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三越伊勢丹ホールディングス社長 大西洋

「三越伊勢丹」は今、これだけ変わる必要がある

大西 洋 [三越伊勢丹ホールディングス社長]
【第2回】 2016年1月12日
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Photo by Yoshihisa Wada

 前回述べたとおり、百貨店業界の深刻な売上規模縮小が続く中で、三越伊勢丹の改革は、経営の構造部分に踏み込んでいる。

 改革は、マーケティング、人材育成・人事制度、店舗戦略、仕入れなどあらゆる領域におよんでおり聖域を設けていない。それゆえに社内から賛否の声が聞こえてくるのも事実である。同業からは、「三越伊勢丹ですらそうなのか……」と評価と驚きがない交ぜになった声を聞くが、経営インフラ改革は、本当に待ったなしなのだ。

「お客さまの姿」をつかむにはどうすれば?
〈マーケティング改革〉

 お客さまのニーズは常に変わり続けている。三越伊勢丹が成長を続けるには、変わるお客さまの声に耳を傾け続けなければならないし、自分たちも変わり続けなければならない。

 ならば変わるそれにどう向き合い、向かい合えるようにするには何を変えなければならないのか。これがマーケティング改革の根本をなす。

 「マーケティング」といえば、商圏分析やお客さまの購買分析、そしてスタイリスト(三越伊勢丹では、販売員をこう呼ぶ)が店頭で実際にお客さまと接し、そこからお客さまの潜在的ニーズを収集するといった手法がある。

 これらのうち、まず三越伊勢丹のマーケティングとしての取り組みが弱い。「エムアイカード」は約280万人の会員がいらっしゃるが、このうち百貨店における実際のカード会員の売上シェアは約50%。また実際にご利用いただいているカード会員も全体のおよそ半分という状態だ。

 つまり半分のお客さまに対するマーケティングができていない。さらにいうと、三越伊勢丹に来店されていないお客さまのマーケティングもできていない。未利用のお客さまの姿を探り、施策を立案しようとして、普段お使いいただいているお客さまの姿から類推するのは理屈に合わない。今まではそれで良かったが、これからは140万人のデータでは、データを活用した分析としては十分ではないし、そこから抽出されるお客さまのライフスタイル像の精度も高いものにならない。

 そこで2015年10月、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)との間で、顧客分析などのデータ活用を含めた包括的な提携を結ぶことを発表した。共同出資で新会社を設立し、購買データを駆使したお客さまニーズの発掘や新たな商品・サービスの開発を進める。CCCのカード会員は約5500万人。アクティブ利用者が半分と見積もっても2700万人で、日本国民の4分の1くらいのライフスタイルを購買データから分析できる。これを店づくりと新しい価値創造に反映させていく。

 カード関連では2016年4月から、エムアイカードのポイントを、日本航空や全日空のマイル、JTBのトラベルポイントと相互に交換できるようにする。これもプラットホームをポイントに共通化することで、お客さまへのインセンティブ付与だけでなく、ポイント交換を通じたお客さま情報を広く活用していくマーケティング機能強化の取り組みだ。

 さて、百貨店が他の小売業と競争していくうえで最も重要なインフラは、「商品」「環境・空間」「販売・サービス」であるのは、今も昔も変わらない。

 とくにこれからの百貨店の店舗づくりでは、「環境・空間」がこれまで以上に重視されるようになる。来店されたお客さまにワクワクした気持ちになっていただいたり、少しでも「長くこのお店にいたい」と思っていただける環境・空間を創ることがきわめて大切だ。

 まずはお客さまに来店していただくこと、そしてそのお客さまのライフスタイル像を高い精度でつかむためのマーケティング機能の強化は、百貨店再生にとって不可欠なものだ。だから、ひとつの方法として外部企業との提携によって、マーケティング・インフラのプラットホームを共通化し、強化していくのである。

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大西 洋三越伊勢丹ホールディングス 社長

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大西 洋 [三越伊勢丹ホールディングス社長]

1955年東京都生まれ。79年慶應義塾大学商学部卒業後、伊勢丹(現・三越伊勢丹)入社。紳士服部門を歩み、紳士統括部長などを経て、2008年三越常務執行役員、伊勢丹常務執行役員。09年に伊勢丹社長。11年に三越伊勢丹社長。2012年2月より三越伊勢丹ホールディングス社長。

 


三越伊勢丹ホールディングス社長 大西洋

1955年東京都生まれ。79年慶應義塾大学商学部卒業後、伊勢丹(現・三越伊勢丹)入社。紳士服部門を歩み、紳士統括部長などを経て、2008年三越常務執行役員、伊勢丹常務執行役員。09年に伊勢丹社長。11年に三越伊勢丹社長。2012年2月より三越伊勢丹ホールディングス社長。

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