肉を求めて恵比寿へ
蟹食べて、そば食べて、モチ食べて、ピザ食べてと、年末年始に食べるべきものを食べて食べて食べまくって過ごした正月。浮かれ気分の食べ道楽を仕舞いにして、日常へと回帰する時期にきた。
肉寿司こそ、正月気分抜けきらないこの季節にもっともふさわしい料理ではないだろうかと、「肉寿司恵比寿横丁店」にやってきた。なんてったって、肉の猛々しさと寿司のめでたさを兼ねそろえている。
▲あまりにも分厚すぎるメニュー表
「さ〜、食いまくるぞ!」と勇んでメニュー表を探すものの、テーブルのうえに見当たらない。テーブルに置いてあるのは「馬肉新書」なるカラオケの曲目リスト級に分厚い本ぐらい。 ペラペラめくってみると、最初のほうに肉寿司のメニューが書かれていた。
「馬肉新書」という馬肉の食い方から馬肉の名店までぎっしり情報がつまった数百ページの本の頭に、肉寿司のメニューを貼っているのだ。
肉寿司のオープンは2010年。当時、馬肉はどちらかといえばイロモノとして扱われていた。食べるは食べるけど、ちょっと変わったお肉という位置づけ。「馬肉を食べることを普通にしたい」「肉寿司を流行りすたりのない肉料理の1カテゴリーにしたい」と啓蒙活動もかねて、注文を待ってる間に読めるようにと「馬肉新書」をメニュー表代わりに、すべての席に置いてるのだとか。
▲赤身 1貫180円(2貫から注文可)
まずは肉寿司の定番、馬肉の赤身の握りをいただく。
見た目はマグロの赤身のようだが、あっさり淡泊で臭みもない。「さっぱりとした赤身肉の良さを殺さないよう、すし酢や米が主張しすぎないぐらいに調整してるんですよ〜!」とスタッフさん。何巻でもいけちゃいそう。
▲和牛のロッシーニ 1貫580円
和牛のロッシーニ。ヒレ肉のソテー。フォアグラにトリュフをのせ、ペリグーソースの代わりに自家製の醤油を煮詰めたものを合わせたなんとも贅沢な一品だ。
甘みのあるお肉は、口のなかでほわっととろける。
▲稲荷 1貫250円(2貫から注文可)
醤油と味噌で煮込んだマルチョウで、いなり寿司に栓をした、見るからに肉々しい一品だ。
マルチョウの甘さ&ジューシーさが、いなり寿司の甘さ&ジューシーさと融合して、濃密な味わい。
個人的にはいなり寿司が大好きで、回転すしにいったらかならず序盤で食べるんだけど「え?いなりなんて食べるの??」とよく蔑まれる。寿司界では脇役に甘んじてるいなり寿司だが、マルチョウと手を組むことによって、充分、主役になりうる存在感を発している。
▲アボガド 1貫190円(2貫から注文可)
お肉だけじゃなく、おくらやアスパラなど野菜の軍艦もある。アボガド軍艦は最後の締めとしてフルーツみたいに食べてもいいし、箸休めとして中盤につまんでもいい万能選手だ。
▲セロリガリ 350円
肉寿司での不動の箸休めポジションを築いているのが、セロリガリ。 普通のガリでは肉に対してちょっとパンチが足りないということで、セロリをくわえカリカリ感をパワーアップさせてる。
ガリセロリを食うさいに箸をつかったら、1膳に1つ「お味くじ」がついていた。
初詣がまだでおみくじを引いてない人には、ちょうどいい計らいだ。
結果は中吉とまずまずの結果。病気の欄を読んでみると「ワイン飲めば治る」と、すらっと営業をかけてくるあたりしたたかさだ。
▲この樽から生ワインが出てくる
誘いにのってワインを注文。
ワインは肉寿司に合う生ワインが用意されている。
▲生ワイン 590円
生ワインは、熟成させずに、しぼりたてをそのままなので軽めな仕上がり。さっぱりとした肉寿司には、飲みやすくってちょうどいい相性だ。
▲べっこう玉 390円
つまみとして個人的にイチオシなのが、これ!べっこう玉だ!
オレンジ色にピカピカ光った球体で、すげえキレイな食い物なんですわ。
卵の黄身だけを醤油ダレにつけて12時間以上漬けこんだしろもので、半熟卵のようにねっとりと濃厚。
むにっと柔らかいので、すっと箸が入る。
あまりの旨さにぱくぱく一口で3玉を食べつくしたら「それ、本来はチビチビつまむものなんですけど、大丈夫ですか!?」と肉寿司のかたに驚かれた。
白飯があったら1玉あたり茶碗2杯は食べられる。
デカすぎるサシトロは、ガスバーナーで焼く!
▲サシトロ 1貫780円
人気メニューは数あれど、なかでも一番人気なのがこのサシトロだ。国産牛リブロ—スをのせたステーキみたいなガッツリ寿司だ。
デカすぎるリブロ—スめがけて、スタッフさんがおもむろに近づいてきて……
バーナーをむけ
すさまじい火力で炙る!
ゴーゴーとうなりをあげるバーナーが迫力大。
肉に当たった部分だけ火の色が変わって、科学の実験のようでもある。
「どうせ加熱するならパフォーマンスにしよう!」と、こんなど派手な提供方法になったそう。これ一品で「肉食ったぞー」と充分な満足感が得られるわ。
「寿司だって言ってるけど、お米ないじゃん」ってお思いでしょう。
じつは真ん中のこんもりした部分にお米が隠れているのです。あまりにも肉がデカすぎて、覆い隠されているだけなのだ。
お肉をめくると、お米が姿をあらわす。
通常のお寿司2貫分の大きさに握ってるそうなので、食べやすく2つにわける。
お肉も半分に切って、中央に米をのせて
ワサビとネギをのっけて
お箸で巻いたら、お肉に包みこまれた肉むすびの完成だ。
お肉の削りカスがたくさん出ちゃうから、厚く切るのと同じだけコストがかかるけど、あえて極限の薄さに削って柔らかさをだしているんだとか。ほんと、お肉が柔らかくって、うまいんだ。
新年の景気づけに肉寿司、いかがでしょ!?
取材したお店
作者:松澤茂信(まつざわしげのぶ)
東京別視点ガイド編集長。
るるぶとか東京ウォーカーが積極的に載せないようなとこばっかし巡ってます。
そういう人生です。けっこー楽しいです。
(編集:編集プロダクション studio woofoo by GMO)
東京別視点ガイド:http://www.another-tokyo.com/
Twitter:https://twitter.com/matsuzawa_s