P被告(74)は、ソウル市東大門区の伝統市場で45年にわたって包丁研ぎをしてきた。手押し車に砥石などを積み、市場で商売する人たちの包丁などを研いで生計を立ててきて、市場の「主」のような存在だった。
だが2010年、Aさん(68)=女性=が近くで包丁を売り始めた。40年以上にわたって手押し車で営業してきたP被告と違い、Aさんは場所代として5000万ウォン(約480万円)を払い、板を2枚敷いて、外国製の高級包丁も販売した。それからほどなくして、3000万ウォン(約290万円)もする包丁研ぎ器も導入した。そんな中、1日5万ウォン(約4800円)を稼いでいたP被告の収入は、半分程度の2万-3万ウォン(約1900-2900円)にまで減った。
Aさんの売り場に集まる人たちを見ていて危機感を募らせたP被告は昨年6月、ついに堪忍袋の緒が切れた。Aさんが5日間無料で研ぎます」という看板を掲げて営業を始めたからだ。これを「もう市場から出ていけ」というメッセージと受け止めたP被告は、多量の酒を飲んでAさんの元を訪れ、用意した刃物を振り回した。幸いにも、Aさんが刃物を持ったP被告の手首をつかみ、その間に周辺の商売人たちが刃物を奪ったため、大事には至らなかった。
ソウル北部地裁刑事13部(イ・ヒョドゥ裁判長)は10日、殺人未遂罪で逮捕・起訴されたP被告に対し、懲役1年6月を言い渡した。地裁は判決理由について「刃物を用い被害者を刺して殺害しようとするなど、罪状は重いが、被告人が高齢で、かつ深く反省している点などを考慮し、量刑を決めた」と述べた。