カインズ流 ロードバイク生活を極めたい<3>サイクリング初心者に持っていてほしい道具類 一気にそろえてみました
スポーツサイクルに乗り始めたビギナーサイクリストが、最初にぶつかる“壁”の1つに「メンテナンス」が挙げられる。ある程度のメンテナンスを上手にできるようになるには、必要な道具をそろえたり、技術を学んだりすることが欠かせない。
そこで今回は、サイクリング初心者にも「これは持っておいてほしい」という工具やメンテナンス・グッズをご紹介。連載のパートナー「カインズサイクルパーク」の下元宣弘・統括店長とともに、ホームセンター「カインズホーム 北本店」(埼玉県北本市)を訪れ、おすすめの道具を一気に、そしてリーズナブルに揃えてみた。
下元さんは、実は自他共に認める“工具マニア”。祖父が何でも自作するDIY派だった影響で、子供の頃からさまざまな工具に慣れ親しんできた。愛用する日本製の高級工具「KTC ネプロス」は、就職してすぐに給料をはたいて買いそろえた。6年ほど前にスポーツサイクルを始めてからは、自転車の整備に適した工具やグッズをいろいろ研究している。
「初心者でも、日ごろから最低限のメンテナンスを行っていれば、サイクリングを安全・快適に楽しめるし、故障やトラブルも未然に防げます」と話す下元さん。そのために必要な、最低限の工具やグッズを、いざピックアップ!
六角レンチ、ドライバー、ペンチ
自転車乗りなら絶対に持っていなければならないのが六角レンチ(ヘキサゴンレンチ)。一般サイクリストが日常的なメンテナンスで使う工具は、ほとんど六角レンチで足りてしまうくらいに使用頻度が高い。ただし、スポーツサイクルに使用されている六角穴ボルトはさまざまなサイズがあるため、レンチも各種サイズがそろったセットを用意しておきたい。
カインズホーム北本店の工具売り場では、自転車に適したサイズのL字型六角レンチが2種類。価格は10倍もの開きがあった(写真参照)。まずはお手頃に買い求めたいというなら、安価な方でも十分に役立つ。高価なタイプは、一方の先端が「ボールポイント」形状となっており、少し角度がついた状態でもボルトを回せるので便利だ。また、軸が長いのでテコの原理によって力を加えやすい。下元さんのお勧めは、このボールポイント付きの方だ。
たくさんのサイズの六角レンチをコンパクトに内蔵した「マルチツール」は、サイクリングに携行するのに最適だが、これはあくまで緊急用。日常のメンテナンスをしっかりこなすには、やはりL字型レンチが望ましい。
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ドライバーは、スポーツサイクルのメンテナンスではそれほど出番が多くないが、変速機の調整などには欠かせない工具だ。下元さんは、初心者にはまず+(プラス)ドライバーの2番というサイズを入手してほしいという。
下元さんによると、ドライバーの性能はほとんどが先端部分(ビット)の材質と工作精度によって決まる。この部分の硬度と精度が高ければ、ボルト(ねじ)にピッタリとはまって回しやすく、ねじの頭の溝や穴をなめて潰してしまうリスクも少ない。写真のドライバーは、廉価品と比べてビットの材質がグレードアップされており、価格は598円。
ここで“工具マニア”ならではの豆知識を下元さんが披露してくれた。ドライバーの先端部分に用いる金属は、含有物質の関係から、一般的に赤みがかった色の方が硬度が高く、粘りがあるという。同じ商品でも、生産ロットによって材質が異なることがあるため、下元さんはじっと見比べ、赤みが強いものを選ぶそうだ。
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ペンチは、シフトケーブルやブレーキケーブルを調整したり、交換・切断したりする際に使用する。六角レンチやドライバーとは異なり、道具そのものに可動部分があるため、材質や精度によって使い心地が大きく変わってくる。
カインズホームの工具売り場には、さまざまな大きさや形状のペンチが並んでいるが、下元さんは自転車のメンテナンスに適した商品を2種類ピックアップ(=写真)。価格はケース入りが598円、ケースなしは248円と2倍以上の開きがある。「使い心地や耐久性が全然違います」(下元さん)とのことで、財布が許すならば高い方を選びたい。
自転車のお掃除に役立つスグレモノ
「自転車を“掃除”して、いつもきれいな状態に保つことは、メンテナンスの基本」と下元さんは断言する。それは、ただゴミや泥の付着によるメカトラブルを防ぐという理由だけではない。お掃除を通じて自転車に触れ、慈しみ、じっくり観察すれば、メカの仕組みへの理解が深まったり、故障の兆候を察知してトラブルを未然に防げたりするのだという。
ひと口に自転車の掃除といっても、各種パーツをピカピカにするためのテクニックは幅広く、奥深い。そこで下元さんは、初心者でもきっちりやっておくべき「チェーン掃除」と「拭き掃除」に役立つ、安くて便利なグッズを取り上げた。
チェーンは、放っておけば泥やホコリで真っ黒に汚れてしまう。掃除するには、機械の油汚れを落とす液剤「パーツクリーナー」が便利だ。スプレー缶入りで、噴射すれば液状になって油汚れを洗い落とす。高級なパーツクリーナーは千円をはるかに越えるが、下元さんは「高価だからと節約して少しずつ使うのは本末転倒。必要な分量を惜しまず使って」とアドバイスする。ホームセンターのパーツクリーナーは写真のように148円と安価。数本まとめて大人買いすれば、切らす心配もない。
フレームの拭き掃除は通常、ウエス(拭き取り用の古い布・ボロ布)を用いるが、一般家庭でウエスをたっぷり用意しておくことはけっこう難しい。そこで下元さんのお勧めは、写真の商品「ショップタオル」。いわゆるペーパータオルだが、キッチン用のものよりはるかに分厚く、破れにくい。濡らして絞って水拭きしても、乾かせば再利用できるほど丈夫だ。自転車のフレームやパーツを水拭きしたり、洗剤と併用して頑固な汚れを拭き取ったりするのに便利。クルマやキッチン周りの掃除などにも使える。価格は1ロール約15mで298円、これなら遠慮なく使えそうだ。
“自転車専用品”はサイクルショップで
ホームセンターでは、汎用の工具やグッズ類をお手頃価格で入手できたが、スポーツサイクルの専用品は、自転車店でしか手に入らないものがある。カインズホーム北本店での買い物を終えて、カインズサイクルパーク上尾本町店(埼玉県上尾市)へ戻った下元さんは、スポーツサイクルの日常メンテナンスに適したスタンド、エアーポンプ(空気入れ)、チェーン用の油(チェーンオイル)を紹介してくれた。
スポーツサイクルのメンテナンス用スタンドは、自転車の掃除や、ちょっとした調整を行う際に便利だ。簡易型から、プロのレーシングチームが使用する本格派までさまざまなタイプがあるが、プロ用は数万円もするので、初心者はまず簡易型を使ってみよう。写真のタイプは、フレームの後部を引っ掛けるタイプの簡易スタンドで、着脱が簡単なことが魅力だ。価格は2180円。
スポーツサイクルのためにエアーポンプを選ぶ際、気をつけることは2点。まず、愛車のタイヤ(チューブ)のバルブ形式に適合するポンプを選ぶことだ。一般的にロードバイクは仏式、マウンテンバイクは米式のバルブが用いられている。また、スポーツサイクルはタイヤの空気圧調整が重要なので、空気圧計を備えたポンプが望ましい。写真のポンプは3タイプのバルブに適合し、3280円とリーズナブルな価格だ。
チェーンオイルにもさまざまな種類があり、価格もピンからキリまで。カインズサイクルパークには、呉工業のスーパーチェーンルブが陳列されていた。モリブデンやフッ素樹脂が配合されているため潤滑効果が長持ちし、しかも適度な粘度によって滴がタレにくく飛散しにくい。下元さんは、チェーンオイルをさす際、たっぷり注油した上で余分な滴を拭き取るようにとアドバイスしてくれた。
- 工具売り場は、メカ好きにとって“ロマンの宝庫” =埼玉県北本市のカインズホーム北本店
- 工具売り場には、さまざまな種類・サイズの工具がズラリ =カインズホーム北本店
- 六角レンチは、値段は少々高いが、使いやすいボールポイント付き(右)がお勧め
- ドライバーは、先端部分の材質や精度が大切
- ペンチも、価格帯によって性能が異なる。高価なものほど精度が高いので、使いやすくこわれにくい
- 油汚れを落とす「パーツクリーナー」は、ホームセンターでは安価に手に入るので、ケチらずどんどん使いたい
- 「ショップタオル」という商品名の輸入ペーパータオル。丈夫で、繰り返し使うこともでき、とても重宝する
- カインズホームで品定めした商品を、とりあえずカゴに入れてみました。必要なものは人それぞれですが、3000円もあればかなり揃えられそうです
- 埼玉県北本市の「カインズホーム北本店」
- メンテナンス用の簡易スタンドは、シートステーとチェーンステーを引っ掛けるタイプが使いやすい
- エアーポンプには空気圧計が必須。愛車のバルブ形状に適合するポンプを選ぼう
- チェーン用のオイルは、潤滑効果が長持ちする専用品が望ましい