については詳しいです。

大家さんから「居住専用賃貸を自宅兼事務所にすると契約違反」と言われたものの、後日それを撤回させ、詫びを入れさせることに成功した知人がいるからです。

知人は弁護士から「自宅兼事務所は契約違反ではない」という助言を得て解決しました。

飲むたびにこの武勇伝を語ります。

私も覚えてしまいました。

この記事を書くにあたり、知人の解決法を基にしたフィクションを作り、弁護士ドットコムで相談してみました。

その結果「自宅兼事務所は契約違反ではない」ことにつき好感触を得ました。

当たり前ですね。別の弁護士さんが言ったことの受け売りなんですから。

というわけで以下自信満々で説明します。

【定義】そもそも居住専用賃貸とは何か

説明の前に言葉の定義を一つだけ。

この記事で言う「居住専用賃貸」とは、貸室の使用目的について、

  • 居住のみまたは住宅のみ可
  • 他の用途は禁止

という内容のみが含まれる契約に基き、賃貸される物件を指すものとします。

したがって「事務所可」物件は居住専用賃貸に含みません。

「居住のみ」や「居住専用」には「事業禁止」という意味などない

いよいよ説明に入ります。

実は、賃貸契約の使用目的として使われる「居住のみ」や「居住専用」という言葉には、事業禁止という意味などありません。

むしろ、

  • 居住者の生活の本拠がある
  • 生活の本拠であるために必要な平穏さを有する

という2つのルールを守りさえすれば、事業をしてもOKという意味になります。

「居住のみ」や「居住専用」は「事業禁止」という印象を持たせるには都合がいい言葉

国土交通省が定めたマンション標準管理規約(管理規約のひな型)では以下のような内容があります。

第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。

「専ら住宅として使用する」の部分は、賃貸契約でよく使われる居住専用条項そのものです。これだけを見れば確かに

ウェブシュフ妻
「専ら住宅として使用する」物件は、やっぱり自宅兼事務所として使ってはいけないんじゃない?

と思えてきます。しかし結論を出すには早すぎます。

しかし実際は居住専用物件を自宅兼事務所としても全く問題がない

国土交通省が「マンション標準管理規約」の補足として出しているマンション標準管理規約(単棟型)コメント によると、

住宅としての使用は、専ら居住者の生活の本拠があるか否かによって判断する。したがって利用方法は、生活の本拠であるために必要な平穏さを有することを要する。

つまり、以下の2点を両方を満たせば、「専ら住宅として使用」したことになります。

  • 専ら居住者の生活の本拠がある
  • 生活の本拠であるために必要な平穏さを有する

自宅兼事務所は生活の本拠を兼ねた事務所です。

「 生活の本拠であるために必要な平穏さを有する」ことさえできれば、「専ら住宅として使用」したことになります。

居住専用賃貸を自宅兼事務所として使うこと自体は、契約違反でも何でもありません

契約違反になるのは他の住民に迷惑をかけた場合

居住専用条項のついた賃貸物件では、自宅兼事務所として使うか否かに関わらず、「生活の本拠であるために必要な平穏さ」を保たなければ、契約違反となります。

日経BPによると、「生活の本拠であるために必要な平穏さ」を保つためには、以下の点に注意しなければいけません。

(1) 主催者がその住戸を生活の本拠としていること。
(2) 不特定の者が出入りしないこと。
(3) 騒音、におい、粉塵、振動などの迷惑が起こらないこと。
(4) 通常の住宅の範囲を超える量の水や電気、ガスを消費しないこと。
(5) 外来者は少人数であること。
(6) 営業時間を制限すべき業種についてはそれを守ること。

繰り返しますが、居住専用物件を自宅兼事務所として使用すること自体には全く問題がありません。

あくまで、上記(1)から(6)を守れず、「生活の本拠であるために必要な平穏さ」乱してしまうことが契約違反なのです

事業をするかどうかは、契約を守っているかどうかとは、全く関係ありません。

個人ブロガーが賃貸物件を自宅兼事務所としても契約違反になどなり得ない

ところで、私のようなボッチ引き籠りアフィブロガーが、自宅兼事務所として居住専用賃貸を使う場合はどうでしょうか。

自分一人または家族だけで作業をしていれば、近隣住民からすれば部屋で何をしてるかもわからないレベルです。

周囲の住人に与える影響は殆どありません。

ウェブシュフ妻
ウェブシュフ見てると、ネトゲ廃人ニートと大差ないもんね。
ウェブシュフ
ぐぬぬ

この状態で「生活の本拠であるために必要な平穏さ」を乱しているはずがありません。

個人または家族で事業をしているブロガーやアフィリエイターは、居住専用賃貸物件を自宅兼事務所としても全く問題がありません

組織化したアフィリエイターの場合はどうか

組織化したブロガーやアフィリエイターの場合はどうでしょうか。

自宅兼事務所として使う居住専用物件に、家族以外の従業員・外注さんが日常的に出入りして作業をするようなら、契約違反になると思います。

実際上記(1)から(6)のうち、(4)と(5)については守るのが難しいですよね。

ヤバイ近隣住民
「生活の本拠であるために必要な平穏さ」を乱したから契約違反だ。大家にチクって追い出したる。

となる恐れがあります。

しかし、自宅兼事務所に家族以外の人間が出入りしないような運用ができれば、話は変わります。

近隣住民
あそこの家って、お仕事してるのかしら?

と思われるかも知れませんが、「生活の本拠であるために必要な平穏さ」はバッチリ保つことができます。

従業員や外注先が存在しても、彼らがほとんど来ないのなら、契約違反などと言われる余地はありません

自宅マンションを法人登記しても問題ない

何度も言いますが、「生活の本拠であるために必要な平穏さ」を保ちつつ、「居住専用」として借りた部屋を自宅兼事務所とするのは契約違反ではありません。

では、その部屋を自分や同居家族が運営する法人の事務所として登記した場合はどうでしょうか。

登記しても

  • 専ら居住者の生活の本拠がある
  • 生活の本拠であるために必要な平穏さを有する

この二点は守れます。

居住専用賃貸を法人登記しても賃貸契約には違反しません。必要があるなら登記してもOKです。

居住専用賃貸での事業運営を、思い込みで毛嫌いする大家さんがいるのは事実

繰り返しますが、居住専用マンションで事業を行うこと自体は、契約違反でも何でもありません。

それなのに

不動産業者
居住専用賃貸を自宅兼事務所にすると契約違反

などとウソを主張する業者が多いのは何故でしょうか。

それは、居住専用賃貸の大家さんが、間違った思い込みで、自宅兼事務所を毛嫌いする場合があるからなんです。

固定資産税が増えると思い込む大家さんがいる

大家さんには「自宅兼事務所として居住専用賃貸を貸すと固定資産税が増える」と思い込んでいる人がいます。

これは誤解です。

念のため、税理士さんなど専門家の見解を見てみましょう。

通常の住宅や、2階建て等の通常の賃貸アパート等であれば、2分の1以上を居住用としていれば、建物を全体を居住用として見てくれますので、特に気にしなくても結構です。(服部税理士事務所|「固定資産税」住宅用地の軽減措置|資産税に強い税理士事務所!

自宅兼事務所は「居住用」としての利用の一種です。自宅兼事務所のせいで固定資産税が上がる余地はありませんよね。

消費税が増えると思い込む大家さんがいる

大家さんには「自宅兼事務所として居住専用賃貸を貸すと消費税が増える」と思い込んでいる人がいます。

居住専用物件の賃貸には消費税はかかりません。

居住用物件を賃借する場合は、消費税は非課税扱いとなります。つまり、大家さんや不動産管理会社に支払う自宅兼事務所の家賃には、消費税は含まれていないことになるのです。(自宅の住所で法人(会社)を作ることはできるのか。税務や登記に関して。|税理士事務所センチュリーパートナーズ

一方、自宅ではない事務所として契約すれば、賃料に消費税がかかります。

通常、法人の事務所として、大家さんと契約を行う場合は、消費税額分も上乗せして徴収されることになります。(自宅の住所で法人(会社)を作ることはできるのか。税務や登記に関して。|税理士事務所センチュリーパートナーズ

そのため、居住専用賃貸の大家さんの中には「ウチの賃貸物件の中に自宅兼事務所が紛れ込んだら消費税が増える」と思い込む人がいます。

しかしこれも誤解です。

自宅兼事務所も居住専用ですから非課税です。自宅兼事務所のせいで消費税が上がることもありません。

ここで、個人の居専用として契約して消費税非課税となっている自宅に、起業して会社の事務所を置く場合には、会社では消費税の経理をどうすればよいのでしょうか。

この点に関しては明確に答えがありまして、あくまで居住用契約になっているのだから、自宅兼事務所とした場合にも、会社の会計上は、消費税の支払はないものとして、つまり、若干難しい言葉で言うと非課税仕入として、処理をすることになります。(自宅の住所で法人(会社)を作ることはできるのか。税務や登記に関して。|税理士事務所センチュリーパートナーズ

自宅兼事務所を法人登記しても、賃料は非課税ですから、大家さんが支払うべき消費税が上がる余地はありません。

「居住専用物件を自宅兼事務所として使うと大家さんの税金の負担が増える」は間違いですね。

「自宅兼事務所が暴力団や違法風俗の温床になる」と思い込む大家さんがいる

大家さんには、自宅兼事務所としての利用をOKすると、暴力団事務所や違法風俗が入り込むと思い込む人がいます。

確かにそういうケースはありますから、自宅兼事務所を毛嫌いする大家さんがいるのはよくわかります。

しかし、自宅兼事務所の排除は、暴力団や違法風俗に対する防波堤としては全く機能しません。

他の有効な方法を考えて欲しいところです。

大家への通告はすべきでない

何度も言いますが、居住専用賃貸を自宅兼事務所として使うこと自体は、賃貸契約に違反しないことが明らかです。

大家に通告する必要はありません。いや、むしろ通告すべきではありません。

ジャイアン大家
自宅兼事務所が来たら面倒なこと多そう。
ジャイアン大家
オレの建物はオレの物、オレの言うことが絶対。

こんなジャイアン並みに自己中な大家に通告したらどうなるでしょうか。

契約違反でもないことを契約違反と言い出し、「出て行け」と言わんばかりの嫌がらせを受けるかもしれません。私の知人のように

一方、大家さんに通告することで得られるメリットはありません。通告すべきではありませんね。

近隣住民にも言わないほうがいい

自室を自宅兼事務所として使っていることが近隣住民にばれると、

  • オラオラな近隣住民から言いがかりをつけられ、トラブルに。
  • 自宅兼事務所が契約違反だと大家にチクられる。
  • 大家がジャイアンタイプで、オラオラ近隣住民に同調して「自宅兼事務所は契約違反だから出ていけ」
  • しつこく嫌がらせを受ける日々

こういう悪循環になるかも…

これは心配しすぎかもしれませんが、自宅兼事務所の件を近所に話すメリットはないので、極秘にしておくのが賢明でしょう。

契約違反を犯しても即退去とはならない

何度も同じことを言いますが、居住専用アパートで事業をしただけでは契約違反ではありません。

しかし、ついうっかり「生活の本拠であるために必要な平穏さ」を乱すと契約違反です。

その場合、いきなりアパートから追い出されるのでしょうか。

答えはノーです。

一度の契約違反では信頼関係の破壊とは言えない

退去を求めるには賃貸契約の解除が必要です。

そして、大家による賃貸契約の解除が正当化されるのは、賃借人が信頼関係を破壊するほどの重大な契約違反をした場合に限られます

信頼関係を破壊するほどの重大な契約違反とは何でしょうか。

ここでは、数ある契約違反のうち、かなり重大なものである家賃滞納を例にとって考えましょう。

弁護士事務所が運営するサイトによると、

たとえば,賃料滞納を理由に賃貸借契約を解除する場合には,よほどの事情がない限り,1か月分だけ賃料の滞納があったというだけで解除することはできません。通常は,少なくとも3か月分以上の賃料滞納がなければ,賃料滞納を理由として契約を解除することはできないでしょう。(賃貸借解除における信頼関係破壊の理論とは何か? | 不動産問題ネット相談室

家賃滞納ですら、契約解除・強制退去となり得るのは、3回目以降だということです。

契約違反ですぐに退去を求められることはありません。

うっかり違反してしまったら、真摯に反省し、2度と過ちを繰り返さないようにすればいいことです。

要するに、普通の住民としての心得があれば、退去させられるようなことにはなりません

まとめ

  1. 契約上居住専用となっている賃貸物件を、自宅兼事務所として使用するのは、契約上何の問題もない。
  2. 事業をするかどうかは、居住専用条項に違反するかどうかの判断に影響しない。
  3. 事業するかどうかにかかわらず、「生活の本拠であるために必要な平穏さ」を保てないと契約違反。
  4. 居住専用物件で事業をすることは後ろめたいことではないが、トラブルを避けるなら大家や近隣住民には内緒にしたほうが賢明。

ウソを信じて住居費に無駄なお金を使わないようにしましょう。

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