わかちあい   
JRS(イエズス会難民サービス) 

奉仕すること、共にあること、権利を擁護すること

 「(難民の人びとに)奉仕すること、(彼らと)共にあること、(彼らの)権利を擁護すること」――これがJRS(Jesuit Refugee Service:イエズス会難民サービス)のミッションである。

 1975年のベトナム戦争終結後、インドシナ半島からは多くの人びとが「難民」として危険を冒しながら海を渡った。いわゆる「ボートピープル」と呼ばれた人びとである。この状況の中で、当時のイエズス会総長ペドロ・アルペ神父はイエズス会の各管区に具体的な支援を呼びかけた。この体験をもとに、「今後、世界中の多くの地域で難民・避難民の人びとが増え続けるであろう。彼らに具体的に奉仕していくために、私たちイエズス会にはできることがある。それは、将来にわたるイエズス会の大切なミッションとなる」というビジョンのもとに、アルペ神父は1980年にJRSを設立した。アルペ神父の「先見の明」が見抜いていたように、実際に、設立当初世界中で1000万人弱であった難民の人びとの数は、2005年には4000万人を超えるまでに増大した。JRSの働きの必要性と重要性は年々増している。
 JRSは現在、南アフリカ地域、東アフリカ地域、西アフリカ地域、アフリカ大湖地域、北アメリカ地域、ラテンアメリカ・カリブ地域、ヨーロッパ地域、東南ヨーロッパ地域、南アジア地域、アジア太平洋地域の全世界10地域、50カ国以上の国々で難民支援のためのさまざまな国際的活動を行っている。
 JRSアジア太平洋地域は、タイ、カンボジア、インドネシア、オーストラリア、シンガポール、東ティモールに事務所およびスタッフを置いて活動しており、本部事務所はタイのバンコクにある。
 タイ・ミャンマー国境近くには二つのキャンプがあり、約14万人の主にミャンマーからの難民が生活している。JRSはそこで、初等・中等教育、職業訓練、司牧ケアなど行っている。また都市部の数十万人と言われる貧困層の人びとのために、教育、医療、生活相談なども行っている。またバンコクにある入国管理局の強制収容所の被収容者(その多くは難民の認定を受けられない非正規滞在者)のためのプログラム活動にも深く関わっている。
 カンボジアでは、1991年の内戦終結後、タイ国境のカオイダン・キャンプにいたカンボジア難民のほとんどが帰国した。国連の暫定統治から移行した新政権のもと新生カンボジアが始まったが、内戦時に大量に埋められた地雷の被害で、今でも手足を失うなどの被害者が後を絶たない。このような状況の中で、JRSは職業訓練などを通じて地雷被害者への支援を続けている。また、地雷廃絶国際キャンペーンでも積極的に活動し、2009年のオスロ条約(クラスター爆弾禁止条約)へのカンボジアの署名にも貢献した。
 インドネシアのJRSは、2004年のスマトラ島沖地震・インド洋大津波以来、最も被害の大きかったアチェ州で、住居の建築など日常生活の必要から、教育・職業訓練・継続的な収入の確保にむけたプログラムまで、その復興再建支援に力を注いできた。現在は、それらの支援に加えて、学校や若者たちの共同体づくりのプログラムなど将来にむけた支援にも取り組んでいる。
 もともと移民の作った国であるオーストラリアは、難民を積極的に受け入れてきた歴史を持っているが、東南アジアやパキスタンやイラン・イラクなどイスラム教国からビザを持たずに入国するボートピープルに対しては、不法入国者として「強制的収用(Mandatory Detention)」という政策を長らく採用してきた(ちなみに日本は典型的な強制収容政策を取っている国の一つである)。しかし、2007年からの労働党政権の下、JRSやその他の人権団体の働きかけによって、この政策の転換が図られている。オーストラリアのJRSは、こうした国内難民の権利擁護や啓蒙活動に大きな貢献をしており、またJRSアジア太平洋地域全体の活動のための貴重な財政的貢献も行っている。
 シンガポールのJRSは、タイ、マレーシア、インドネシア、東ティモールでの難民のためのプロジェクトへ財政的に貢献し、またシンガポール国内で難民問題の啓蒙活動などを行っている。
 日本にはJRS事務所は置かれていないが、東京の「イエズス会社会司牧センター」がJRSの日本連絡先となっている。地雷廃絶日本キャンペーンへの協力、バンコクの入管被収容者プログラムやアチェの津波被災地復興プロジェクトへの協力、また日本国内の非正規移住労働者や難民(申請者)の権利擁護のための活動などに取り組んでいる。日本国内ではあまり知られていないが、日本の難民政策はその問題点が国際的に指摘されている。アジア太平洋地域という視座で物事を見つめることが今後ますます大切になってくるであろう。

JRS Link:
Jesuit Refugee Service International
 
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