すずめのキャラクター「にしちゅん」があちこちに顔をのぞかせる、カラフルなラッピングバス。東京の多摩地区西部を中心に路線を広げるバス会社、西東京バス(八王子市)が2015年12月末から運行をはじめた「にしちゅんバス」だ。
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「にしちゅん」は、2014年度の「ゆるキャラグランプリ」でバス会社としては1位になったという同社のキャラクター。2台ある「にしちゅんバス」はそれぞれ絵柄が違い、高尾山の天狗のお面をつけたにしちゅんや、羽村市や福生市などのB級グルメを手にした姿など、車体の側面や後部には西東京バス沿線にちなんださまざまな姿のにしちゅんが描かれている。
■ 路線バスの車内で充電?
2台のバスはそれぞれ、同社の主要運行エリアである八王子地区にキャンパスのある工学院大学と、日本工学院八王子専門学校の学生がデザイン。2014年から準備を進め、両校でデザインを募集し、数多くの案の中から選ばれた最優秀作品がラッピングされた。
「乗って楽しい車をコンセプトにした」というだけあって、外観だけでなく車内も座席や壁、天井までイラストが描かれ、子どもたちの人気を集めそうな「にしちゅんバス」だが、車内にはほかにも注目すべき点がある。
中央のドアより後ろ、一段高くなった部分の窓側にはコンセントがずらり。実はこのバス、車内で携帯電話やスマートフォンの充電ができる「電源バス」なのだ。
高速バスには設置されていることもある電源コンセント。だが、一般の路線バスに乗客が利用できるコンセントが設置されているのは珍しい。
「にしちゅんバス」には1台あたり12個のコンセントを設置しており、西東京バス運輸部の池口哲司さんは「路線バスでこれだけの数を設置しているのは、うちが初めてではないか」と話す。
コンセント付きの電源バスは「にしちゅんバス」2台を含めて23台。ラッピングが目立つ「にしちゅんバス」はすぐ見分けがつくが、通常の塗装のバスでも前面に「電源バス」のマスクを掲げているため見つけるのは簡単だ。現在のところ、八王子市やあきる野市など、奥多摩地区を除く各路線で走っている。
■ 長時間乗る人にサービスを
「電源バス」が登場したのは2015年の7月。西東京バスは比較的長距離の路線が多く「市街地まで20分以上かかる路線もある」(池口さん)ため、乗車時間の長い利用者に向けたサービス向上の一環として導入された。
同社は高速バスも運行しているが、高速バスではコンセント付きの車両が一般化してきていることから、一般の路線バスにもコンセントをつけたらいいのでは……とのアイディアが発端だったという。
コンセントの個数は大型車が12個、中型車が8個で、設置しているのはいずれも車体中央のドアより後、床が一段高くなった部分の窓側座席だ。電源はバッテリーから供給し、追加搭載したインバーターで家庭用電源と同じ交流に変換している。電源はスマホや携帯電話専用で、電気使用量の大きいパソコンなどは充電できない。コンセントの数は多いが「(スマホなどは)それほど消費電力が大きいわけではないので問題ない」という。
観光バスや高速バスタイプの車両は別として、一般の路線バスタイプでコンセントのある車両はメーカーの標準仕様では存在せず、オプションとして設置可能な場合でも、これほど多くのコンセントを設けたバスはなかったという。
このため、同社は新車を導入する際にバスメーカー3社に対してコンセント付き車両の開発を依頼。そのリクエストに応じて「電源バス」は誕生した。
電源バスは登場以来、利用者から好評を得ており、「車内にコンセントがあってよかった」という感謝の手紙もあったという。池口さんは「今後も車両の入れ替えに合わせて導入していきたい」と話す。
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