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北朝鮮核実験  世界脅かす暴挙許すな

 北朝鮮が4回目の核実験を強行し、「初の水爆実験に成功」と発表した。核実験や弾道ミサイルの開発・発射を禁じた国連安全保障理事会の決議に反し、日本や米国、韓国はすぐさま非難声明を出した。核廃絶の願いを無視し、世界の安全を脅かす暴挙だ。安保理はこれまでも決議に反する行動に対して制裁を強化しており、日本も独自制裁を検討するという。重大なルール違反を許さず、国際社会は一致して対処しなければならない。
 北朝鮮の核実験は2013年2月以来で、金正恩第1書記の体制下では2回目だ。朝鮮中央通信によると、金第1書記が昨年12月に命令を出した。国の自主権と民族の生存権を守る「自衛的措置」と主張し、「米国の敵視政策が根絶されない限り、核開発中断や核放棄はあり得ない」と挑発する。
 米国に無条件での対話再開を迫るねらいとみられるが、そのような強硬策がけっして奏功することはない。国際社会で、さらに孤立を深めるだけだということを、金第1書記は認識すべきだ。
 北朝鮮は今年5月、36年ぶりに朝鮮労働党大会を開く。重要行事に向け周辺国との関係改善を図るのではと期待されたが、逆方向に向かっているのは残念だ。
 韓国とは昨年8月、一時的に軍事的な緊張が高まるなど対話は進展していない。最大の支援国である中国との関係も冷え込んでいるとされ、日本とは拉致問題解決を先送りし足踏み状態が続く。
 こうした閉塞(へいそく)感を打開するために、対外的な緊張を高めて国内の結束を図る思惑もみえる。
 安保理は北朝鮮問題で緊急会合を開く。米国は新たな決議による追加制裁を求める一方、中国にも具体的な行動を迫る構えだ。
 中国は北朝鮮への厳しい対応に反対し、影響力を行使してきた経緯があるが、昨年の日中韓首脳会談で、北朝鮮に安保理決議の「忠実な実施」を求める共同声明に合意し、今回の核実験にも抗議する方針だ。中国を含めて包囲網をつくる必要がある。
 水爆開発成功には懐疑的な見方もあるが、核兵器の開発技術の進展や量産化が懸念される。弾道ミサイルに搭載可能な核兵器の小型化や、潜水艦発射弾道ミサイルの発射実験に成功したとの情報もあり、脅威の度合いが高まっている可能性がある。
 ただ、疑心暗鬼にさせるのは北朝鮮のねらいそのものだろう。日本は米国や韓国と緊密に連携し、情報を共有、分析して冷静に対処したい。

[京都新聞 2016年01月07日掲載]

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