【甘口辛口】
■1月12日
「ひと言で言えば会社と個人商店の戦いみたいなもの」。10日に決勝が行われた全国大学ラグビー選手権での帝京大の7連覇を、ある関係者がそう表現した。練習環境の整備はもちろん、選手の健康管理に医学部が協力するなど学校あげて部を支えるのが帝京大。OB会が決めた監督に強化を丸投げする他校とは組織力が違うというのだ。
大学選手権が始まって半世紀の中で、ここまで環境の異なる1チームが飛び抜けたことはない。明大の北島忠治元監督に代表される歴史を作った各校の名将たちは組織とは別の個人的な裁量で結果を残したが、できる範囲は限られていた。代替わりしたとたんに傾くことで個人商店といわれた。
帝京大は1996年に就任した岩出雅之監督が教員(現教授)という強みがある。腰を据えて強化に取り組む一方、グラウンド内外の規律を学ばせ人格形成に重きを置いて学校を動かした。清掃や食事の世話など4年生から割り振っている。上下関係が厳しい他校では考えられないシステムも組織として具体性をもって取り入れている。
東海大との決勝のスタメン中、2年と1年がそれぞれ3人ずつ計6人いたのは、下級生がのびのびと力を発揮できる環境を物語っている。上級生がけがすると、それに勝るとも劣らない力を持つ下級生が即穴を埋める。「10連覇は間違いない」との声が早々と聞かれるのも無理ない。
他の大学は手をこまねくだけなのか。「いい選手を集めれば強いのは当たり前」と嘆く前に「なぜいい選手が集まるのか」だろう。それぞれ方針がありプライドもあろうが、帝京大のラグビースタイルではなく、取り組む姿勢は学ぶ必要がありそうだ。 (今村忠)
(紙面から)