(2016年1月8日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ロンドンのGSK本社〔AFPBB News〕
英グラクソ・スミスクライン(GSK)は、医療専門家との利益相反を巡って医薬業界に対する圧力が強まっていることに対応し、自社製品の販売促進のために医師に金銭を支払うのをやめる最初の大手製薬会社になった。
GSKは全世界で、医療セミナーで自社を代表してプレゼンテーションを行ってもらうために医師に報酬を払うのをやめる。
まだ日常的にベテラン医師を雇い、医薬品ブランドについて同業の医師を教育してもらっているライバル企業と一線を画した格好だ。
2年間の計画立案を経て1月初めに発効した新たな方針は、中国での汚職スキャンダルでダメージを受け、不正な販促について米国で30億ドルという史上最高の和解金を支払った後、同社が汚名をそそぐために講じた最新の対策だ。
GSKは、医薬品業界に対する一般市民の信頼を損ねた医療専門家との金銭的なつながりを一部絶つという点で、他社もいずれGSKの先例に倣うことを余儀なくされると予想している。
他の医薬品メーカーは引き続き、医療会合――国際会議から地域のセミナーまで幅広い――で自社製品について話してもらうために医師に金銭を支払うことは、最新の治療法について知識を共有する合法的な手段だと主張している。
お金を受け取って講演する「雇われガンマン」
だが、GSKの最高医療責任者を務めるマリー・スチュワート氏は、このような形で支払いを受けている医師はますます、社会から「雇われガンマン」と見られるようになっていると指摘。利益相反を避ける最善の方法は、メーカー自身の従業員がプレゼンを行うことだと言う。
GSKは、従来外部の医師が行っていた講演の仕事を担う社内チームを築いている。昨年はこの目的で、ワクチンと呼吸器疾患の世界的権威数人を含め、150人以上の医師を採用した。同社はまた、講演要員を増やすために、すでに社内に抱えていた1000人の医師の一部を訓練している。
GSKは今後も自社製品の販促のためにこうした医師を活用するが、彼らが常に会社の従業員であるという事実がプロセスを透明化させると考えている。批判的な向きは長年、製薬会社から医療行為を実践する医師への金銭の支払いは、患者の治療に関する当該医師の決断に影響を及ぼす恐れがあると主張してきた。