【メディカルNOW】「腫瘍マーカー」「がんを早期発見できる」は誤解

2015年11月17日15時0分  スポーツ報知

 人間ドックや定期健診のオプションに「腫瘍マーカー検査」がある。がんを早期発見できるかもしれないからだ。がんの中には、そのがんに特有の物質をつくり出し、それが体液(主に血液)に溶け出すものがある。それを腫瘍マーカーといい、血液検査でマーカーの有無や濃度を調べるのが腫瘍マーカー検査だ。

 しかし、多くの腫瘍マーカーは健康な人の血液中に存在するので、これだけでがんを早期発見するのは難しい。本来、腫瘍マーカー検査は進行したがんの状態を把握し、治療効果を判定するのに行われるものだ。たとえば、進行したがんに対して化学療法や放射線療法を行う場合、その治療がどのくらい効果があるのかをマーカー値から判断する。また、手術でがんを切除するとマーカー値は下がるが、がんが再発するとマーカー値が上昇するので、術後の経過観察のために使われることがある。

 ただし、がんの中には早期でもマーカー値が上昇するものがある。▼前立腺がんのPSA▼卵巣がんのCA125▼肝臓がんのAFPなどだ。これらは高い確率でがんの早期発見に活用できる可能性がある。一方、CEAという腫瘍マーカーは、肺がん、乳がん、胃がん、すい臓がん、大腸がんなど多くのがんでマーカー値が上昇するので、CEAが陽性だったら、あちこち精密検査をしなければならなくなる。しかも人によっては、がんがないのにマーカー値が高く、陽性と判定されることがある。これを「偽陽性」という。逆に、がんがあるのにマーカー値が低くて陰性と判定される「偽陰性」もある。偽陽性の場合、各種検査で「がんの疑いなし」と診断されても、不安はいつまでも残るだろう。

 定期健診などのオプションで行う腫瘍マーカー検査は、1種類で2000~3000円、2種類、3種類と増えるにしたがって金額が上がり、6種類で1万円前後の追加料金がかかる。一部のがんを除いて、腫瘍マーカー検査でがんを早期発見するのは難しいのだから、あえて受けないほうがいいかもしれない。(医療ジャーナリスト・田中 皓)

  • 楽天SocialNewsに投稿!
メディカルNOW
今日のスポーツ報知(東京版)
V9時代の報知新聞を復刻