<今回のまとめ>
1.世界のマーケットが酷いことになっている
2.中国経済の鈍化に世界の注目が集まっている
3.日本のバブル崩壊とは、状況が違う点も多い
4.中国は為替水準を訂正することで製造業のリーダーであり続けられる
5.現在の米国の金利は、景気支援的だ
6.リーマンショック風の危機の伝染は起きない
7.アメリカ株は買い、日本株は売り
◎世界のマーケットが酷いことに
年初から世界のマーケットが酷い事になっています。先週金曜日までで、年初来日経平均は-7%、上海総合指数は-10%、ダウ工業株価平均指数は-6.2%でした。
その原因として、まず中国経済の鈍化に対する懸念が指摘できます。それに加えサウジアラビアとイランの外交断絶も嫌気されました。
ただサウジとイランの断交の後でも原油価格は下がり気味です。その事から投資家はこれを材料として重視していないと思われます。むしろ中国経済の減速への懸念の方が重要だと思います。
◎世界経済のけん引車としての中国
中国は世界第2位の経済大国であり、これまで世界経済の成長のエンジンの役割を果たしてきました。国際通貨基金(IMF)は去年の世界の実質GDP成長のうち、実に36%を中国が稼ぎ出したと試算しています。
中国の成長が鈍化すれば、世界が困るわけです。
◎1990年の日本のバブル崩壊を想起させる
その中国経済の鈍化は、一部投資家に1990年の日本のバブル崩壊を想起させています。
1989年の大納会の日、日経平均は3万8915.87円の最高値を付けました。しかし年が明けると日経平均は恐ろしい勢いで下げ始め、春先までには2万8000円付近まで下げたのです。これは株式市場だけの出来事ではなく、それ以降の日本経済は、二度と高度成長期の勢いを取り戻すことはありませんでした。
当時の日本は『ジャパン・アズ・ナンバーワン』という本が出版されるほど世界から持ち上げられていました。ニューヨークの五番街のブティックに日本人が溢れ、プラザ・ホテルやロックフェラー・センターなどの不動産を日本人が買い漁っていました。これは最近の中国人観光客による爆買いに相通じるものがあります。
爆買いは中国の消費者の成長を物語るという側面もありますが、それ以上に、歪んだ為替体制が、中国人をして国外に資金を持ち出す、あるいは国外で買い物をするインセンティブを与えてしまっている点を見逃すことはできません。
中国政府は人民元の国際化、為替レートをより柔軟に決める事などにより資本逃避を食い止めようとしています。思い返してみれば、1990年頃の日本も、金利の自由化、大口の外国為替取引の自由化などを通じて「円の国際化」に腐心していました。
これは短期的には人民元の先安を意味します。
もし人民元が切り下げられるのなら、他の新興国も対抗上、通貨を弱く誘導しなければいけません。
近年、新興国の借り手は、ドル建てによる債務をどんどん増やしてきました。自国通貨が安くなることは、それらのドル建て債務の返済負担が増えることを意味します。
人民元の切り下げ懸念が、新興国全般への不安を喚起しているのはこのような伝染経路によります。
◎相違点の方が多い
ただ、両者の類似点はそのくらいであり、その他の条件はかなり違います。
まず当時の日本株の株価収益率(PER)は、軽く40倍を超えていました。現在の上海市場のPERは14倍程度です。
つぎに中国政府は段階的にガス抜きを行っており、日本の二の轍を踏まない強い決意をもってソフトランディングの演出に努めています。
一例として、中国の信用成長は意図的に絞り込まれてきました。
もうひとつ大事な点は、いま世界を見回して、中国に代わる、圧倒的に有利な製造業の立地場所は未だ出現していないという点です。
1989年には天安門事件とベルリンの壁崩壊という、大事件が相次いで起こりました。それは実業界や金融界に身を置く人間の立場からすれば、全く新しい投資機会が、こつ然と姿を現したことを意味します。
生産拠点を、旧共産圏の賃金の安い場所に移すだけで、コスト競争力を増すことが出来る……これが日本など先進国の製造業の空洞化の一因になったのです。
日本は、円高による国内産業の競争力の低下という問題を常に過小評価し、変化に対して鈍感でした。だから後で取り返しのつかないことになってしまったのです。
ひるがえって現在、中国が人民元を安く導くことで中国の輸出競争力を適正な水準まで回復しようとしていることは、正しい処方だと思います。
中国政府はデモ行進やストライキを嫌います。しかし趨勢として、ストライキ件数は増加の一途を辿っています。ストライキは、工場での賃金の不払いや、オーナーの夜逃げなどにより引き起こされます。つまり製造業の景況と、密接に関係しているのです。
人民元安の演出は、そのようなプレッシャーから中国の産業界を解放するための必要措置です。
さて、日本のバブルが弾けた際は、中国という手強いライバルの出現によってさらに問題が複雑化したわけですが、今回、中国が置かれた立場はどうでしょうか?
なるほどベトナムやミャンマーに代表される、新しい製造業の立地拠点は、あることはあるけれど、中国の生産能力を全て置換するような国は存在しません。
つまり中国は為替水準の問題さえ是正すれば、引き続き世界の製造業のリーダーとして君臨し続けることが出来るのです。
◎一方、アメリカでは
次にアメリカの視点からすれば、1990年当時と現在では金利環境が全然違います。
当時のアメリカは、1987年のニューヨーク株式市場大暴落の後で金融緩和した後、低く放置し過ぎた金利を引き締めている最中でした。
下は米国債の利回りを短期(左側)から長期(右側)まで並べて、線でつなげたグラフで、このようなチャートをイールドカーブと呼びます。
上のイールドカーブでは、短期から長期まで全ての金利が8%付近で、ほぼ横一線に並んでいたことがわかります。つまり金利は、とても高かったのです。
またイールドカーブが上のグラフのように高値でフラット(横一線)になるということは、不況の前兆であると解釈されます。
実際、1990年から始まった米国の景気後退では、カリフォルニア州の落ち込みがひときわ酷かったです。それはベルリンの壁崩壊で冷戦が終結したことにより、軍需産業の需要が大幅に落ち込むことが見込まれていたことも一因です。企業でいえば、ロッキードなどでリストラが荒れ狂ったわけです
一方、現在の米国のイールドカーブは下のグラフのようになっています。
金利は、画面のいちばん下あたりに、へばりついているわけです。これは12月16日に連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを発表したとはいえ、まだまだ米国の金利は景気支援的な水準にあることを表しています。
1990年からこんにちまでのイールドカーブを全部重ねて曲面を作り、等高線で表現すると、下のグラフのようになります。
このグラフの読み方は、山が画面の奥に行くほど高いときは、一般に景気が強く、インフレ気味であると言えます。また画面の手前(短期金利)が白くめくれ上がっているときは、FRBがインフレを抑制するために慌てて短期金利を引き上げている様子をしめしています。
現在のように短期金利が、しっかり地についているときは、FRBは景気支援を行っていると解釈できます。
過去に大きな景気後退が起きたのは、上のグラフでは2007年(サブプライム・バブル崩壊)、2000年(ドットコム・バブル崩壊)、1990年(日本のバブル崩壊)です。そのいずれもが短期金利が高かったことに注目して下さい。
つまり今の米国の金利構造は、深刻な景気後退を引き起こすような構造には全然なっていないのです。
◎リーマンショック風の伝染は、起きない
最後に、「中国で何かあった時、2008年のリーマンショックのような世界的な危機の伝染が起きる」とする議論がありますが、私はその考えに反対です。
まずアメリカの投資家は中国株にはほとんど投資していません。だから中国株安で米国の投資家が損をして、その穴埋めに他の市場の株も売る……というような連鎖は起きません。
つぎに中国の銀行は海外進出が遅れています。だから中国の銀行が仮に経営危機に陥ったとしても、それで米国の借り手にクレジット・クランチ(=お金が借りにくくなること)が起こるというようなことはありません。
また米国の金融機関はリーマンショック以降、バランスシートを小さくし、守りの経営に徹しているので、金融市場が荒れ、ボラティリティが高まった局面でも、不意に大損に見舞われ、その結果として融資縮小などの信用の緊縮が起こる可能性は極めて低いです。
◎結論→米国株は心配ないが日本株には弱気
結論として、私は米国株については全く心配していません。
ただ日本株には弱気です。
なぜなら日本の株式市場のテーマとして中国人の爆買いに期待している部分があるからです。これは上でも論じた通り、歪んだ中国の為替政策がもたらした、束の間の現象なので、いずれ終焉します。
次に中国が為替を人民元安に導くと日本企業の相対的輸出競争力は減退します。
また円高局面では東京マーケットは売られやすいです。
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