地域の気候や風土、伝統に根ざし、その地域の名を冠した農林水産品や食品などのブランドを守り、価値を高めていく。

 そんな地理的表示保護制度に基づき、夕張メロン(北海道)や江戸崎かぼちゃ(茨城県)、神戸ビーフ(兵庫県)など7品目が国の審査を経て登録された。昨年夏に施行された地理的表示法による第1弾である。

 お酒については独自の仕組みがあり、「日本酒」が指定されたことで話題になったが、今後は各地の一次産品が相次いで認められていく見通しだ。

 ブランドを保護する仕組みには商標登録があり、地域名を含む地域団体商標制度も用意されている。しかし、商標権を侵害された場合、権利者が自ら訴訟などを起こす必要があり、負担は小さくない。地理的表示法なら、違反がわかれば行政が直接取り締まることができる。偽物や模倣品の追放に効果がありそうだ。

 そうした「守り」に加えて、地域の活性化という「攻め」にも地理的表示を生かせる。

 名の知れた地域ブランドでも、生産者ごとに品質がばらばらで消費者をがっかりさせる例が散見される。地理的表示保護制度への登録には、一定の品質と生産方法を保ち、おおむね25年以上作り続けていることなど厳しい条件がある。登録を目標に、農林水産業者が地域あげて品質を高めながら、食品加工や販売を担う業者も巻き込んだ「6次産業化」を進めたい。

 この制度では地域の文化や伝統行事との結びつきも重視されるだけに、登録産品とイベントを組み合わせて観光客を増やすなど、さまざまな可能性があるだろう。民間と行政が協力し、地域おこしへの戦略を練る際の「てこ」になるはずだ。

 登録した特産品の輸出を増やすうえでは、保護の効果を海外に広げることがカギになる。

 地理的表示法はあくまで日本の法律であり、その効力は国内にとどまる。一方で、地理的表示は世界貿易機関(WTO)の協定で認められた知的財産権であり、保護制度を持つ国は100を超える。そうした国との間で、お互いの登録産品を認め合う枠組み作りが欠かせない。

 合意に達した環太平洋経済連携協定(TPP)では、地理的表示に関する基本ルールが盛り込まれた。経済連携協定の交渉が続く欧州連合(EU)は、地理的表示に熱心な「本場」として知られる。アジア地域での自由貿易・経済連携協定を含め、政府は発効・合意への努力を続けてほしい。