不況の代名詞になった昭和40年。高度成長期に酔った“花見酒経済”に揺さぶりをかけた戦後20年という節目の不況。その嵐は株式市場を襲い、山陽特殊鋼、サンウェーブなどを倒産に追い込む。指標になる株価は額面割れ銘柄を続出させていた。
時の関西財界首脳は、大阪商工会議所(大商)会頭が小田原太造(久保田鉄工社長・現クボタ)、関西経済連合会会長が、前回紹介した太田垣士郎のあとを継いだ阿部孝次郎(東洋紡会長)、大阪工業会会長が井口竹次郎(大阪ガス会長)、関西経営者協会会長が湯浅佑一(湯浅電池社長)と、一見万全。だが、現代とは異なり、この財界首脳らの年齢は70歳を超えていた。その老化現象が随所で見られ、「これでいいのか」の懸念が噴出し始めていた。
景況は既に上向き加減。ことに関西は、大阪千里丘陵での「日本万国博覧会(1970年)」の開催決定で、いわゆる“万博景気”が訪れかけていた。この国際化時代への対応に大商・小田原の果たした役割は大きい。
さりとて、明治25年生まれの小田原は当時既に73歳。老化現象が顕著になり、側近筋・財界筋をハラハラさせる場面が多発し、問題を投げ掛けていた。ウルトラワンマンだからこそ、側近筋の活躍で、キメ細かい功績を積み上げてきた小田原の評価は高かった。だが、日増しに深まる老化の色は、周囲の“失笑”を誘いつつ、彼の名声を凋落と表現できるほど下げ始めていた。
閣僚の来阪や日銀総裁との懇談会。原稿を見ながら挨拶する小田原は、耳を傾ける聴衆を前に、しばしば絶句した。視力の衰えからくるミステイク。それは昭和41年正月の年賀会で頂点に達する。
挨拶原稿を2枚、一緒にめくり、続かぬ文章に絶句して立ち往生する小田原。静まり返る会場で、噴き出す汗をハンカチで拭いながら、「もとい」と発して挨拶を継続した有名な事件である。
「これ以上、小田原さんの評価を落とすべきではない」
「速やかに引退を願おうではないか」
会場の私語は、やがて、関西財界の世論になる。
そして、盛り上がる大商会頭更迭論。これこそが、関西財界再編成のトリガー、つまり、引き金になる。
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