企画は雑談から生まれる?
スタジオジブリのプロデューサーである鈴木敏夫さんが書かれた新書、『仕事道楽』(岩波新書)にこんな一節があります。
(『仕事道楽』の編集者である井上さんは)「英語のEditorを編集者と訳すのは、ぼくは間違っていると思う。欧米のEditorは、文字通り、編む人を指すことばだけど、日本の場合は、多くがそうじゃない」という。
印象に残る話だった。そして、井上さんの考える、日本の編集者像が目に浮かんだ。一般的に、日本の編集者の多くが、作家相手に何をするのかといえば雑談だ。そして、その雑談のなかから作品が生まれている。それは、作品のテーマから話を始める欧米のEditorとは、全く真逆の手法だが、これぞ、日本の編集者なのだ。また、そのやり方に誇りすら持っている。井上さんが、そう思っているんじゃないかと、ぼくは妄想に駆られた。
だらだらとした会議に不満をもたれているビジネスマンの方々には怒られるかも知れませんが、編集者というのはまさしくこういった職業です。私自身も「打ち合わせではできる限り雑談をする、最低5割。できれば8割」ということを常に意識しております。
本書『メディアと自民党』も雑談があって生まれた一冊です。
社会学者の西田亮介先生に初めてご挨拶してから2年、なにかメディアに関する本をやりましょうということだけは決まっていたのですが、では何を軸にすればいいのか、打ち合わせやメディア人へのインタビューは重ねつつも、ピンとくるものを見つけられないまま、ただただ時間だけが過ぎていきました。
そんな折、私が猪瀬直樹先生の付き添いで取材で立ち会った6月の「朝まで生テレビ!」。若手議員を集めるといった趣旨の回であったにもかかわらず、自民党・公明党の議員は出席しないという「事件」が起きました。折しも安保法制に関する議論で国会が揺れていた時期。若手とはいえ与党議員が誰も朝生に出ないというのは異例で、実際翌日にはかなり話題となりました。
朝生を現場で観ながら、西田先生との雑談の中で聞いた「自民党が自らの発信力を強化するために、新興のネット企業と勉強会を開いている」という話を思い出し、「これだ!」と思い翌朝さっそく電話しました。
「先生、自民党のメディア戦略でお願いできませんか?」
幸い8月中旬は時間が取れそうだということで、そこの時間をいただき、『メディアと自民党』を一気呵成に書き上げていただきました。