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香港の書店経営者失踪、広がる波紋 デモ実施・海外から懸念も

2016/1/10 19:16
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銅鑼湾書店関係者の釈放を求める香港民主派のデモに参加した市民は「一国二制度を守れ」と訴えた(10日)

銅鑼湾書店関係者の釈放を求める香港民主派のデモに参加した市民は「一国二制度を守れ」と訴えた(10日)

 【香港=粟井康夫】香港で「銅鑼湾書店」の関係者5人が相次ぎ失踪した事件が波紋を広げている。香港の民主派団体は10日、「一国二制度の根幹を揺るがしている」として、中国政府に真相究明と関係者の早期解放を求める6000人規模のデモを実施した。欧州連合(EU)が事態を憂慮する声明を発表するなど、海外からも懸念する声が出ている。

 同書店は習近平国家主席への批判や中国共産党内の権力闘争をテーマとする書籍など、中国本土での販売や持ち込みが禁じられている「禁書」を取り扱っていた。

 同書店の関係者4人は昨年10月以降、香港に隣接する広東省深圳市やタイを訪問中に次々と行方不明になっており、昨年12月30日には同書店の大株主の李波氏(65)が倉庫から突然姿を消した。

 李氏はその後、深圳市の電話番号から妻に連絡し「調査に協力している。しばらく戻れない」と語った。香港警察によると、出入境管理局に香港を出た記録が残っておらず「中国の公安当局によって本土に連れ去られた」との観測が強まった。

銅鑼湾書店は中国政治の内幕本を扱っていた

銅鑼湾書店は中国政治の内幕本を扱っていた

 その後、李氏は「独自の方法で中国本土に入った。関係方面を調査している」とする手紙を関係者に送り、李氏の妻も警察への捜索願を取り下げた。李氏の身に危険が及ぶのを避けるためとみられるが、香港警察は中国側に問い合わせをするなど捜査を続けている。

 香港に外交・防衛を除く幅広い自治を認める「一国二制度」の下、中国の公安当局には香港で法律を執行する権限はない。仮に中国当局が李氏を連行したのが事実なら、憲法にあたる香港基本法の明確な違反となる。

 李氏は英国籍、他の株主1人はスウェーデン国籍を持っている。中国政府は「李氏は中国国民だ」(王毅外相)として他国の干渉は排除する姿勢を示している。香港では一部書店が「禁書」の取り扱いをやめるなど、言論・出版の自由を萎縮させかねないとの懸念も強まっている。

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