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化血研に業務停止命令 過去最長の110日間
1月8日 15時37分

化血研に業務停止命令 過去最長の110日間
熊本市にある血液製剤などのメーカー「化血研」が、国の承認とは異なる方法で血液製剤を製造し、組織的に隠蔽を続けていた問題で、厚生労働省は化血研に対して処分の期間としてはこれまでで最も長い110日間の業務停止を命じました。
この問題は、熊本市にある血液製剤などのメーカー「化血研」、「化学及血清療法研究所」がおよそ40年にわたって国の承認とは異なる方法で血液製剤を製造し、不正を隠すために製造記録を偽造するなど、組織的に隠蔽を図っていたものです。
不正が発覚した去年5月以降、厚生労働省は化血研に対し立ち入り検査を行い、書類の偽造など極めて悪質な行為が確認できたとして、8日、宮本誠二理事長を呼んで医薬品医療機器法に基づいて薬の販売などの業務を停止するよう命じました。
業務停止の期間は今月18日からの110日間で、処分の期間としてはこれまでで最も長くなります。
化血研は、ほかに代替できるものがない血液製剤やワクチンを除く8種類の血液製剤などの販売ができなくなります。
また、厚生労働省は化血研が生物テロにも使われるおそれのある「ボツリヌス毒素」を運んだ際、必要な届け出を怠っていた問題についても再発防止を徹底するよう求める行政指導を行いました。

化血研 理事長「深くおわび」

業務停止処分を受けたことについて、「化血研」の宮本誠二理事長は、「今回の処分を厳粛に受け止めるとともに、国民の健康にとって重要な血液製剤やワクチンを巡って、このような事態を招いたことを深くおわびいたします」と謝罪しました。また、厚生労働省から組織の抜本的な見直しを求められていることに関連し、報道陣から経営の統合や事業譲渡などを行う可能性について問われたのに対し、「そういうことも含めて検討している」と述べ、今後、組織の中で議論を急ぐ考えを示しました。

患者「裏切られた気持ち」

今回の問題を受け、医療現場では化血研が製造した血液製剤の使用をやめるなど不信感が広がっています。
東京・杉並区にある荻窪病院には出血すると止まりにくい血友病の患者およそ800人が通院しています。このうち、高校1年の男子生徒はこの10年間、化血研の血液製剤の投与を受けてきましたが、今回の問題を受けほかの会社の製品に変えました。男子生徒は「化血研の血液製剤のおかげで健康な人と同じような生活ができるようになり感謝していたのにいまは裏切られた気持ちでいっぱいだ。別の血液製剤に変更することで体が拒絶反応を示す心配もあるが安全性をないがしろにする化血研の製品は使いたくない」と話していました。
この病院では患者の間に化血研への不信感が広がり製品の使用をやめたいという申し出が相次いでいることから、急きょ別の会社の製品を購入するなど対応に追われています。荻窪病院の理事長で花房秀次医師は「不安を訴えても症状によっては化血研の血液製剤しか使用できない患者もいる。化血研は患者の命を守るという社会的な責任が大変大きいことを自覚してもらいたい」と話していました。

不正の背景に何が

不正がおよそ40年にもわたって見過ごされてきた背景には、薬害エイズ事件を教訓に国が国内のメーカーに対し生産体制の増強を求めてきた事情もあると指摘されています。
化血研で、国の承認とは異なる方法で血液製剤を製造する不正が頻繁に行われるようになったのは1980年代から90年代前半にかけてです。当時は、輸入した非加熱製剤を使用した血友病患者などがエイズウイルスに感染した薬害エイズ事件を教訓に、国は加熱製剤に切り替え国内での完全需給を目指し各社に生産体制の増強を求めていました。
化血研は薬害エイズ事件の被告企業のひとつで、国の方針に従い製品の出荷を優先させる一方で血液製剤そのものの安全性を確認しないまま不正を隠蔽してきました。
匿名を条件に取材に応じた幹部の1人は「当時は非加熱から加熱製剤への切り替えを優先した。不正を解消しようとすれば製品の出荷が滞った可能性があり、偽造や改ざんを続けていた。不正を明らかにする勇気がなく後悔の気持ちでいっぱいだ」と話しています。

専門家「外部の目入らない組織」

企業のコンプライアンスの問題に詳しい久保利英明弁護士は「化血研は財団法人という組織形態のため、株主の目や株価への影響がない。また、理事会にも外部の目が全く入らないという状況で問題が起こるのは当たり前だ。しかも、故意に隠蔽工作をするなど悪質な行為を行っていて、徹底的に組織を変えないといけない」と指摘しています。そのうえで、国が定期的に立ち入り検査を行いながら不正を見抜けなかったことについて久保利弁護士は「40年間だまされた検査機関を国民は信用しない。なぜ不正を見抜けなかったのか、国自身が第三者委員会を作って調査すべきだ。化血研も、厚生労働省の検査体制も、セットで大改革する必要がある」と話しています。

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