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【茨城】

被災刀「燭台切」に光 ファンの力で保存ケース作製へ

展示中の「燭台切光忠」(右)。左奥は、燭台切を擬人化したキャラクターのパネル=水戸市の徳川ミュージアムで

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 水戸市の博物館・徳川ミュージアムは、展示中の日本刀「燭台切光忠(しょくだいきりみつただ)」など被災刀のための保存ケースを、ファンからの寄付金でつくることを決めた。燭台切は、昨年一月に配信が始まったオンラインゲーム「刀剣乱舞」に登場し、知名度が急上昇。博物館の来場者数の増加に伴い、若い女性を中心に「燭台切に貢げる」と刀の保存を求めて寄付金を寄せるファンも出ていた。これまで美術的価値が低いとされた被災刀が、ファンの力によって、光を浴びている。 (山下葉月)

 燭台切は、全長六十七センチ、厚さ七ミリ。鎌倉時代の光忠作と伝えられる。博物館によると、戦国武将・伊達政宗が所有していた刀とされる。名前は政宗に反発した小姓を近くの燭台ごと切ったことに由来する。後に伊達家から水戸徳川家に譲られ、東京・向島にあった刀蔵に収蔵。一九二三年の関東大震災でほかの刀とともに蒸し焼きになり、黒焦げになった。美術館では、この時、被災刀となった約二百振を保管している。

 焼けたことで刀身がもろくなっていることから、博物館は展示を控えていたが、ゲームの配信以来、全国から問い合わせが殺到。昨年、期間限定で公開したところ、博物館に「被災刀のために寄付したい」と申し出る人が現れ始めた。

 ゲームに登場する燭台切は伊達政宗と同様に右目に眼帯をつけ、優しくほほ笑むイケメン。博物館によれば、ツイッターで寄付を呼び掛ける人も現れているという。

 人気が人気を呼び、博物館は「刀のため」と使用用途を明記してある寄付で、被災刀の調査や保存ケースの作製を決定。博物館によると、これまでの寄付金は少なくとも三百万円以上あるという。ケースは国産の木材を使用した江戸指し物で、大きさや作製個数は未定だが、燭台切を含む被災刀約二百振が収納できる。

 博物館で九日、ファンの集いが開かれ、全国から若い女性を中心に百二十人が参加した。徳川真木館長が登壇し、「先人が大事だと思って受け継いできたものは文化財」と話し、ケースとは別に燭台切を精巧に再現した「写し」を作製することを発表した。

 集いに参加した、キャラクターデザインを担当したゲーム製作会社「ニトロプラス」の小坂崇気社長は「ゲームによって刀剣に触れる機会が増えればいいと思ったが、ファンの力でケースができるのはすてきなこと」と喜んだ。日立市の会社員市村知果さん(21)は「昨夏から五回来場し、寄付を続けてきてよかった。ケースが完成する上、写しでよみがえるなんて」と声を弾ませていた。

 燭台切の展示は三月三十日まで。原則月曜休館だが、十一日は開館。問い合わせは、徳川ミュージアム=電029(241)2721=へ。

 <刀剣乱舞> 動画配信などを手掛けるDMM.com(東京都渋谷区)のゲーム部門「DMMゲームズ」とゲーム製作会社「ニトロプラス」(同墨田区)が製作し、昨年1月14日に配信開始したオンラインゲーム。日本各地の名刀の特徴を生かしたイケメン男子に擬人化したキャラクターを従えて敵と戦うストーリーで、ゲームで遊ぶための登録者数は昨年11月までに140万人を突破した。

 

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