「ねえ、母さんの友だちはみんな(契約書を)書いたらしいのよ」
クリスマス連休の先月26日。実家を訪ねた息子の家族と夕食をとっていたLさん(62)は、嫁が席を立った隙に、息子に「親孝行契約書を書くのはどうか」と切り出した。息子は少し戸惑った表情で「考えてみる」と言い、席を立った。Lさんは昨年11月、息子が結婚したとき、ソウル市江北地区に5億ウォン(約5000万円)のマンション1棟を買い与えた。Lさんが昨年末の忘年会でこの話をしたところ、友人たちは開口一番「親孝行契約書」を書いたのかと尋ねたという。Lさんは「親子の間で契約書まで書かなければいけないのかと思ったが、友人たちの話を聞いて、契約書を書く必要があると思った」と語った。
年末年始の家族の団らんの中で、子どもたちと「親孝行契約書」を交わす親たちが増えている。昨年12月末、大法院(日本の最高裁判所に相当)が、親孝行契約書に違反した息子に対し、両親が譲った財産を返還するよう命じた。この判決が、50-60代の親たちの間で忘年会や新年会の話題になり、すでに財産を子どもに譲った親たちも親孝行契約書を交わすケースも少なくない。
親孝行契約書とは、両親が子どもに家を買い与えたり、財産を譲ったりする代わりに、子どもは親の扶養の義務を果たすという約束を盛り込んだ覚書のことだ。民法上、子どもに無条件で贈与した財産は、特別な事情がない限り、返還させるのは容易ではない。このため、子どもに対し生半可に財産を贈与した後、虐待を受けたり、見捨てられたりすることを懸念した親たちが、身の安全を図るべく、親孝行契約書を交わすようになった。
資産管理に関する相談を担当する都市銀行の支店に、親孝行契約書の作成方法を問い合わせる人も大幅に増えているという。中間層の人たちが多く訪れる支店で、弁護士や資産管理の専門家などが親孝行契約書の作成について相談に乗る銀行もある。KEBハナ銀行専属のパン・ヒョソク弁護士は「昨年の初めごろまでは、親孝行契約書を書くよう勧めても『親子の間でどういう契約書を書けというのか』と言って、意に介さないお客さんが多かったが、最近は1カ月に3-4人が親孝行契約書の原案の作成を手伝ってほしいと依頼される」と語った。