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米国、電気いすでの死刑執行 「残酷」か「妥当」か 薬物入手が困難になり、伝統的な措置に回帰か

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米国、電気いすでの死刑執行 「残酷」か「妥当」か 薬物入手が困難になり、伝統的な措置に回帰か

米首都ワシントンの「国立犯罪処罰博物館」には、1916~60年に125人が処刑されたテネシー州の電気いすが展示されている(黒沢潤撮影)

 薬物注射による死刑執行が普及している米国で、国際的な死刑制度反対の動きを受けて薬物の調達が困難になっていることに伴い、昔ながらの電気いすで執行しようという州が出てきた。昨年秋には、薬物注射か電気いすか死刑囚本人が選択できる州で、あえて電気いすによる執行を希望する死刑囚も現れ、伝統的な執行方法への関心が高まっている。(米南部テネシー州メンフィス 黒沢潤)

 「残酷だ。高圧電流を使って体を“調理”するのが電気いすなんだぞ」。周囲を威圧するメンフィスのマーク・ラットレル刑務所近くで、近隣住民の男性会社員、テドリック・ワシントンさん(44)が青ざめた表情で語った。

 テネシー州では一昨年5月、ビル・ハスラム知事が電気いすによる死刑執行法に署名した。死刑で使う薬物を入手できない場合、電気いすでの処刑を優先させる州法だ。約15年前から死刑囚は、「比較的苦痛が少なくて“人道的”」という触れ込みの薬物注射か、電気いすのいずれかを選択でき、ほとんどの死刑囚が薬物注射を選んできた。

 テネシー州が同法を制定した背景には、死刑制度に反対する欧州各国が薬品会社に米国への薬物輸出を禁じ、入手が困難になっているという事情がある。州側が他の国々から輸入しようとしても、米食品医薬品局(FDA)から許可を得るのも容易でない。

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