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“女性に乱暴”の罪 実刑取り消し無罪判決
1月12日 18時53分

4年前、鹿児島市で女性に乱暴した罪に問われた被告について、福岡高等裁判所宮崎支部は「裁判所が改めて行ったDNA鑑定で、別人のDNAの型が検出され、被害者の証言は信用できない」と指摘して、1審の実刑判決を取り消し無罪を言い渡しました。
鹿児島市の23歳の男性は平成24年10月、鹿児島市の路上で当時17歳の女性に乱暴した罪に問われ、無罪を主張しましたが、鹿児島地方裁判所は「被害者の証言は信用できる」などとして、おととし、懲役4年の実刑判決を言い渡しました。
1審では、被害者の体に付着していた体液について「量が少なくDNA鑑定できない」とする警察の鑑定が信用できると判断されましたが、2審の福岡高等裁判所宮崎支部が、専門家に依頼して改めて体液を鑑定したところ、別人のDNAの型が検出され、去年3月、男性は保釈されました。
12日の2審の判決で、岡田信裁判長は「被害者の体に付いていた体液から別人のDNAの型が検出されている。一方で、警察の鑑定でDNAの型が検出されていないというのは通常考えがたく、信用性に疑問がある」と指摘しました。そのうえで、「被害者の証言はあいまいで信用できない」として、1審を取り消して無罪を言い渡しました。また2審では、検察が被告の関与を立証するため、裁判所に通告しないまま被害者に付着した体液を使ってDNA鑑定を行いましたが、裁判所は12日の判決で、「必要性がなく貴重な資料を失わせたのは著しく不適切だ。秘密裏に鑑定したのは信義則に反し、裁判の公正を疑わせかねない」と指摘して、検察の対応を厳しく批判しました。

無罪判決の男性「よかった うれしかった」

判決のあと、男性は宮崎市内で記者会見し「裁判所が総合的に事実認定をしてくれたので、感謝の気持ちでいっぱいです」と述べました。また、無罪ということばを聞いた時の心境を聞かれると、「当時のことをいろいろと思い出して、ただひと言、よかった、うれしかった」と述べました。
また弁護団の伊藤俊介弁護士は「判決は、警察がDNA鑑定の経過を記したメモを廃棄したことや、2審で検察が勝手に鑑定を行ったことの問題点にも異例の言及を行った。警察の鑑定を安易に信用することや、科学的な証拠の適正な取り扱いについて、警鐘を鳴らすものだ」と述べました。

検察・警察は

判決について、福岡高等検察庁の中田和範次席検事は「検察官の主張が認められなかったことは遺憾であり、判決内容を十分に精査、検討して、適切に対処したい」としています。
判決について鹿児島県警察本部は「判決が確定していない段階でのコメントは差し控えます。いずれにしても、緻密かつ適正な捜査をするよう引き続き指導して参りたい」としています。

元裁判官「検察は役割を考え直すべき」

元裁判官で法政大学法科大学院の水野智幸教授は、判決について「DNA鑑定の結果が出て、被害者の供述の信用性が否定された以上、無罪は妥当だ」と指摘しています。そのうえで、2審の段階で検察が裁判所に通告せずにDNA鑑定を行ったことについて「体液などの証拠は代わりになるものがなく、検察が勝手に使って全部無くなるようなことがあれば、真実の究明が出来なくなるおそれがある。裁判所などと使い方を話し合って決めることは、法律の前提となっているルールだ」と批判しています。
水野教授は「検察は実質的に証拠を保管している点などから、被告側に比べて大きな力を持っていて、裁判の勝ち負けを超えた社会正義の実現に努める義務がある。検察は改めて自分たちの役割を考え直すべきだ」と指摘しています。

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