本サイトの趣旨平成27年3月28日平成27年3月27日に「研究活動に係る不正行為に関する調査結果について」 という記事が岡山大学公式webサイトに掲載された。告発者、および披告発論文についてはこの記事からは不明であるが、時期的に見て本学薬学部の森山、榎本両教授(現在、停職中)による医学部論文の不正告発であることが推察される。告発書の内容、調査報告書がともに公開されていない現状において今回の調査結果を評価することは困難であるが、これまでに他大学で実施されてきた研究不正の調査報告と比較すると以下の点で異例である。
私たちは両教授が係争中であるハラスメント問題とは一線を画しており、研究不正調査の適切な取り扱いを求めるものである。なお、実名での意見書の送付が適切であることは承知しているが、大学側の姿勢として、事実をもって議論するのではなく、権力をもって懲戒することが専らであることから、匿名による指摘に留める。指摘する内容はいずれも公開された事実であり、匿名か実名かによる影響を受けないことは言うまでもない。 匿名一教員 追記(平成28年1月4日)その2 本日薬学部教職員に対して12月28日付で森山、榎本両教授の解雇が行われた旨が報告された。また、夕方には薬学部の全学生を対象にメールで両教授の退職が通知された。解雇の事実、その理由等が一切示されていない(「岡山大学の決定として…両教授がご退職された」という異様な表現らしい)、学生にとってはよく分からないメールとのことである。 追記(平成28年1月4日) 元日のYahooニュースにおいて、榎木英介氏による昨年の研究不正事件をまとめる記事が掲載された。ここでは世界各国の不正事例に加え、国内では岡山大学の研究不正に対する対応が悪質であることが指摘されている。片瀬氏による調査、報告に端を発し、次第に今回の岡山大学の対応の異常さが理解され始めているようである。 やっぱり小保方さんなんてかわいいほうだった~2015年も多発した研究不正事件(Yahooニュース) 3日には毎日新聞において、岡山大学の研究不正調査の問題点が指摘されている。研究不正問題にどう取り組んでいくかを考える上で重要な論点をふまえた素晴らしい記事である。不正調査自体の杜撰さや、指摘を受けてもそれが是正されない背景には、文科省のガイドラインに問題があることを二つの記事を通じて指摘している。文科省の研究不正に対するガイドラインは決定的なものではなく、随時見直しをしていくことが表明されている。大学執行部が関わる研究不正案件について、大学執行部自身が第三者性をもって調査できないことは自明である。文科省の方針は学長への権限の集中をはかり、機動的な国立大学の運営を求めるものであるが、学長への権限の集中により生じる問題点についての検討は必ずしも十分とはいえない。文科省が岡山大学の構成員に自浄作用がないことを指摘することはもっともかもしれないが、一方で監督官庁として自らが定めた仕組みから生じた問題については責任をもってこれを是正する義務があるだろう。大学からの公式発表はまだないものの、岡山大学自体は告発した両教授に解雇という判断を下しているようであり、評議員を含め執行部には自浄作用がないことは明らかである。今後、社会から厳しい批判を受けることは免れないだろう。 告発に生データ見ず「適正」 岡山大調査委(毎日新聞) 「シロ」判定 文科省指針では公表不要(毎日新聞) 追記(平成27年12月8日) 明日は岡山大学の評議会において森山、榎本両教授の解雇について審議される予定である。研究不正の公益通報が隠蔽され、さらには停職、疑義不詳の自宅待機、解雇という措置が国立大学において取られたことの意味は限りなく大きい。平成26年のSTAP細胞事件、東大分生研の大規模な捏造論文の発覚に続く形となったが、本件は、研究者コミュニティにおける自浄作用が踏みにじられた実例である。本件を看過、容認することは我が国における科学研究に取り返しのつかない傷跡を残すことだろう。医学部と近いところにいない基礎研究者の方にはなかなか理解が難しいことではあるが、大阪大学や東京大学、そして岡山大学で起こっていることは、医学部におけるヒエラルキーを維持するのか、あるいは科学研究を死に追いやるのかの二択を迫るものといえる。 研究不正を内部告発した教授らに大学が解雇処分の判断(warblerの日記:片瀬久美子氏のブログ) 岡山大学医学部・薬学部研究不正の懐疑点(日本の科学と技術) 追記(平成27年10月26日) 23日に続いて再びNHKより報道が行われた。今回は岡山大学による昨年度の科研費の不適切な取り扱いを報じている。森山教授と協議することなく研究交流部より辞退届を日本学術振興会(JSPS)に提出し、一方でおよそ560万円の森山教授の研究費についてはJSPSには返却していないという。大学側の言い分では、まるで森山教授が手続きをしていないかのようであるが、実態は勝手に科研費を召し上げたもののJSPSには説明も適正な手続きもできていなかったという杜撰な話である。森山教授に対する迫害は熱心にやるが、法的な手続きは適正に実施できない。疑義不詳で懲戒を予告したまま自宅待機を命令する組織に相応しいエピソードである。 「未使用の科研費 返還できず (NHK岡山放送局)」web版のリンク 研究費の不正使用は一般に厳しい措置が取られるが、事務方の不正行為にはどのような懲戒処分がとられるのであろう。研究担当の山本理事の責任はいかがなものであろう。森山教授の科研費は今年度も継続予定であったようだが、停職処分が解けた今、復活措置は取られているのだろうか。不正を告発した研究者を懲戒し、処分後も法令無視の自宅待機と研究費召し上げを行う岡山大学執行部は社会から厳しい批判を受けるべきであろう。学長の権限強化を目指す文科省は、このような失敗を放置していて良いのだろうか。このままではガバナンス不在の国立大学という批判を受けることは免れない。 追記(平成27年10月23日) NHK岡山放送局により、森山、榎本両教授が長きにわたる自宅待機命令の取り消しを求める訴えを岡山地裁に起こしたことがテレビ報道された。ニュースでは、両教授は教員に対するハラスメントの疑いで停職処分を受けたが、処分終了と同時に自宅待機命令が出たこと、停職処分については仮処分で違法性が認定され、停職期間の給与の支給が地裁により命令されたこと、がそれぞれ報道された。大学側への配慮を感じさせる表現ではあるが、事実関係については適切に報道されている。そもそも自宅待機の疑義が不明であること、既に5ヶ月になろうとしていることが追加されれば、大学側の措置の異常性がより明らかになったと思われる。本件は、NHKのみが先行報道しているようである。 森田潔学長は博士論文不正の隠蔽を指示したことを否定しているようであるが、予備調査委員会、本調査委員会が設置されながらも、3年以上何の判断も下されていないという事実が全てを物語っている。医学部論文のようにシロ判定の発表ができないのは、博士論文全体が剽窃によって作成されており、不正の否定は事実上困難であるためらしい。 追記(平成27年9月14日) サイエンスライターの片瀬久美子氏によって岡山大学に対して情報公開請求が行われ、本サイトが指摘していた問題点以上に杜撰な研究不正調査報告書の一端が明らかにされている。調査委員会の構成員の名前が明かされないことについては疑問に感じていたが、早稲田大学の小保方博士論文の調査委員会と同様、この調査報告書に署名するようでは研究者失格の烙印を押されても仕方ないだろう。いずれ真相が明らかになるだろうが、外部の調査委員の方はこのような不名誉を甘んじて受けるのであろうか。また、このような明らかな瑕疵のある調査報告書について文部科学省はどのような見解を示すのであろうか。 岡山大学医学部不正調査の問題点(warblerの日記:片瀬久美子氏のブログ) 両教授は停職期間を含めるともうすぐ丸1年間薬学部への立ち入りを制限されていることになる。疑義不詳の自宅待機命令の継続は、大学執行部の措置には大義はなく、力で研究不正を封じ込めようとしていることを示唆するものでああろう。学長の任期は1年以上残されており、不透明な幕引きを計ることは難しい。 追記(平成27年8月29日) 平成27年5月26日の阿部宏史理事のメールは、岡山大学の法務・コンプライアンス室のメールアドレスより発信されているが、ここでは「両教授においては、パワー・ハラスメント等とは別の非違行為の疑いがあることから、現在、当該事案の調査を行っているところです。」という記載がある。既に3ヶ月が経過しているが、今もって「別の非違行為」とは何かは明らかではなく、阿部理事からの報告もない。「法務・コンプライアンス室」を名乗る組織が、疑義も示さず長期の自宅待機を命令するという異常な処分に積極的に荷担するというオーウェル的な状況は、岡山大学が大学という組織の理想からかけ離れた全体主義的な状態にあることをよく示している。監査を行わない監事・法人監査室、コンプライアンス意識の欠けた法務・コンプライアンス室、研究不正を隠蔽する研究大学、いずれも学長の強引な運営がもたらした倒錯である。 このような強引な懲戒処分を継続する背景は誰しもが関心を持つところであるが、その一つが研究不正の隠蔽にあることはおそらく間違いないだろう。 ・学位論文不正 博士論文で盗用疑惑、学内調査委が再審査勧告(平成26年6月18日佐賀新聞記事アーカイブ):平成24年1月に発覚した学位論文不正は平成26年6月の記事にあるように、再審査が勧告されているが、1年以上経過した現在も調査は実施されていない。 ・研究論文不正 大学側は公式HPを用いて全ての告発は誤りであることを主張しているが、その根拠は示されていない。以下のような客観的に判断できる瑕疵が、不正認定はおろか論文修正すら指示されないことについては十分な説明が必要である。これらの論文が調査を経てなお何の修正もなく社会に公開されていることは、岡山大学が研究機関としての責任を果たしていないことを示している。 写真の取り間違いを修正した訂正論文においてさらに写真の間違いがあるような杜撰な研究は、不正の意図の有無に関わらず、その論文自体の信頼性がない。データ画像の切り貼りが場合によっては問題であるということは既に過去のいくつかの事例で明らかである。また、同一の臨床研究を対象とした二つの論文(一方は日本語の受賞記念論文)で明らかに異なる二種類のデータが示されていることは、臨床研究のデータの取り扱いの杜撰さを示しており、深刻な疑義を招くものである。 追記(平成27年8月18日)森山、榎本両教授に対する無期限の自宅待機命令はもうすぐ3ヶ月に達しようとしている。薬学部教職員に対する理事からのお知らせでは、停職処分時とは異なる新たな非違行為の疑いがあり、懲戒処分を科す予定であるということが記載されていた。しかしながら、今なおその疑義は明らかにされておらず、懲戒処分の手続きが進んでいる様子もない。通常、刑事犯による逮捕等の客観的に明らかな理由による懲戒処分決定までの期間が自宅待機処分にあてられるが、両教授の非違行為が何かは今もってよく分からないままである。薬学部は事実上、二名の教授を欠く状況が継続しており、研究、教育、学部運営、いずれにおいても今後の計画を立てることが難しい状況にある。両教授の研究室のスタッフ、学生たちは先の展望が見えない状況で疲弊している。 岡山大学執行部のこうした措置は極めて不可解なものであり、両教授の復職を断じて阻止しなければいけない強い理由があることがうかがえる。それが博士論文不正の問題なのか、あるいは医学部の研究不正にあるのか、詳細は不明である。文科省は4月から学長の権限を強化し、速やかな意思決定が可能な大学運営を目指しているが、岡山大学の事例は、権力の監視やチェックが全く機能していない惨めな失敗例である。速やかに事態を収拾し、問題点を検証する必要があるだろう。 追記(平成27年7月10日)本サイトは、研究不正の告発が岡山大学により正当な理由なく却下され、告発者が逆に懲戒処分を受ける可能性があることについて指摘することを当初の目的としていた。しかしながら、その後の進展は国立大学の対応としては極めて異常なものとなっている。 学部内におけるパワーハラスメントを理由とした停職措置は5月25日をもって完了した(ハラスメントによる懲戒処分妥当性については岡山地裁において係争中)が、引き続きハラスメント以外の疑義で懲戒することが予告されており(疑義の内容は不明)、無期限の自宅待機命令が下された。懲戒の根拠は不明で、時期も明らかにされないことから、研究室のスタッフ、両教授から研究指導を受ける学部生、大学院生の動揺は大きい。 以下に指摘するが、大学内において学長をはじめとする執行部の独走を牽制する動きは見られない。学長と両教授の係争を通じて、最も弱い立場にある学生が大きな被害を被っている。 岡山大学で現在進行していることは、高等教育機関としての使命の放棄である。関係各位は大学の責務を再確認し、正常化に向けた努力をすべきである。 緊急の追記(平成27年5月26日)平成27年5月20日に岡山大学森田潔学長により、森山、榎本両教授に対して5月26日以降の自宅待機命令が発せられたようである。命令書には追加懲戒の意向が示されているが、懲戒事由が何であるかは明らかにされていない。岡山大学は研究不正の告発に対する調査報告は完了したという認識であることから、「真正な」研究成果を不正として告発した両教授に対しては懲戒処分が行われる可能性がある。今回の懲戒事由は異なるものである可能性もあるが、そもそも何の根拠も示さずに研究不正がないとしている岡山大学の独善的な調査報告が修正されない限りは、研究不正の虚偽の告発を事由とした懲戒処分の懸念は解消しない。緊急の追記として、岡山大学における研究不正告発の経緯、およびその主体であった薬学部に対する大学執行部の対応を公開(岡山大学における研究不正の告発(時系列))する。両教授を継続して支援する必要性から、今回も匿名教員として記録を行う。何故、匿名とせざるを得ないかについては、これまでの大学執行部の対応からご理解いただきたい。 (平成27年5月27日現在)森山、榎本両教授に対する自宅待機命令は、懲戒処分の対象となる疑義については一切説明されることなく、その期限も設定されていないことが明らかとなった。薬学部長、医歯薬学総合研究科長も理事からのメール以外の経緯は知らないという。既に係争対象となっている疑義では8ヶ月の停職処分が執行され、引き続き自宅待機が命じられている。研究室に所属する学生、院生が喪失した教育指導を受ける機会を取り戻すことが不可能であることを考慮すると、教育機関としての責任を果たしているとは到底言いがたい状況である。 (平成27年6月12日現在)自宅待機命令にかかる疑義の開示、今後の展望について薬学部長に複数の教員が問い合わせを行っているようであるが、今もって事情は明らかにされていない。疑義不詳のまま、自宅待機状態は既に2週間を越えている。復職を期待していた学生、スタッフはそれぞれ抗議の声をあげているが、今のところこれらは適切に取り扱われていない。一部の学生はこのような状況の中、就職活動を継続している。両教授の復帰の目処は立たず、一方では懲戒予告は解雇であるという噂が流れており、強いストレスがかかる状況が続いている。国立大学の教職員は見なし公務員であるが、上司の命令より法律遵守を優先させるような動きは皆無である。 匿名一教員 |