住民、平静保つ…緊張高まる南北境界線付近
【ソウル米村耕一】北朝鮮による核実験への対抗措置として韓国軍が南北軍事境界線付近の十数カ所で大型拡声機による対北朝鮮宣伝放送を再開した8日午後、境界線に近接した地域では住民たちが緊張を高めつつも、おおむね通常通りの生活を送っていた。
非武装地帯(DMZ)に近い京畿道坡州(キョンギドパジュ)市で食堂を経営する男性(56)は、この日も普段通りに店を開けた。「前線に近い所に住んでいればこうした事は一度や二度ではない。それでも多少は心配なので近所のお年寄りの家など4、5軒回ってきたが、みな普段通りにしていた」と男性は話す。
付近では緊急時に待避できる地下壕(ごう)の建設が来月から始まるという。「地元政治家の尽力で作ることになった。ないよりはあった方が良いが、戦争になればどうせみな死ぬ」と顔をゆがめた。
韓国内の展望台で最も北朝鮮に近い江原道(カンウォンド)の高城(コソン)統一展望台や坡州市の都羅(トラ)展望台は「観光客の安全のため」との理由で、宣伝放送が始まった正午以降、観光客の受け入れを中断した。
一方、DMZには近接しているものの境界線からは距離のある坡州市の臨津閣(イムジンガク)の展望所は、今回は通常通り営業を続けていた。都羅展望台などに行けなくなったので家族とともに臨津閣に来たという京畿道抱川(ポチョン)市の会社員、鄭鉉鎬(チョン・ヒョンホ)さん(53)は、「これですぐに戦争になるということでもないし、心配していない」と笑顔を見せ、予定通りに観光を続けていた。ただ、聯合ニュースによると、昨年8月に北朝鮮側からの砲撃があった京畿道漣川(ヨンチョン)郡では、通常は住民の通行が認められる「民間人出入統制線」の出入りも禁止した。