2016年1月13日(水)

ウサイン・ボルトのように「本番に強くなる」練習

茂木 健一郎:世界一の発想法

PRESIDENT 2015年10月5日号

著者
茂木 健一郎 もぎ・けんいちろう
脳科学者

茂木 健一郎1962年、東京都生まれ。東京大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学博士専攻博士課程修了。理学博士。第4回小林秀雄賞を受賞した『脳と仮想』(新潮社)のほか、著書多数。

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茂木 健一郎 写真=時事通信フォト
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昨年の世界陸上北京大会。ウサイン・ボルト選手の活躍が凄かった。100メートル、200メートルの両種目を制し、さらには、ジャマイカ・チームの一員としてリレーに出場。見事優勝して、史上初めてとなる世界陸上2大会連続3冠を達成したのである。

2015年8月27日の世界陸上北京大会200m決勝でボルト選手が優勝した際の写真。(写真=時事通信フォト)

ボルト選手のように、素質に恵まれ、鍛錬をし、さらには本番に強いというのはスーパー・アスリートの証し。ボルト選手とまではいかなくとも、「本番に強い」人になるのは多くの人の願いであろう。

実際、時々、相談されることがある。「本番に強くなるためには、どうすればいいのでしょう」と。受験や仕事などで、いざというときに、普段の実力が発揮できない。それが悩みだという人が、案外多い。

そんなとき、私はこのように答える。「自分へのプレッシャーのかけ方が鍵です」と。

まず確認しておくべきことは、本番で緊張してしまうという脳の反応自体は自然であり、むしろ1つの「才能」でもあるということだ。

緊張するということは、すなわち、自分にそれだけのことが求められているとわかっているということである。高いレベルのパフォーマンスをしなければならない。わかっているからこそ、緊張する。

逆に言えば、初めての大舞台なのに緊張できない人は、自分への要求水準が低いということになる。「この程度でいい」と最初から決めつけているのでは、自分の能力を伸ばすことができない。

このように、緊張すること自体は、必ずしも悪いことではないとしても、緊張することがパフォーマンスの質を下げてしまうことも事実である。

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