本気なのか。あのプロレス界の“黒のカリスマ”蝶野正洋(52)が、本紙の紙面をそのままパクった謎の覆面レスラー・大スポキッドとまさかの電撃合体を果たした。蝶野はコーチ・参謀として全面サポートを約束したばかりか、キッドをエースに押し立てての新団体設立まで思い描いているという。唐突すぎる合体の裏には、何かありそうだが…。
1月某日、大スポキッドは本紙幹部に呼び出され、某所で待っていた。「サボってないで試合をやれって叱られるんでしょう。ま、適当に流しときますよ」。年が変わってもキッドのナマクラぶりは相変わらずだ。
そんなところに雷のような怒声が鳴り響いた。
「ガァーッデムッ!」
ドスの利いた声に思わず椅子から跳び上がったキッド。「え、なになに」。次の瞬間、ドアがものすごい勢いで開けられた。
「ガァーッデムッ! アイアム・チョーノッ!」。サングラスの大男が仁王立ちしている。蝶野正洋。本物だ。
「大スポなんとかってのはお前か。ふざけたマスクだな。よし、いいか、よく聞け。俺が今日からお前のコーチだ。おい、わかったか。ありがたく思え、オラ」
首根っこをつかまれたままキョトンとするキッド。それでも「な、なんで蝶野さんが?」とビビリながら、もっともな質問をぶつける。
これに蝶野は「30年ぐらい前、俺はドイツとかアメリカで修行してたんだ。そのとき世話になったのが、お前をここに呼び出した大スポの幹部。そんな人に大スポなんとかってのを何とかしてくれって頼まれたら、やるしかないだろ、オラ。借りは返すもんだ。ガァーッデムッ! アイアム・チョーノ!」。
いわゆるひとつの“黒い恩返し”。
和訳すると「こんちくしょう、私は蝶野です」とわめいているだけの姿からは想像もできない義理堅さを持っていたようだ。さらにこう続ける。
「いいか、やるからには俺みたいに天下を取らなきゃ意味がないんだ。大スポなんとか、何? キッド? まぁ、名前なんかどうでもいい。俺のすべてを伝授してやるからな。そして、お前をエースにした新団体を旗揚げするぞ。目指すはプロレス大賞MVPだ。団体の名称はアリストトリスト大阪でどうだ」
衝撃的な新団体設立構想。
ただ、言葉が軽すぎるのが引っかかる。アリストトリストは蝶野のファッション&アクセサリーブランドで東京・表参道に店を構えているのだが、アリストトリスト大阪はプロレス団体ではなく、その支店として服やアクセサリーを関西で売りつけるつもりではないのか。
「よーし、立て」。すっかりビビってしまっている大スポキッドの胸ぐらをつかんでひきずり起こした蝶野は、いきなりビンタ。鈍い音とともに大スポキッドは吹っ飛ぶ。
気合を入れたところでケンカキックの指導だ。「オラ、もっと足を大きく開け。もっと上げろ」などと手取り足取りで教えていく。
次はポージングの練習だ。ところが、一通りこなしたところで「よし、今日はここまで」。おいおい、時間にして10分足らずで初合体練習終了? あの怠け者の大スポキッドですら「えっ、もう終わりなんですか」と聞き直したほどだ。
蝶野は「文句あんのか、オラ。俺は忙しいんだよっ、ガァーッデムッ!」と吐き捨て、キッドをひとり残してとっとと撤収してしまった。
文字通り、形だけとなった大スポキッドと蝶野の合体。次の展開は果たしてあるのか――。
【一問一答】
――冷やかしか
蝶野 そうじゃない。頼まれたことをやったまでだな。
――本当に今後も大スポキッドをコーチしていく気はあるのか
蝶野 もちろん。約束は守る。アイツに言ったことはやるつもりだ。都合がつけば…だがな。
――プロレスの試合は昨年1試合もやっていないが
蝶野 大みそかの「ガキ使」は見てくれたか。あとな「Let〓天才てれびくん」(NHK Eテレ)、「バラいろダンディ」(TOKYO MX)はレギュラー出演中だ。「バラいろ――」は東京ローカルだけど、スマホアプリ「エムキャス」で日本のどこでも見られるぞ。
――テレビタレントか
蝶野 レスラーだよ。でもな、アリストトリストではカッコいい服やサングラスを買えるぞ。去年の暮れには大阪でも物販会を開いたけど、通販でも買える。買って着れば、誰でも俺みたいになれる。詳しくは「アリストトリスト」で検索だ。
――そんなことは聞いていない
蝶野 うるさい。黙って聞け。俺が今、一番力を入れているのは一般社団法人「ニューワールドアワーズスポーツ救命協会」。
――ニューワールドオーダー(nWo)の進化版か
蝶野 バカ野郎、救急救命の啓発活動をやってる協会だ。国、省庁、各自治体が取り組んでる活動を支援してる。全国でAED(自動体外式除細動器)の操作方法を実演したりしてるんだぞ。
――“黒い慈善活動”
蝶野 なんでも「黒い」って付けるな。悪いことをしてるみたいだろがっ。
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