(2016年1月12日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
インド・ニューデリー郊外の駅を発車した列車にしがみついた大勢の乗客〔AFPBB News〕
スレシュ・プラブ氏は1年余り前にインド鉄道相に就いたとき、130万人の従業員とそれ以上の年金受給者、総延長が地球1周半に相当する線路、そして2万1000本の列車を擁する帝国を受け継いだ。
プラブ氏とインドの双方にとって残念なことに、これほど並外れた規模――インド国鉄より人員が多い数少ない組織の1つは、中国の人民解放軍――には、悪名高い官僚主義が付いてくる。
例えば、2等寝台車の洗面所のマグカップを鎖で壁に縛り付けておくべきかどうか決めるのに18カ月かかったし、携帯電話の充電所に関する決定はヒエラルキーのまさに頂点で下される必要がある。
プラブ氏は組織に関する巨大なケーススタディーと呼べる状況にどっぷり浸かり、スピードを上げる必要性を認め、「これらが、我々が意思決定を加速しなければならない軟部組織だ」と言う。多くの人が、彼が前進を遂げることを頼りにしている。
「こうした官僚主義を取り除けるのは大臣だけだ」と言うのはアナント・スワループ氏。鉄道相直轄の市民の不満担当エグゼクティブ・ディレクターという見事な肩書を持つ高官だ。
インドが経済の秩序を立て直し、ナレンドラ・モディ首相の「メーク・イン・インディア(インドでものづくりを)」キャンペーンがただのレトリックではなく現実になるためには、インドはインフラを改善する必要がある。だが、鉄道以上に改善を必要としている分野はない。
産業発展のネックとなっている輸送インフラ
インドの製造業が競争力を欠く最大の理由の1つは、輸送網の欠点にある。世界銀行のある調査は、インドの物流コストは同行が評価する本来あるべき水準より2倍ないし3倍高いと指摘している。8000本の貨物列車の運行速度は平均わずか時速25キロで、貨物鉄道が旅客鉄道を助成するよう意図されていることもあって、顧客は世界で最高部類に入る料金を支払わねばならない。
「『メーク・イン・インディア』は成長率を加速させ、成長のあり方を変えることができる」とプラブ氏は言う。「我々は効率性を高め、コストを削減しなければならない」