数学を勉強していると必ず耳にする論争。
「数学は暗記科目」vs「数学は理解科目」
難関大学合格者にも、「数学は暗記科目だ」という人は多いです。かく言うぼくも、大学受験の数学は暗記科目だと思います。
ただ、この言葉には罠が潜んでいるのです。
実は数学には、
①「大学受験の数学は暗記科目」なのは正しい
②でも、「大学受験の数学は暗記科目」であることを信じて勉強すると落ちる
という矛盾が存在します。
今回は、そんな話をしていこうかと。
目次
「数学は暗記だ」<「数学は理解だ」<「数学は暗記だ」
あるところに、
「数学は暗記だ」というAさん
「数学は理解だ」というBさん
そして「数学は暗記だ」というCさんがいました。3人が全国模試を受けたところ、Aさんは40点・Bさんは70点・Cさんは90点を取りました。
これが、「数学は暗記だ」の真実です。
①数学は暗記だ→40点
「数学は暗記だ」を信じている人の大半は、Aさんのような人です。
Aさんは、公式を丸暗記し、解法を丸暗記し、答えも丸暗記します。
Aさんのような人は、出題内容を少し変えられただけで「暗記していない問題」になるので、中々テストの問題すべてが「覚えている問題」になることはないのです。
Aさんは来る日も来る日も新たな問題を暗記しようと努力しますが、毎回出題のされ方が変わるので、一向にテストの成績は上がりません。
②数学は理解だ→70点
「数学は暗記だ」なんて馬鹿馬鹿しい、とBさんのような人は言います。
Bさんは、公式の意味を理解しているので、公式を忘れても1から算出することができます。
また、問題の構造を理解しているので、ちょっとやそっと出題方法を変えられたところで「あ、これは点と線の距離の公式と三角関数を使えばいいんだな」と自分で判断することができます。
Bさんのような人は、「知っている問題に似た問題」なら解くことができるので、70点くらいは取れるようになってきます。
しかし、1つ1つじっくり考えて解いているため、時間が足りなくて最後の問題には手が付けられなくなりますし、毎回見たことがない問題がいくつも出てくるせいで、90点以上をとることはできません。
「こんな応用問題どうやったら解けるようになるんだよ!」とモヤモヤを抱えながらも、とりあえず基礎問題は確実に解けるように、Bさんは勉強を続けます。
③数学は暗記だ→90点
難関大学合格レベルにいるCさんは、「数学は暗記だ」と言います。
Cさんは公式の意味も解法も完璧に理解していますが、思考時間を短縮するために暗記をしています。
Cさんは解法を暗記している問題はパパッと解く事ができますし、少しひねられた所ですぐ「ああ、あの解法を使えばいいのか」と判断できます。
また、過去問を暗記しているので見たことがない問題も少ししかありません。
余った時間を使って、最後の「見たことがない問題」をじっくりと考え、少しでも点を伸ばしていきます。
ただ、暗記にも限界はあるので、ずば抜けた数学力を持っていないCさんは100点を取ることは少ないです。
それでも、Cさんは模試で100点取れなかったことをそこまで悔しがりません。
なぜなら、模試のおかげで「今の自分よりさらに10点伸ばすために暗記・理解しておくべき問題」が見つかったからです。
Cさんは、「次これと同じ問題が出たら絶対に満点が取れる!」と自信をつけます。
実りのあるテストを受けられたことに満足しつつ、次回は95点取れるようにCさんは次の問題の暗記に取り組みます。
「数学は理解だ」を信じて勉強すると、「数学は暗記だ」の意味が理解できる
世の中の「数学は暗記だ」と言っている方の経歴を見てみてください。
「あまり勉強が出来ない人」と「もの凄く勉強が出来る人」にバッサリと二分され、その中間がほとんど居ないことに気が付くはずです。
「あまり勉強が出来ない人」の「数学は暗記だ」を信じてはいけませんし、
「もの凄く勉強が出来る人」の「数学は暗記だ」も鵜呑みにしてはいけません。
そもそも「もの凄く勉強が出来る人」の「数学は暗記だ」は、数学が苦手な人に向けられているのではなく、数学はそれなりに得意だけど難関大学合格にはまだ一歩届かない人に向けられているのです。
もし、あなたが「数学は暗記」か「数学は理解」かで悩んでいるなら、おそらく「数学は理解」を信じて勉強した方が良いでしょう。
そうして理解が進んでいくうちに、「数学は暗記科目だ」の本当の意味も理解できるようになるはずです。
「数学は暗記科目だ」を信じるのではなく、「数学は暗記科目だ」と理解できるようになれば、難関大学合格はもうすぐです。
まとめ
①「数学は暗記だ」は正しいが、数学が苦手な人がそれを信じるとまず落ちる
②まずは「数学は理解だ」を信じて勉強していこう
③ある程度成績が伸びたが「どうしても時間が足りない・知らない問題が多い」という壁を感じ始めたら、暗記にシフトすることで成績は伸びる
人は、直前に痛感したことを世の中に発信したくなるものです。
そのため、難関大学の合格ラインにいる人ほど「数学は暗記科目」と理解した途端に成績が伸びたという経験から「数学は暗記だ!」と主張してしまいがち。
でも、それは「数学の基礎をしっかりと理解する」という当たり前を前提にした上での話であり、基礎がまた出来ていない人がそれを鵜呑みにして暗記に走ると絶対に受かりません。
数学に限らず、世の中の論争の中には、こういった「当たり前のことを前提にした主張」と「当たり前のことを抜きにした主張」がぶつかって、一見真逆なようで実はどちらも同じことを言っているケースが結構多いように感じますね。