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[FT]中国、市場沈静化には需要拡大が必要(社説)

2016/1/11 6:30
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Financial Times

 中国は株式、為替市場の混乱でまたしても世界金融に衝撃を与えている。中国の株価暴落は今週2度目の取引停止を招き、これに続き株価はアジアや欧州、米国でも軒並み下落した。オズボーン英財務相は広がる懸念に言及し、中国を世界の繁栄に「新たな脅威をもたらす危険なカクテル」の一部だと呼んだ。

急激な元安は中国からの資本流出を招きかねない(ロンドンの金融街にかかる中国旗)=ロイター

急激な元安は中国からの資本流出を招きかねない(ロンドンの金融街にかかる中国旗)=ロイター

 世界第2位の経済大国・中国からあらゆる方面に広がる懸念はある意味、昨夏の混乱の再来だ。投資家はその際、株式市場の下落と人民元の切り下げは、中国経済に潜む断層線が外に見えているよりもっと深くに達していることを露呈するものだと心配した。今日の状況もしかりだ。

 純資本の大量流出は、昨年第3四半期には過去最高の2210億ドルに達し、第4四半期も加速したとみられる。中国の企業や個人が先を競って資金を海外に移していることにより、国内の株価や人民元は下落している。

 一部の市場観測者は人民元の対米ドルレートが7日、4年来の安値となったことについて、中国政府が苦境にあえぐ輸出企業のために通貨切り下げ競争をもくろんだ結果だとみている。だが、中国人民銀行(中央銀行)が意図的に「通貨戦争」をあおるとは考えにくい。調査会社キャピタル・エコノミクスの試算によると、先月だけでも人民銀は下落する人民元を支えるために外貨準備約1130億ドルのドル売り介入を実施した。

■大混乱、策略ではなく惨状

 中国金融市場の大混乱の裏に本当に潜むのは策略ではなくむしろ惨状のようだ。中国経済のほぼすべてのけん引分野が勢いを失い、同経済の回復力に対する信頼は低下している。一方で中国政府の対応措置は複雑で矛盾しているように見える。

 過去30年間にわたり繁栄を主にけん引してきた固定資産投資の成長は、企業の利益がしぼむにつれて失速している。重工業の過剰設備と不動産セクターの高い借り入れ依存は慢性化しており、水面下では激しいデフレの逆流が起こっている。

 だが、中国政府が12月の共産党の主要会議の後に打ち出したこれら構造的な問題への対応策は、習近平国家主席が最近述べた最低6.5%の国内総生産(GDP)成長率という目標に向かって進むには不十分であるかもしれない。12月の「中央経済工作会議」の主な目標は過剰な生産能力を削減し、不動産市場の売れ残り在庫物件を徐々に減らすとともに、企業の営業経費を削減することだった。こうした改革は、現在精力的に進めている反汚職キャンペーンと並び、中国経済の健全性をより長く維持するには極めて重要だが、(経済の)拡大を引き起こす強烈なパンチにはならない。

 世界はまだ、危機から立ち直るには相変わらずもろい状態だ。とりわけ、新興国市場の成長が危機後のレベルに低迷していることがこの背景にはある。もし中国の需要が行き詰まれば、中南米やアフリカ、アジアなどの商品輸出国はさらなる苦境に陥りかねない。中国政府は先進国と新興国が集まる今年の20カ国・地域(G20)首脳会議を利用して同国が世界のリーダーとしての役割を十分にこなせることを示すべきだ。

 中国は経済政策の主眼を、構造改革上の課題から財政・金融政策を駆使した需要拡大に移すべきだ。そうすれば、国外に逃避する資本流出の勢いを弱め、人民元を安定させ、国内株式市場に資する環境を整えることさえできるかもしれない。これらの目標への最初のステップとして、中国は世界の投資家らにこうした政策について明確に伝えるべきだ。

(2016年1月8日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2016. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

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