2016年01月12日

もはや「リセットボタン感覚」という言葉をお説教に使える時代は終わった


「人生にリセットボタンはねえんだ!!」
「最近のゲーム機にもリセットボタンねえよ!!」
「えっ。じゃあ人生にセーブ&ロード機能はねえんだ!!!」
「最近のソーシャルゲームにもそんな機能ねえよ!!!」
「えっ。えっ。じゃ、じゃあ人生に課金システムは」
「あるよね」
「うん、あるね」




私の長男(8歳)は、「リセットボタン」という機能を知らない。



以下、既出議論かもしれないが、気にせず話を進めることにする。

ゲームに対してあまり興味や親和性をお持ちでない中高齢の方が、「リセットボタン感覚」「リセット感覚」という言葉を若者批判・ゲーマー批判の種として用いることは、今でもそれほど珍しくはない。Web上ではあまり見なくなってきているが、一時期のゲーム脳議論なんかでは頻繁に引き合いに出される内容であったし、「人生にリセットボタンはない」というお説教を、私はつい最近、この耳で直接聞いた。


しかるに、みなさんよくご存じの通り、近年のゲーム機には基本的に「リセットボタン」という機能が存在せず、多くは「ホームに戻る」機能からのゲーム再起動で代用されている。また、近年主流のブラウザゲームやソーシャルゲーム、ないしオンラインゲームなどでは、そもそも「リセット」という概念が存在しない。そこにあるのはリセマラのみである。

ここに、「リセットボタン」という存在に触れたことがない世代、というジェネレーションギャップが存在する。おそらく、ゲームになじみのない中高齢の方が、このジェネレーションギャップを理解するのはかなり難しい筈だ。


元より、「リセットボタン感覚」という言葉は、余り実際的な言葉とは言い難かった。言葉自体ゲームと現実の区別がついていないことをおいておいたとしても、そもそもリセットボタンは「ゲームを再起動する際、電源の再投入を行うよりは手間がかからない(し、場合によってはデータ破損やフリーズなどのリスクが少ない)」というだけの機能に過ぎない。

「ゲームと同様、手軽なやり直しが出来る」という意味合いで使うとすれば、そこで使うべきはリセットボタンという言葉ではない。ラストダンジョンのボス戦前で猫にリセットボタンを押された時の悲劇を知っているものが、リセットボタンという言葉に「気軽なやり直し」を仮託出来る訳がない。

つまり、ゲーマーに「手軽なやり直しが出来ると思うな!」という説教をする時、中高齢層はせめて「人生にセーブ&ロード機能はない」とか「人生にパスワードコンティニュー機能はない」「人生にソフトリセット機能はない」といった言葉を使わないといけないし、それすら「え?ソーシャルゲームにもそんなもんないけど?」という反問の危険が付きまとう、という訳なのである。



そもそも、リセットボタンにはどのような歴史があるのか。ゲーム機におけるリセットボタンは、あるのが一般的だったのかそうでないのか?

ファミコン以降のメジャーな据え置きゲーム機に「リセットボタンがついているかどうか」というのは、簡単な調査で確認出来る筈だ。ちょっとメジャーどころをリストアップしてみよう。


ファミリーコンピュータ(1983年):リセットボタンあり
セガ・マークV(1985年):リセットボタンなし
セガ・マスターシステム(1987年):リセットボタンあり、ただしマスターシステムIIにはリセットボタンなし
PCエンジン(1987年):リセットボタンなし(標準でソフトリセット機能あり)
メガドライブ(1988年):リセットボタンあり
スーパーファミコン(1990年):リセットボタンあり
セガサターン(1994年):リセットボタンあり
プレイステーション(1994年):リセットボタンあり
ニンテンドー64(1996年):リセットボタンあり
ドリームキャスト(1998年):リセットボタンなし(標準でソフトリセット機能あり)
プレイステーション2(2000年):リセットボタンあり
ゲームキューブ(2001年):リセットボタンあり
Xbox(2002年):リセットボタンなし
XBOX360(2005年):リセットボタンなし
Wii(2006年):リセットボタンなし
プレイステーション3(2006年):リセットボタンなし
WiiU(2012年):リセットボタンなし
プレイステーション4(2014年):リセットボタンなし


ふむ。

こうしてみると、ゲームキューブ以降のハードは、完全に「ハード側でのリセットボタン」というものを排除しているように見てとれる。例えばWiiではコントローラー側でリセットが出来たり、WiiUやプレステ4、プレステ3などではホーム画面が実装されており、「ホームに戻る」機能がその代替であったりする。

また、携帯ゲーム機は、ゲームボーイ時代から「リセットボタン」があるハードの方が少数派である筈だ。ネオジオポケットやワンダースワンの頃から、ついているとすればソフトリセット機能であった筈である。まあこれは余談。


つまり、少なくとも2002年くらいから初めてゲームに触れた世代であれば、「リセットボタン」というものに触れたことがないことに何の不思議もない。ソーシャルゲームにしか触れたことがない人であれば、機能としての「リセット」というものすら知らないかも知れない、という話になる訳である。



ということで、最近「人生に手軽なやり直しをする機能はない」という意味でゲームを引き合いに出した説教をしたくなった中高齢の方は、まず相手のゲーム歴・ゲーム機遍歴を確認してから、

・人生にリセットボタンはない
・人生にデータレコーダーはない
・人生にふっかつのじゅもんはない
・人生にオートセーブ&ロード機能はない
・人生にターボファイルはない
・人生にソフトリセット機能はない
・人生に天の声IIはない
・人生にミッション中断機能はない
・人生に「ホームに戻る」機能はない
・人生にリセマラはない


などのフレーズの内適当なものを選択するのがよろしいのではないかと思う。まあ、個人的には「無理にゲームと人生ごちゃまぜにして説教しなくてもいいんじゃ」とも思うが。

全然関係ないが、ゲーム内に一般的に存在する機能で、現実とごっちゃになった場合に一番危険なのは「一時停止/ポーズ機能」の方だと思う。


今日書きたいことはそれくらい。

posted by しんざき at 11:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | 雑文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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