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「ズブの素人」から”プロへの道”が開ける瞬間:『SWITCH インタビュー 達人達』若林正恭 × 羽田圭介

昨日、録画しておいたNHKの『SWITCH インタビュー 達人達』を観た。

ゲストはオードリー若林さんと芥川賞作家の羽田圭介さん。この番組はそれぞれによるインタビュー形式の番組となっていて、番組前半/後半でどちらかがメインのインタビュアーになって質問していくという番組。

番組前半は羽田圭介さんがインタビュアーとなって、若林さんに質問を投げかけていく。

若林さんの話はだいたい知ってた。インタビューの場所は新宿のキサラ。これも見慣れたものだ。実際に行ったことはないけど、テレビやDVDで何度も観ている風景。これまでテレビ・ラジオ・本で若林さんの昔の話はほとんど全て知ってしまっているので、目新しい情報はそんなになかった。ただ、彼も彼なりに今の状況に危機感のようなものを抱いているところがあり、「新しい刺激がないと、ちょっと『なにかやってみよう』という気持ちになる」と語っていた。最近はゴルフを始めたらしい。これはラジオで何回も話題になっていることだが、若林さんがゴルフの話をするとき、めちゃくちゃ楽しそうなので聴いているこちらが嬉しくなる。

番組の後半はインタビュアーが入れ替わり、場所も羽田圭介さんの母校・明大のキャンパスへ移動。

正直、羽田圭介さんのことはほとんど知らなかった。というか、いまでもあまり知らない。世間一般の人と同じであろう「又吉と一緒に芥川賞を受賞した人」という認識と、「なんかあの人面白いらしいよ」くらいのふわっとした情報しか手元にはなかった。

ただ、フタを開けてみるとめちゃくちゃ面白い人だということが分かった。本人も言っていたが、思ったことを正直にガンガン言っちゃう感じ。例えば、「『もし小説家になりたいです!』っていう若い子がいたら、絶対「やめとけ」って言いますね。笑」みたいな。やはり、紙の本の売れなさは尋常ではないらしい。それに、「いまは芥川賞効果でちょっと売り上げが伸びているけど、そんなものブーストが切れたらすぐまたに戻る」とおっしゃっていたりして、客観性をもって現状を直視している姿勢にすごく好感を持てた。

インタビューのなかででいちばん印象的だったのが、「これまで、最も嬉しかった瞬間」についての質問。羽田圭介さんは、文藝賞や芥川賞を受賞したり、その他さまざまな賞の候補に選ばれたりしているが、そのなかでも「一番最初に応募した『文藝賞』の最終選考に残った瞬間」がいちばんうれしかったのだそうだ。「えっ?芥川賞じゃないの?」と普通は思ってしまうが、はじめて応募した小説で最終選考まで残り、『「ズブの素人」からプロへの道が開けたように感じた』、と言っていた。

「プロへの道が開けたような感覚」。ここで自分の悪い癖で、Webの世界(特にライティング)に置き換えて考えてみたのだけど、Webは良くも悪くも「プロ」と「素人」の境界がシームレスなので、この感覚ってほとんどないような気がする。素人でもプロ以上にバズることは可能だし、というか素人だからこそバズれる環境にある(プロ以上に注目される)というのがいまのインターネットだ。

一方、文学の世界は「◯◯賞」みたいな分かりやすいカタチで、「プロ中のプロ」の人たちに認められていないと世間には広まっていかないという風潮があるっぽく、そこにハマれない人はつらいよなぁと。とはいえ、羽田圭介さんがその瞬間がいちばん嬉しかったということは、事実としてあるわけだし、そういう権威性のようなものの重要性もあるのかなぁと思ったり。

『メタモルフォシス』を読んでみよう。

メタモルフォシス (新潮文庫)

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