>   >  ntnyの妙技が光る!『BREETSCHLAG(ブレットシュラーク)』ヒロイン・華月せいらの3DCGキャラクター化
ntnyの妙技が光る!『BREETSCHLAG(ブレットシュラーク)』ヒロイン・華月せいらの3DCGキャラクター化

ntnyの妙技が光る!『BREETSCHLAG(ブレットシュラーク)』ヒロイン・華月せいらの3DCGキャラクター化

近年、VRが盛り上がりをみせている。そうした中、VRをプロモーションツールとして利用するだけでなく、VRをはじめとする科学技術(サイエンス)を作品世界に採り入れた意欲的なオリジナル企画『BREETSCHLAG(ブレットシュラーク)』が、動画工房により進行中だ。
本稿では、本作のヒロイン、華月せいら(かつきせいら)の3DCGキャラクターモデリングについて、ntny氏自身に解説してもらった。藤間拓哉氏のキャラクターデザインをいかにして3DCGへと昇華させたのか、必読!

※本記事は、月刊「CGWORLD + digital video」vol. 209(2016年1月号)からの転載記事になります。

2Dの版権キャラクターを3DCG化させる上での心がまえ

どうも、ntnyです。CGWORLDには、特集「デジタル造形2014 ~フィギュア編~」(本誌194号)にて、ユニティちゃんのガレージキット製作について取材形式で解説させてもらいました。今回もあのときと同様、自分はどんな仕事でもモデリングの途中経過ファイルを保存していくスタイルなので、今回のCGWORLDさからの「メイキングTIPSを執筆してもらえませんか?」というオファーに対しても二つ返事で馳せ参じました。

『BREETSCHLAG(ブレットシュラーク)』VR PV
© BREETSCHLAG/Doga Kobo Inc. All rights reserved. illust:藤真拓哉


そんなわけで今回は、『BREETSCHLAG』(ブレットシュラーク、以下ブレシュラ)PV、そして昨年3月の「AnimeJapan 2015」で初披露となったVRコンテンツ用に制作した華月せいらを題材に、この作品に限らず、2Dの版権キャラクターをモデリングする上で自分が気をつけていることなどをチマチマ交えつつ、『ブレシュラ』PVの3Dパートが完成するまでを、モデリング、セットアップ、絵コンテ、アニメーション、そしてコンポジットという各工程ごとに綴っていきたいと思う。プロアマを問わず、キャラクター制作に取り組んでいる人たちにとって少しでも参考になれば嬉しい限り!

STEP 01:頭部の作成

  • ntnyの手による、華月せいらの3DCG化
  • <A> キャラクターの中でも頭部は大事だ。それはモデルそのものの出来という意味でもあるが、何よりわかりやすいパーツなので、これが良い感じに進んでいるとプロジェクト全体も良い感じに進んでいるような気になる。逆にここでテンションを上げておかないと後半息切れして絶望を味わうことになるので、しっかり地固めをする必要がある。

  • ntnyの手による、華月せいらの3DCG化
  • ntnyの手による、華月せいらの3DCG化

<B> というわけで、テンプレートとなる正面顔からだ。その後のモデリングはMetasequoiaで行なっていく。動画工房からたくさんの藤真絵を提供してもらい、ブレシュラ以外の藤真絵をネットでかき集めてひと晩それらとにらめっこする。テンプレ作成において大事なのは、どれか1つの絵をターゲットとしてモデリングするのではなく、全体から得られる作家の印象(画風やパーツバランス、角度等)の再現をするために手元にある全ての資料を参考に平均値を探りつつ、キーとなる顔として絞り込んでいくこと。

ntnyの手による、華月せいらの3DCG化

<C> どんな2Dキャラクターを作成する場合でもアゴのこのラインだけは絶対に変えないこと。たとえ"某アゴが特徴的な恋愛ゲーム"だとしてもだ。このメッシュラインさえ守っておけばシェーディングで不快な陰影が出ることはまずな い。仮に出たとしても調整が非常に楽になる。何かとアゴの先端に向かって収束するようにメッシュを組む人を見かけるが、その組み方が正解となるケースはSSR(ダブルスーパーレア)の出現率をはるかに下回る。悪いことは言わない。ここは骨のあるべき姿通りに作ろう。

ntnyの手による、華月せいらの3DCG化

<D> 頭部から首へかけてのラインは意外と消化できていない人が多いポイント。これもアゴをちゃんと作っておけば簡単に調整できる。日本は出来の良いキャラクターフィギュアが入手しやすいので、資料としていくつか手元に置いておくと造形の助けになってくれるはずだ。

ntnyの手による、華月せいらの3DCG化

<E> 見るポイントはいくつかあるが、ひとつはやはり目だ。藤真さんのように顔の面積に対して目の比率が大きいタイプの絵は、言い換えると表情変化の際に最も移動量が多いパーツということである。瞼は基本上下にしか動かないので、縦の分割ラインは上下で合うように作る。

ntnyの手による、華月せいらの3DCG化

<F> その上に乗せる「まつ毛」は、必ずしも瞼とメッシュを一致させる必要はない。なぜなら瞼は開くか閉じるかしかしないが「まつ毛」は波打ったりすることもあるので、メッシュの細かさが瞼以上になっていた方が良い場合もある。もちろんその逆もあって、例えば今回は波打つような演出が入ることはないとわかっていたので、モーフパターン作成のしやすさを優先してこの形となった。

ntnyの手による、華月せいらの3DCG化

<G> また、今回のようにまつ毛が太いキャラクターはエクステンション的なチョロ毛は別パーツで作ってしまった方が何かと便利に扱える。例えば閉じた ときに不要であれば、まつ毛の中に隠してしまえばよいし、アングルによって出す場所を変えたい場合などにも対応できる。リアルタイムだとアングルを限定できないのでこうした作り方はあまり行わないが、それでも閉じ目を作る際にまつ毛が下へ行ってほしい場合やサイドに寄ってほしい場合にも便利だ。

<Column1:絵描きの描く。正面画は正面画に非ず>

2Dの絵描きが正面画として描いてくる絵は大半が顎を引いた状態である。これをそのまま3D化させると顔面パーツが下がり気味になり、元絵よりも年齢が下 がったような印象になる。そのためわれわれがモデリングを行う際、まずやるべきことは「顎クィ」をすることである。補正方法は様々だが、比較的シンプルなのは、とりあえずそのまま顎を引いた状態としてモデリングして、その後テクスチャを投影ではなくUVに変更し、そのまま頭部を回転させて顎を上げた状態でスクリーンショットを撮影、さらにそれを清書するというもの。顎を引いた状態であることがわかっていれば、わりと難なく行える手法だ。もちろん2Dテンプレ作成の時点でそこまで考えて補正できるなら、その方が手っ取り早い(自分はどっちもやる)。

次ページ:
STEP 02:髪の作成

特集