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ブランド: アーベルソフトウェア
定価: ¥8,800 (税込¥9,504)
発売日: 2015/01/30
ジャンル: ADV
原画: うじ金時
シナリオ: 遠野ひびき
OHP: 不条理世界の探偵令嬢 

▼批評空間投稿レビュー(42点): OYOYOの「不条理世界の探偵令嬢」の感想 (ネタバレ有
※攻略は本記事の末尾。  

《ブログ用評価 S~D》 (S=非常に良い A=良い B=普通 C=やや難あり D=む~り~)
絵: B (1枚絵はそれなりだしエロい)
話: C (不条理)
演: C (立ち絵が動かないし、戦闘もショボい)
H: C  (シーンへの突入が唐突だしワンパターンすぎる)
他: D  (どこがウリかわからない)
総合: C  (処置なし)

ややキツい言い方になりますが、正直、魅力を感じる箇所がありませんでした。批評空間さんに書いた内容を補足するようなレビューをしていきます。

※なお、こちらの感想もネタバレを含みます。気になる方は閲覧をご注意ください。

まず単純に、テキストが読みづらい。
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ふう・・・・やっぱり、病み上がりだときついな。まだ本調子じゃないんだな・・・・。
今の俺の状態は、病み上がりで完全ではない。
どれだけ回復しているかを実感するために、きつめのペースで走ってみたが軽く息が切れている。
そんなに何度も「病み上がり」だと教えてくれなくてもわかります(笑)。

1つの情報を何度も同じようなかたちで言い換えたり、かと思えば説明が必要そうなところでかなり飛躍するので展開についていけなかったり……。細かい矛盾や違和感も押し寄せてきて、読むのに相当苦労します。1文を短く区切るなど読みやすいよう工夫はしてくれていると思うのですが、1つの文章、セリフ、シーンに持たせる意味がうまくコントロールできていない感じ。結果、異様にダラダラしたり、イベントが脈絡なく継ぎ接ぎされているような感じになっています。

また、探偵ものとしての緊張感や爽快感も味わえません。たとえば、蜂によるアナフィラキシーショックに見せかけた殺人では、トリックにつかわれたのがミツバチ。ミツバチは刺すとお腹がちぎれるから、生きたミツバチを捕まえたということはミツバチの毒で死んだのではない……みたいな推理がされるのですが、こどもだましも良いところです。

面白いミステリーというのは、何気ない会話や態度の中に仕込みがしてあったり、バラバラだと思っていた事実をつなぎ合わせると鮮やかに真相が浮かび上がったりするものです。蜂が死んでないから蜂の毒じゃないって、単に知ってるか知らないかだけの話で推理とは呼べないでしょう。その辺の物知りおじさん呼んでくればじゅうぶんです。

しかも、ちょっと調べたところミツバチ1匹ではアナフィラキシーショックを起こすほどの毒はないみたいですね。もちろん個人差はあるのでしょうが、そのあたりの「常識」を無視しているのも気になります。同様のシーンがこれ。

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ある人物を追い詰めるシーンですが、そこそこの地位の人の給料を何ヶ月も使うような万年筆って……。いや、そりゃ100万円超えるような万年筆ありますよ。持ってる人は見たことないけど。でも、それを落っことしてる犯人とかマヌケ過ぎませんか。しかも、スーツがよくなったとか女遊びが派手になったとかじゃなくて万年筆。よほど凝り性なんだと思いますが、そんな描写は全然なし。相手をどういうキャラにしたかったのかよくわかりません。

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細かいアラもたくさんです。たとえば上のシーン。これ、ナイフを突きつけてるように見えるけど、刺そうと思ったら芽衣の下半身が邪魔で無理ですよね。むしろ、芽衣が思い切り蹴っ飛ばせば逃げれるんじゃないか疑惑。しかも男のほう、足をだらーんと伸ばしてますから、せいぜい足を切りつけるくらいしかできないんじゃないかという……。それでもまあ脅しになるといえばなるのかなぁ。

演出もショボく、立ち絵がほとんど動きません。立ち絵に関してはアーベルさんの多くの作品でいろいろ問題になってたけど、今回まさかほんとに紙芝居になってるとは。表情もポーズもほぼ固定です。ごく一部の戦闘シーンでは申し訳程度に動くのですが、戦闘のほうもまた問題がありまして。特筆すべきはその迫力のなさ。およそ2015年のフルプライスゲームとは思えないはっちゃけっぷり。

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上のシーン、襲われている優香里を助け出すシーンです。立ち絵ではないのですが、左が殴る前で右が殴った後。マジか……っていう感じです。一枚絵使ってこれ。立ち絵のほうも推して知るべし。

ギャグをやっているのかとずっと疑っていたのですがそういうわけでもなさそうだし、シリアス路線にしては粗が多すぎて物語に入っていけないし、作中で提示される「謎」はチャチいし、登場人物たちの心理にはまるで共感できないし……という具合でほんとにどこがセールスポイントだったのか解りません。

どうもアーベルさんはいろんなところがよくわからなくて、たとえば広報のTwitter。発売後すべての呟きの枕に「
『不条理世界の探偵令嬢』無事発売して、」というひとことを付け加えています。SEO対策の一貫か何かなのでしょうか。ただただ不自然なだけで、およそ効果的とも思えないのですが。

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話が作品内容から離れたのでシステム的なところにも触れておくと、コンフィグも下のような感じで、コンパクトというか質素すぎるというか、必要最低限のものも揃っていない感じ。いやまあ、たしかにこれは絶対にないと困る設定項目ですがこれだけでいいかと言われると……。フルプライス作品だし、曲がりなりにも伝統あるメーカーさんなのですから、もう少しさまざまな機能を期待したくなります。過去の探偵シリーズの、無駄に凝ったシステムは何だったんだろう。

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エンディングは『男坂』も真っ青な打ち切りっぽい感じでスタッフロールもなかったし(私が見落としてるだけじゃないですよね?)、結果的に本作は、冒頭のこのひとことですべて片付いていた気がします。

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未来を予言するすばらしいOPだったのですね。予知能力を持ったソウシンシャからメールでも受け取ったのでしょうか。次回作が「アーベル殺人事件」にならないことを祈るばかりです。
 

【攻略】
EDは2種類。選択肢は3箇所。下記の方法でCGも埋まります。噂では、予約特典「アフターストーリードラマCD「探偵令嬢の憂鬱」」で若干本編の補完的な内容もあるようですが、真偽の程は不明。

※なお、下記攻略は確実な再現を約束するものではありません。誤りなどあればご指摘ください。

通常のED
(優香里)優しくして聞き出す → (伊織)優しくして聞き出す → (恵衣)優しくして聞き出す

バッドED
(優香里)強引にして聞き出す → (伊織)強引にして聞き出す → (恵衣)強引にして聞き出す