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【千葉】

<千葉から語り継ぐ戦争>行政記録にない行徳空襲 検見川高生が後世に

行政文書に記録のない空襲について映像にまとめた放送委員会の生徒=千葉市の検見川高校で

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 戦時中に市川市南部の行徳地区であった行政文書に記録のない米軍空襲を伝えたいと、検見川高校(千葉市美浜区)放送委員会がビデオ「今だからこそ」を制作した。犠牲者が約三十人と伝わる空襲を、高校生が映像で残して後世につなぐ試み。監督を務めた二年の古家(ふるいえ)渉さん(16)は「記録にない空襲があることに驚いた。高校生が伝えれば、同世代が見てくれる」と、記憶と記録のリレーに一役買いたいと話す。 (服部利崇)

 市川市行徳図書館が行った体験談を聴くイベントを報じた昨年八月の新聞記事がヒントになった。映像は、同年十一月の県高等学校文化連盟放送コンテストのビデオメッセージ部門で最高位の優秀賞を獲得した。今月三十一日に都内で開かれる関東大会に出品される。

 市川市史によると、行徳への空襲は四四年十二月十五日と翌年一月二十七日の二回。しかし、昨年八月七日のイベントでの証言などから、四五年七月十三日にも空襲があったことが判明した。

 放送委員会の一、二年生六人が当日の体験者四人に取材。泥まみれの遺体が続々と運ばれてきた様子などを語ってもらった。「記録がないと、百年たった時、語れる人がいなくなる」との体験者の懸念も紹介。映像の最後で「伝えないと消える歴史もある。戦後七十年の今だからこそ、伝えていきたい」と生徒が締めくくった。

 ナレーション担当の二年、皆川直道さん(17)は「実体験を伝えられる人が減ってきているので映像に残したかった」と話す。悲惨な体験のため体験者が七十年間語ってこなかった秘話に、生徒は謙虚に耳を傾けた。インタビューした二年、竹末千夏さん(17)は「空襲や戦争を取材、記録に残すことの責任も感じた」という。

 重く貴重な証言の数々に編集も難航した。編集と撮影を担当した二年、成田知弥さん(16)は「テープを書き起こすと、残したい証言がたくさんあった。まとめるのはたいへんだった」と振り返る。

 顧問の石井淳教諭(59)は「今しか取り組めないことに生徒に挑戦してほしかったので、戦争体験者と会える機会は貴重だった」と話す。記録のない七月の空襲で友達を失いながら、人前では話さなかった市川市本行徳、田中愛子さん(77)は「若い人たちが関心を持ち、映像に残してくれたのは何よりありがたい。亡くなった人の供養にもなる」と語る。

 映像は、寄贈を受けた市川市行徳図書館で貸し出している。問い合わせは、同図書館=電047(358)9011=へ。

 

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