[PR]

■大相撲 ちょこっとウンチク

 土俵には神様がいる、ということになっています。その象徴の一つが、「吊(つ)り屋根」の四方に垂れ下がっている4色の房です。その房の話を。

 どこにどの色の房を下げるか位置が決まっていて、時計回りに、正面は黒。東は青、向(むこう)正面は赤、西は白です。この4色の房がそれぞれ象徴しているのは、黒は玄武、青は青龍、赤は朱雀、白は白虎です。また、この4色は方角も表しています。黒は北。青は東、赤は南、白は西です。

 さらに、この4色は季節も表しています。黒は冬、青は春、赤は夏、白は秋です。青が春というと、「『青春』時代」なんて言葉があるじゃないですか。白が秋というと、「ゆりかごのうた」を作詞したのが「北原『白秋』」じゃないですか。

 この4色は、「日本人にとっての原色」のような色です。黒、青、赤、白の4色だけは、黒い、青い、赤い、白いと、「い」をつけるだけで形容詞になります。黄や茶、紺など他のすべての色では、こうはいきません。

 四つの感覚から、日本人の色彩感覚が生まれたようです。

 明るい様子が「あかし」で赤に。その反対の暗い様子が「くらし」で黒に。

 はっきりしている「しるし」から白に。その反対にぼんやり淡いのが「あわし」で青に。いまでも、はっきりマークをつけることを、「印(しるし)」といいますよね。

 まあ、それはともかく。

 いま、国技館の天井からワイヤでつっている「吊り屋根」ですが、江戸時代から戦後までは4本の柱で支えていました。つっていませんから、「吊り屋根」とは呼びません。「屋形」と呼び、4本の柱で支え、その柱には4色の絹の布が巻かれていました。