日韓最終合意の裏で米政府が進めてきたこと

米国は日韓の和解へ向け努力を重ねてきた

岸田文雄外相(左)と韓国・尹炳世(ユン・ビョンセ)外相(右)は会談後、共同記者会見を開いた(写真: Lee Jae-Won/AFLO)

昨年12月28日に旧日本軍の従軍慰安婦問題で、「最終的かつ不可逆的な解決」という画期的な合意に達した日本と韓国。この歴史的な合意に至るまで、両国政府は少なくとも4年間を断続的な交渉に費やしたが、その間幾度となく交渉は決裂し、行き詰まった。

今回、それを乗り越えて合意できたのは、日本の安倍晋三首相と韓国の朴槿恵大統領いう2人の指導者が最終的に歩み寄ったからにほかならない。米国のある政府高官は「この合意は双方にとって非常に重要であり、2人とも辛抱強く交渉を続けた」と明かす。

米国の絶え間ない「圧力」

ダニエル・スナイダー/スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター (APARC)研究副主幹。『クリスチャンサイエンス モニター』紙の東京支局長・モスクワ支局長、『サンノゼ・マーキュリー・ニュース』紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、世界に多くの情報ソースを持っている

もちろん、合意に至った2人の指導者は称賛されるべきだが、この合意は米オバマ政権の絶え間ない「圧力」なしには成し遂げられなかっただろう。実際、オバマ大統領は公式な方法も用いながら、日韓政府に絶えず圧力をかけてきたからだ。

米政府内では米国が非難を受けることを危惧し、仲裁役を担うことに対する抵抗が強かった。しかし、政府関係者たちは、たとえば合意書の特定の文言をめぐる日韓の議論など非常に細かい点にまで目を向け、あくまで踏み込みすぎない姿勢を維持しながらも、慰安婦問題解決に向けての合意は日韓双方の歩み寄りなしにはあり得ない、という米国側の考えを両国に伝え続けていた。

米国がこうした動きを続けていた背景には、特にここ数年の日韓関係の悪化が米国の戦略的利益の逸失につながるとの懸念があったからだ。米国にとってアジアでの最も重要な同盟国2国の不仲は、常に不安定な北朝鮮や、支配力拡大に躍起になっている中国を抱えるアジアにおける防衛力の弱体化につながってきた。

今回の合意に至る交渉のきっかけは、アジアの隣国との関係改善を図ろうとしていた民主党政権時にさかのぼる。韓国併合100周年にあたる2010年、当時の菅直人首相は植民地支配に対する謝罪を発表することによって、韓国との関係改善に向けて前進した。

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