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中邑真輔のWWE移籍について

      2016/01/10

この投稿は 54 件のプロレスファンのコメントあり。

主要大会
新日本:2/11(木)大阪府立体育館
新日本:2/14(日)新潟・アオーレ長岡

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中邑真輔のWWE移籍について

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当ブログにてお伝えした中邑真輔WWE移籍に関するニュースから早4日が経過した。未だ新日本プロレス及びWWE公式からは正式発表が無いが、それはもう仕方ないだろう。直近で言うとKENTAと華名のWWE契約の時も正式契約合意となるまで両者とも口をつぐんでいた。

中邑は1月末まで新日本プロレスの契約下にあるため、それ以降でないとWWEとの契約は行われない。よってそれまでは『WWEと契約』という情報は出ないと考えて良い。WWEとまだ契約合意に達していない以上、新日本残留の可能性もゼロでは無い。しかし中邑に近い関係者の話では本人の『世界へ』という意思が非常に固いため、新日本退団が覆るのは極めて難しいだろう。

問題は『中邑のラストマッチはいつか?』である。現在の予定では来週開幕のファンタスティカマニアに中邑の名前がある。さらにケニー・オメガが1月5日の後楽園ホールで中邑相手にまさかのピンフォール勝ちを収め、IWGPインターコンチネンタル王座への挑戦を表明しているため、次期シリーズ2.11大阪府立体育館大会か2.14新潟・アオーレ長岡大会がラストになる可能性もある。

実際中邑の新日本との契約は1月末で切れるが、それから2月のビッグマッチまでスポット契約で継続参戦というのは十分あり得る。しかし一方でWWE行きが明確なため、そこまで引っ張るかも微妙な状況である。

よって1.30後楽園ホール大会、2.11大阪大会、2.14新潟大会のどれかか。もしくは契約を残しつつ来週からのファンタスティカマニアも含めて今後一切試合は行わないという可能性もある。流石にラストマッチ無しに行くとは考えづらいが、そこは新日本の公式発表を待つしかない。ちなみにプリンス・デヴィットのケースでは、WWE行きの噂はずっとあったものの、2014年4月の両国大会での田口隆祐戦がラストマッチになるとはファンは知る由も無かった。所謂フェアウェル(さよなら)マッチ無しに退団するケースは多いのだ。

中邑退団は歴史的な出来事

過去の日本プロレス界を振り返っても、今回の中邑のWWE移籍のようなケースは無い。今現在の業界最大手の団体である新日本プロレスからの海外移籍は今回が初のケースだ。

2000年に新日本プロレスのトップレスラーだった武藤敬司がWCWに移籍したが、あれは新日本とWCWが業務提携関係にあったため『まぁ良いタイミングで戻って来るだろう』と当時そう見ていたのを思い出す。実際武藤は新日本に戻ってきた。

今回はそのような提携関係に無い海外の団体への移籍。これは『敵対的引き抜き』とここではあえて言いたい。

もちろん中邑自身は『世界最大の団体に行く』という夢のための退団であり、WWEの敵対的引き抜きに乗っかったという意思は無いはず。

しかしそういう個人レベルの話でなく、会社対会社という強豪するビジネスの話としてこれは『敵対的引き抜き』と定義付けをしたい。

私は中邑が悪いと言うつもりは一切無い。なぜならこれはそういう個々人のレイヤーの問題では無いからだ。もし仮に中邑が新日本に残留しても、今後日本でトップスターになった選手がいつWWEに行ってもおかしくはない。その最初が中邑だったというだけの話だ。

一昔前ならば、海外のファンで日本で活躍するプロレスラーを知っているものは極わずかだった。90年代は米国・欧州を中心に日本のプロレスのテープ(VHS)をマニア間で交換し合っていた。その理由からノアの三沢光晴や小橋建太が好きな海外ファンは多い。しかしそれはかなりコアなマニア層である。

それが21世紀の今、インターネットで簡単に日本でもメキシコでも米国でも世界中の団体の試合を見る事が出来る。インターネットによるフラット化した社会が、プロレス界にも影響を及ぼしていると言える。

今回の中邑のWWE移籍報道についてのWWE公式サイトによる言及は、ツイッター・facebook等のSNSで世界レベルの大きな反響を呼んだ。それは中邑という日本のレスラーを、昔よりもかなり多くの人達が知っていたという証でもある。

そういった意味で鎖国時代から世界的なフラット市場となった現代において、こういった事が起こるのは時間の問題だったと言えるもしれない。

かつて新日本プロレス木谷高明オーナーが『日本語という言語がかろうじてバリアーになっている』と話していた事があった。その通りWWEというエンターテイメント色が強い団体において言語は非常に重要で、それが無いとWWEでトップは取れないとも言える。

しかし本来プロレスとはそれ自体がユニバーサル・ランゲージ(国際言語)であり、本質的には言葉は必要無いはずだ。

事実現在WWEのもう一つのブランド『NXT』は、本体のエンタメ色とは一線を化した『試合重視』で人気を博している。それでももちろん英語は非常に重要だが、正直英語なんて現地行ってしっかり勉強すればすぐマスター出来る。WWEパフォーマンスセンターでは英語のクラスがあり、そこでKENTA(ヒデオ・イタミ)と華名(アスカ)、そしてCMLLから来たラ・ソンブラらが英語を日々学んでいる。

よって現在の21世紀のフラット化したこの環境を強く意識する必要があり、今回の中邑のWWE移籍はそういった意味で歴史的な出来事だと言って良いだろう。

WWEという会社

私は上で今回のケースは『敵対的引き抜き』と書いた。「いや、そこまでじゃないでしょ」という声もあるかもしれないが、この表現が本質を表していると考えるためあえてこう表現したい。それはWWEという会社をしっかり理解する必要があると考えるからだ。

WWEという会社は、これまで団体の歴史を振り返ってみても選手の引き抜きというのは数えられないくらい行ってきた。

今やWWEは年商600億円カンパニーの世界的独占企業であるが、もちろん初めからそうであったわけではない。私がプロレスを見始めた1990年代後半はWWEがまさに倒産寸前の危機に陥っていたのだ。

1980年代まで米国のプロレス界は「NWA(全米レスリング同盟)」というプロモーター(興行主)の連盟で成り立っていた。

ボクシングのWBAやWBCのようにプロレスの統一協会が唯一の世界王者を認定し、その王者が世界中の加盟団体を王座防衛して回るというのが当時のプロレス界の状況であった。

それを完全に破壊したのが現WWE会長のビンス・マクマホンだ。

ビンスが社長となったWWE(当時WWF)はNWAを脱退し、連盟の中の暗黙の了解であった各州への不可侵協定を破棄し、全米進出を行った。その過程でビンスは他の加盟国のスター選手を片っ端から引き抜いていった。それによりNWAは弱体化し、崩壊。今はNWAという権利を買い取ったブルース・サープ社長の一団体と化している。

そうして引き抜いたスターレスラーを抱え天下統一を果たしたビンスWWEだったが、そこで大きな敵が現れた。

それが当時世界のメディア王と言われたCNN(ニュース専門チャンネル)創設者”テット・ターナー”のWCWだ。

テッド・ターナーはメディア王という異名の通り、ビンスとはこれまた桁違いの大金持ちで、その圧倒的な資金力で、WWEはスターレスラーをことごとく引き抜かれていった。

WCWはWWEに対して敵対的引き抜きを続け、なんと現在も放送されているWWEの看板番組「マンデーナイト・ロー(現在のRAW)」と同じ時間に「WCWマンデー・ナイトロ」という番組をぶつけてきた。番組名も似ていれば、リング上にはちょっと前までWWEにいたスター選手がたくさんいる。まさにテレビ戦争という言葉通りの企業間の争いだった。このWCWの敵対的引き抜き攻撃によって、WWEは一時倒産寸前まで追い込まれてしまったのだ。

この米国2団体の戦いは後に『月曜テレビ戦争』と呼ばれ、過去に当ブログでも解説記事を書いたので参照して欲しい

上記の通り、WWEはそういう会社である。それは過去に壮絶なビジネス戦争を経験し、それを生き抜いてきた会社なのだ。

『近年はそうでもないのでは?』と思うかもしれないが、全くそんな事は無い。ざっと思いつくだけでもかなりある。

KENTA ノア⇒WWE
華名 日本女子フリー⇒WWE
デル・リオ AAA⇒WWE
ラ・ソンブラ CMLL⇒WWE
プリンス・デヴィット 新日本⇒WWE
ネヴィル ドラゲー⇒WWE
ウーハー・ネイション ドラゲー⇒WWE
ジャイアント・バーナード 新日本⇒WWE
ケビン・オーエンズ ROH⇒WWE
ダニエル・ブライアン ROH⇒WWE
セザーロ ROH⇒WWE
セス・ロリンズ ROH⇒WWE

上のネヴィルやウーハーなどはドラゲーだけではないので、引き抜きというのは言い過ぎだが。

私はWWEについても完全悪という印象は無い。それはWWEが企業として当たり前のスター選手獲得を行っているに過ぎないからだ。これは野球だろうがサッカーだろうが、どのスポーツビジネスでも共通の事だ。

WWEも企業である以上収益を上げる必要があるし、WWEは株式上場企業であるので成長し続ける義務があるとも言える。

他団体で強豪団体のスターを獲得出来る機会があるのにそれをしないのは、完全に企業利益という点ではそれに反している。よって極端な話、WWEの株主にその機会損失を追及されてもおかしくないわけだ。

これはスポーツビジネスに限らず、どの業界でもそうだ。ビジネスである以上、食うか食われるかであり、勝つか負けるかが最重要になってくる。

『WIN-WINの関係』、『アライアンス』という会社同士の協力関係や、ある意味『談合』のようなケースも多いビジネスの中であれど、『ライバルを弱体化させる』『敵対的買収を仕掛ける』というのは普遍的に存在する事だろう。

ましては前述の通り、どの業界も海外企業との戦いを強いられている状況。プロレス業界も例に漏れずといったところだ。

本記事の最後に

上記の通り、『現在の環境』と『ライバル』というのを新日本プロレスは強く認識する必要があるだろう。

『複数年契約にする』『契約事項を見直す』といった契約面だけでなく、『ギャラの問題』や、もっと深刻な『選手の夢』という問題もある。

契約やお金面でどこまで頑張っても、人の意思を変える事は出来ない。

これは新日本は今後、団体の最重要課題として取り組む必要があるだろう。

繰り返しになるが、これは選手個々のレベルの問題ではない。ビジネスの問題として見なければ、真の解決にはならないと私は考える。

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