ドイツ西部ケルンの警察当局は10日、昨年12月31日に外国人風の男らが女性を取り囲み集団で性犯罪に及んだり金品を強奪したりした事件で、被害届が10日現在で516件に達したと発表した。新たに19人の容疑者を特定したことも明らかにした。

 警察は大半が北アフリカや中東から来た難民保護申請者か不法滞在者とみて捜査している。事件は世界遺産の大聖堂に近接するケルン中央駅前の広場で発生。日本人にも人気の観光地で、在デュッセルドルフ日本総領事館は「人出が予想される機会には、周囲の状況をよく確認して身の安全を確保する」よう注意を呼び掛けている。

 ケルンでは9日、事件を受けて移民排斥を訴える反イスラム団体がデモを行い、約1700人の参加者が警官隊と衝突。警官や取材中の記者が負傷した。10日にはパキスタン人2人とシリア人1人が暴徒に襲われてけがをした。

 ドイツには昨年夏以降、内戦が続くシリアなどから難民や移民が大量に流入している。ネオナチなど極右勢力が強く反発しており、難民らに対する暴力も懸念される。

 国連のサザーランド事務総長特別代表は難民に対するドイツの国民感情悪化を懸念し「人種差別主義者が全てのシリア難民に汚名を着せようとしている。難民は尊重されなければならない」とツイッターで警告した。

 事件では、約1000人の男らが花火を人混みに打ち込むなどして暴れ、複数のグループが女性を囲み犯行に及んだ。ドイツ連邦警察が9日までに身元を特定した容疑者32人のうち22人が難民保護申請者だった。

 一方、大みそかに同様の事件が起きた北部ハンブルクでも、被害届が10日までに133件に達した。(共同)