不動産で働いていた頃の話です。家賃の滞納により「暴力団〇〇組の入居者をマンションから強制退去させる」というミッションを社長から命じられました。当時私あとひれ (@atohire) 若干20歳でした。
目次
暴力団〇〇組の方を入居させてしまった
その方がある賃貸の3LDKマンションに入居したいと家族で来られたんです。普通に奥様に子供も2,3人いたと思う。風貌もそんなに違和感無く口調が多少荒いなぁと感じるくらいでした。
もちろんその時は暴力団〇〇組などと知る由もありません。当時の入居審査というのは、旦那様の職場への在籍・勤務年数確認、保証人との連絡確認でした。
とあるお寿司屋さんにお勤めだというので電話しましたら「働いていますよ!」との事だった。在籍年数も基準をクリアしていた。ただ保証人だけはいないとの事でしたので「保証人不要システム」を使った。もちろん保証会社の審査も通っていたのである。
そんなことでマンションのオーナー様からも了承を頂き何事も無く入居させた。
入居してから・・・
入居してからというものマンション住民からクレームの嵐だった。
・夜中まで騒いでうるさい
・人の出入りが激しい
・注意したら怖い顔された
・ヤンキーの娘が通路でタバコを吸っている
・猫を飼ってる(ペットNG)
などなどクレームを尽きなかった。その都度注意させてもらったが「スミマセン」と妙に優しく謝られるばかりで、しばらくするとまた住民からクレームが来た。
そんな矢先に、今度は家賃を滞納しだした。「保証人不要システム」を採用していた為、オーナーさんには家賃の保証はされている。しかしシステムにも「3ヶ月滞納分まで保証」ということなのでそれ以降も滞納が続くようであれば強制退去させるしかないとのことだった。
※強制退去とは:合鍵で侵入し荷物を整理し退去してもらう。その後は鍵を変え二度と入れないようにすること。
案の定、家賃を支払われることは無く、退去願いの1ヶ月予告をすべくお伺いした。しかし開けてくれない。朝に行っても、夜に行っても開けてくれない。電気メーターは回っているし、郵便物もある。明らかに中にはいると思う。勤務先にもいないし、連絡もつながらなくなった。しょうがないのでドアに「〇〇日までに入金無き場合、〇〇日に退去頂きます。」的な告知分を張り付けた。
ヤクザやった
引用:ヤクザ | 闇キュレ
当然のごとく入金が無い中支払い期日を迎えた。同時に驚愕する噂がマンション住民から入った。
「あの人は暴力団〇〇組らしいぞ!」
嘘でしょ・・・。勤務先に在籍確認もしたのに・・・。保証会社の審査も通ったのに・・・。そんな噂はすぐにオーナーの耳にも入り「即刻対応を頼む」とのプレッシャーをかけてきた。当然のことである。変な噂が流れて入居者が退去していくなどの懸念があるからだ。
ついにうちの社長から指示が入る!
「さあ!強制退去だ。あとひれ君には護衛1人つけるから行ってくれ!」
愕然としすぎて膝から崩れ落ちた。確かに自分が担当で入居させたとはいえ、暴力団の強制退去を自分がやるのか?若干20歳の若造が対応できることなのか?ボコボコにされ最悪銃で撃たれるんじゃないか?あまりの驚愕さに親にも言えなかった。後にも先にも無いであろう命をかけたミッションを若干20歳で仰せつかったのである。
ミッション遂行
かなりの不安はあるが、もうやるしかない。子供騙しだが、万が一に備えお腹には本を仕込んでいた。護衛と言われる先輩はスタンガンと呼ばれる感電器具を忍ばせていた。そんな二人で暴力団の棲家に向かったのである。
一応、インターホンを鳴らしたが応答がない。緊張は最高潮である。ドキドキしながら合鍵で中に入った。中には暴力団の旦那様以下家族全員が何食わぬ顔でテレビを見ていたのだった。一応冷静に冷静に説明をしたわけだが、一か月以上も前に告知をしていたためか、意外にも罵声を受けることもなく粛々と荷物を外に出して行った。 しかし自分は見ていた。表情が随所にヤクザになっていることを。明らかに入居するときの一般人の感じではない。まぎれもないヤクザである。
武器が出てきた
数時間にも及ぶ作業も佳境を迎えて来た際に、押し入れから驚愕するような物が出てきた。「ドスとボーガン」が出てきたのである。ドスなんてものは映画でしか見たこともないのに生まれて初めて本物を見てしまった。これはさすがにヤバいなと思い、フッと暴力団の旦那の顔を見たら、鬼の形相とはこのことで完全に頭から角が生えていた。
死を覚悟した2つの出来事
荷物を完全に外に出した後のことだった。いよいよこの強制退去の作業も終わるかというときに、マンションロビーで突然旦那様に後ろから何かをググっと力強く突き付けられ、耳元で小さい声で
「あんた後ろ気をつけろよ」
と言われたのだった。恐怖が一周すると震えなんてものはない。ただただ「死ぬかもしれないな」と冷静に思っていた。抵抗する気は無いというかできなかった。その衝撃の一言を最後に外的な傷を負う事も無く別れた。
一連の流れをうちの社長にフィードバックをしたが「大丈夫だ心配ない」と言われたが、明らかに社長の顔は引きつっていた。その後、常に突然襲ってきて殺られるのではないかという恐怖心が隣り合わせで生活した。社長にも「自分殺されるんじゃないでしょうか?」と何度も相談した。こんなビクビクした毎日を過ごすなら、暴力団に一発殴られて終わっていた方がまだよかった。あのたった一言がその後の生活を脅かすことになろうとは思わなかった。
しかしその数日後、更に追い討ちをかけるような事件が起こった。朝に出勤をしたら
銃弾が窓ガラスを貫通し、自分のデスクに向けブチ込まれていた。
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