中国国境、共同事業先行きに不安
毎日新聞
【丹東(中国遼寧省)工藤哲】北朝鮮が「水爆実験に成功した」と発表したことを受け、中国と北朝鮮の国境の町、丹東では共同事業の先行きに不安の声が上がっている。中朝関係は冷え込みが予想されるため、交流を当て込んで建設が進められてきた観光関連施設や経済開発区の計画に支障が出ることへの懸念が強い。
丹東中心部から国境の川、鴨緑江(おうりょくこう)を東に約50キロ。「太平湾水力発電所」にせき止められたダム湖がある。対岸は北朝鮮平安北道。北朝鮮側の川沿いには、平屋建ての白い小屋があった。
丹東にある観光会社の幹部によると、小屋は、中国人観光客が北朝鮮を日帰り旅行する際の出入国管理関連施設を想定して建てられた。中国企業が資金を出して工事が行われており、今年5月に完工予定だという。幹部は「(核実験で)中国側の投資が鈍る可能性がある。工事が予定通り進めばいいのだが」と不安そうな表情を浮かべた。
同様の観光関連施設は、丹東と対岸の北朝鮮・新義州を結ぶ中朝間の大動脈「中朝友誼橋」付近でも昨年末に完成している。ここも今春の開業を控え、余波に気をもむ。
友誼橋から西に約15キロ進むと、新たな国境の橋「中朝鴨緑江大橋」(全長約3000メートル)が建設され、開通を待っている。
中国側の工事は終わり、周辺にはマンションやショッピングセンターの建設が進むが、北朝鮮側の道路工事が滞り、一昨年10月の開通予定が大幅に遅れている。核実験によってさらなる遅延が予想され、地元出身の大学院生、葛鵬さん(26)は「早く開通すれば丹東の活性化にもつながるのに」と残念そうだ。
一方、国境付近では、中国軍が5000人の部隊を緊急増派したと一部で伝えられている。真偽は不明だが、国境付近にまつわる情報だけに、丹東では不安視する見方もある。