2016-01-09 山本太郎の北朝鮮核実験非難決議棄権を非難がましく報じる産経に怒る
バナジー&デュフロ『貧乏人の経済学』を読んだ
今年最初に読んだ経済学関係の一般書。昨年の大晦日から10日間かけて読んだ。図書館は年末年始が休みなので、年末に借りれば普段より長く借りることができる。だから、毎年年末年始には少しばかり気合いを入れて本を読むことにしている。
- 作者: アビジット・V・バナジー,エスター・デュフロ,山形浩生
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2012/04/03
- メディア: 単行本
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原著は2011年に、日本語版(山形浩生訳)は2012年にそれぞれ出版された。
感想を一言で言えば「神は細部に宿る」ってとこかな、と思って「貧乏人の経済学 神は細部に宿る」を検索語にしてGoogle検索をかけたら、同じ感想を持たれた東大の学生さん(2013年当時駒場に在籍)がおられたので、そのブログ記事を拝借して下記に引用する。
かみさま日記: [本]貧乏人の経済学(2013年9月25日)より
[本]貧乏人の経済学
貧困について科学的に分析した本。非常に興味深い内容だった。
エッセンスを一言で言うと、
「神は細部に宿る」
ということだろう。
貧困には
1.大権力を行使して大規模な資本を透過して「貧困の罠」を抜けさせる
大規模な援助プロジェクトが賄賂に消えることもあれば、
これは(外部環境もあるが)制度の細部が適切に設計されているか否かが重要だと述べている。
独裁政権下でわずかに与えられた自治制度でも適切な設計ならば人々は貧困から抜けだすし、
他にも、
「貧乏人は頭が悪いから目の前の快楽のために投資をしない」
のではなく、
「貧乏人には先進国では制度が保証していることも自分で判断する必要があり、
適切な判断が難しい」
など、貧乏人に関する一般に漠然と信じられている前提を崩していく。
こうした検証はランダム化比較試験によって科学的に行われており、
経済学にありがちな宗教戦争(「自由市場で貧困が解決しないのは自由が足りないからだ」)から
抜け出すことができる。
先進国の貧困についても通じる考えがあり、国際開発に関わらない分野の人が読んでも
得るものがあるだろう。
この本の存在は、3年ほど前に飲み会をやった時に帰りの電車の中で友人がちらっと見せてくれたのをきっかけに知った。
また、一昨年暮れから昨年の年初にかけてベストセラーになったトマ・ピケティの『21世紀の資本』を読んだ時、この本からの引用があるのに気づいた。この本の末尾のにも、他の多くの人たちとともに、「トマス・ピケッティ」(トマ・ピケティの英語読み)とエマニュエル・サエズ(ピケティの共同研究者)に、「彼らはそれぞれ独自の方法で、本人たちが認識しているより本書の思考形勢に大きな貢献をしてくれています」との謝辞が書かれている(337頁)。両書の日本語版は訳者(山形浩生氏)も出版社(みすず書房)も同じだ。
確かに、実証的な手法という点で両書は共通している。私自身も、事実に基づいた検証をそっちのけにしたイデオロギー的な議論よりも、本書の著書たち(やピケティ)のような実証的な研究手法の方によほど魅力を感じる。
一読して損はない。