ドイツ西部ケルンで大みそかに若者の集団が性的暴行や窃盗に及んだ事件を受けて5日、女性を中心に数百人がケルンで抗議デモを行った。独国民に衝撃を与えたこの事件についてメルケル独首相は「胸が悪くなるような襲撃」と怒りを表明し、犯人を捕らえるためあらゆる手を尽くす必要があると強調した。
目撃者や警察は、事件を起こした若者たちはアラブ系か北アフリカ出身のように見えたと証言している。
ドイツでは、昨年に記録的な数で流入した移民や難民の受け入れをめぐり激しい議論が交わされている。移民の多くはシリア内戦を逃れてきた人々だ。
ケルンのヘンリエッテ・レーカー市長は、犯人について早急な結論に飛びつくべきでないと訴えた。現時点では逮捕者は出ていない。
「かつてない次元」
ケルン中央駅で12月31日夜に起きた事件をめぐっては、女性たちから警察に少なくとも90件に及ぶ被害届が出されている。
少なくとも女性1人が強姦被害に遭ったとされるほか、ボランティアの女性警官を含む多くの女性が体を触られたと訴えている。
ドイツ北部のハンブルクやシュトゥットガルトでも同様の事件が起きているが、ケルンよりも被害は小規模だった。
5日夜の抗議デモでは女性を中心に最大300人が参加した。参加者の中には「メルケルさん、どこにいるの? なんて言うつもり! 心配です!」と書かれた紙を掲げる人もいた。
中央駅近くでは5日、警察が男性たちを呼び止め、職務質問をする様子が見られた。
しかし、ケルン警察のウルフガング・アルベルス署長は大みそかの事件に関連した逮捕者はまだいないと述べた。同署長は、「容疑者はまだ特定されていないので犯人はまだ分からない」とし、「ほとんどがアラブか北アフリカ地域出身の18歳から35歳の若い男性に見えたと、現場にいた警官が言っている。分かっているのはこれだけだ」と語った。
同署長は警察の対応への批判に反論し、「かつてない次元の犯罪」だと述べた。
ハイコ・マース独法相は、暴行事件を反難民感情をかき立てる道具にすべきでない、と述べた。同相は「刑事法では、犯罪を証明することが重要であり、また、すべての人が法の下で平等だ」とし、「どこの出身かは問題ではない。何をしたかが重要で、我々はそれを証明できる」と語った。
メルケル首相は5日、レーカー市長と電話で事件への対応について協議した。メルケル氏は、「出身地や身元に関わりなく、できるだけ早く犯人全員を見つけ、処罰するため」あらゆる手を尽くさなくてはならない、と述べた。
メルケル首相は警察関係者と話した後、「北アフリカ出身に見える集団を難民に関連づけることは全く適切でない」と述べた。
事件当時に現場にいた男性のひとりは、駅の外でパートナーと15歳の娘が集団に囲まれたものの、助け出せなかったと話した。男性は「連中は娘や私のパートナーの胸をつかみ、足の間をまさぐった」と語った。
警察に提出された被害届の大半は強盗だった。
ケルンを旅行中だった英国人女性はBBCの取材に対し、ドイツ語や英語を話さない集団から花火を投げつけられたと語った。女性は、「私たちを抱きしめてキスしようとした。男のひとりは友達のバッグを盗んだ」と話した。
女性はさらに「別の男が自分の『個人』タクシーに乗せようとした。これまでも、命の危険さえ覚える怖い経験は何度かあるが、こんなのは初めてだ」と語った。
(英語記事 Cologne sex attacks: Women protest against assaults by gangs)
(c) BBC News
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