「すごい潜在力だ」。丹波竜の発掘現場から、わずか約5メートル上の地層に密集していた恐竜の卵化石。発掘調査を担当する兵庫県立人と自然の博物館(三田市弥生が丘6)は8日、この地層が秘める可能性についてあらためて指摘した。今後も外部の若い研究者と共同研究を進める予定で、同館は「若手育成の拠点という役割も担っていきたい」としている。
恐竜の卵は国内での発見例が少なく、ほぼ未開拓の研究分野だった。同館は2年前、カルガリー大(カナダ)で「恐竜の繁殖戦略」を研究する大学院生・田中康平さん(30)とタッグを組み、共同研究に乗り出した。
丹波竜の地層で2007~11年に発掘後、手つかずとなっていた卵殻化石を分析。新種の卵が含まれていることを突き止め、昨年6月に論文を発表した。
今回の卵化石発掘では、同館の三枝春生主任研究員(57)と池田忠広研究員(37)が、住民による4日間の試掘調査に同行。池田研究員は「貴重な化石が埋もれているのは確実と思っていたが、こんなにすぐ発見されるとは。うれしい誤算」と話す。
狭いエリアに“太古の神秘”を解き明かす鍵が凝縮されており、丹波の地層はその存在の希少性を再び誇示した。池田研究員は「若い研究者を育てるひのき舞台となる。どんどん日本の恐竜学を発展させたい」と語った。(山岸洋介)
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