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ワンダーランド パズル遊びへの招待・オンライン版

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1−24.図形消滅パズル


 図形消滅パズルがわが国で一般に知られるようになったのは、坂根厳夫が朝日新聞に「消える妖精」を紹介(1976年)して以来のことであるが、この仕掛はかなり古くからあった。

 最初の大ヒットとなったのは、サム・ロイドの項で触れたサム・ロイドの「地球追い出しパズル」[1]である。これは彼が1896年に創案して特許を取ったものであるが、彼の生前に一千万個を売ったという。最初内側の円盤の矢印をN.E.に合わせると、円盤には13人の中国兵の柄が描かれている。ところが、内側の円盤の矢印をN.W.に合わせると、兵士の数が一人減って、12人になってしまうのである。
 この図形消滅パズルの原理を示したのが[2]である。Aには10本の平行線が描かれているが、この紙を対角線に沿って切り、直線1本分だけ上の紙をずらすと、Bのように線が1本減って9本になる。その代わり、それぞれの線は少しずつ長くなり、増加分の合計がちょうど直線1本分になる。

 これだけではピンとこないかもしないので、筆者の第一作の「鳥獣戯画」で、もう少し具体的に見てみることにしよう。
 [3]が「鳥獣戯画」である。この作品を発表したのは1976年のことで、当時池野信一、中村義作、土橋創作と筆者とで分担執筆していた『科学朝日』の「パズル遊びの楽しみ」欄であった。見てすぐに分かると思うが、題材を鳥羽僧正の筆と伝えられる国宝『鳥獣戯画』にとって、純日本風に作ってみた。


[1]地球追い出しパズル
(サム・ロイド)


[2]図形消滅パズルの原理

[3]『鳥獣戯画』の消滅パズル
 

 このままだと動物の数は9 匹であるが、上の2枚の板を入れ替えると8 匹に減ってしまう。その仕組みは、原理的には[2]と全く同じである。具体的にどう変化したかを示したのが[3]である。移動前にそれぞれ長さが4目盛りであったのが、移動後は4.5目盛りに増加していることがわかると思う。その代わり1本分がそっくり消滅して、長さの総計は変化していない。この移動前後の図を比較することで、仕組みがよくわかると思う。

[3']『鳥獣戯画』の構成
 

 なお、1回だけでなく、2回も数の減る図形消滅パズルを作ることも可能である。[4]は著者が1987年に発表した「ローソクと星」である。図のように上の板をABCの順に並べるとローソクは9本あるが、Aを右端に移してBCAの順にすると8本になり、さらにBを右端に移してCABの順にすれば7本に減少する。試してみて頂きたい。


[4]「ローソクと星」

エンピツと小人(Flash版)
※「ローソクと星」のアレンジ版。

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第1部:|1.迷路|2.リンドパピルス|3.魔方陣|4.知恵の輪|5.まま子立て|6.渡船|7.油分け算|
|8.盗人隠|9.さっさ立て|10.薬師算|11.碁石拾|12.おしどり|13.一小刀|14.ねずみ算|
|15.知恵板|16.虫食算|17.目付字|18.橋渡り|19.ソリテア|20.ハノイ|21.デュードニー|
|22.サム・ロイド|23.移動板|24.消滅|25.パラドックス|26.四色|27.チェス|28.にせ金|


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