1月9日
ブリッジ・オブ・スパイ

新年1発目からスピルバーグってのも非常に違和感があります。普通、夏休みか年末かってお方ですもんね。
しかも彼の作品を劇場で見るのがずいぶんご無沙汰ときたもんで。
ここんとこ、アカデミー賞狙い(てかこれもだな。)ばかりのヒューマンものが続いてまだまだ映画のエの字もわからなかった私は当然ながらスルーしてたんですねぇ。だから、タンタンの冒険以来の巨匠の新作拝見でございます。
てなわけで見てまいりました。
あらすじ
アメリカとソ連が一触即発の冷戦状態にあった1950~1960年代。
ジェームズ・ドノヴァン(トム・ハンクス)は、保険の分野で実直にキャリアを積み重ねてきた弁護士だった。
ソ連のスパイの弁護を引き受けたのをきっかけに、世界の平和を左右する重大な任務を委ねられる。それは、自分が弁護したソ連のスパイと、ソ連に捕えられたアメリカ人スパイの交換を成し遂げることだった。
良き夫、良き父、良き市民として平凡な人生を歩んできた男が、米ソの戦争を食い止めるために全力で不可能に立ち向かっていく!《HPより抜粋》
映画『ブリッジ・オブ・スパイ』予告A(120秒)
監督・キャスト
監督はご存知スティーブン・スピルバーグ。

おそらく誰もがこの監督の作品を見た事があり、好きな作品の一つとして心に残っている人も多いくらい我々に多大な影響を与えた人物の一人ですね。もう、このおっちゃん超える人出てこないっしょ。
ジョーズや未知との遭遇などの大ヒット以降、インディ・ジョーンズ、そして、E.T.といった今尚語り継がれるSF、アクションといった大作を連発した80年代、
ジュラシック・パークからシンドラーのリスト、プライベート・ライアンといった娯楽からシリアスな作品とジャンルのふり幅をきかせた90年代、
そして、宇宙戦争、キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャンなどの大物タッグとの共作やインデ・ジョーンズのシリーズ復活などが目立った00年代を経て、
10年代は今までのブロックバスター作品からは遠のき、戦火の馬やリンカーンといった人間を色濃く描いた作品が並び、我々が抱いていたイメージのスピルバーグとは違うジャンルの作品作りになっていると思います。今作もまた同じ路線での作品になっているのだと思います。
これよく映画をあまり見ない人が間違えるんだけど、バック・トゥ・ザ・フューチャーやトランスフォーマー、ジュラシック・パークの3とワールドは彼が監督じゃないですよっ!!
製作総指揮です!!簡単に言えばお客さん入れるために名前貸してるようなもんです。細かいこととか手や口を出してるとは思いますが。
昔は私もスピルバーグが監督だと思ってましたwww恥ずかしい・・・。
そして、今後も何本か製作が控えているスピルバーグですが、個人的に一番楽しみなのは、2017年公開予定の「ゲーム・ウォーズ」。
人気SF小説の実写化のようで、コンピューターの仮装世界が舞台で、主人公がゲーム界のカリスマだった大富豪が残した資産を探しにその世界へ飛び込むというストーリーだそうで、その仮装世界の中では80年代ビデオゲームや多くのポップカルチャーが満載になってるんだとか。
しかも、何がいいって日本のコンテンツも盛りだくさん。ガンダム、エヴァ、ウルトラマン、マクロスなどなど日本の有名なものだけでも原作ではこれだけ挙げられるので欧米のものも挙げたらすごい膨大な量のコンテンツがきっとあふれるんでしょうね。
著作権的なものもあるかもしれないから全部原作通りにはならないと思いますがサブカル好き、ゲーマーなどの人たちから派生して盛り上がりそうですね。
オタクが主人公でゲーマーだと去年のピクセルを思い出しますが、アンナ作品にならないことを祈りますww
で、これがスピルバーグがブレイクするきっかけになった作品。
山道でチンタラ走るトレーラーを追い抜いた運転手が執拗に追いかけられる、というシンプルなものなのに、その恐怖感たるや!
主人公のセールスマンが徐々に追い込まれていくサスペンス感と犯人がどこのどいつかわからず、ただただデケェもんに襲われそうになるという怪獣ものと同じ感覚で見ることが出来る良作です。
低予算ながらカメラワークや演出、効果音など彼ならではのこだわりが随所に表れていると思います。やはり天才だったんすねー。
この作品が業界内で好評だったことがきっかけでスピルバーグの名が知れ渡ったんだとか。
そして、主演は監督と4度目のタッグになるトム・ハンクス。

プライベートライアン、キャッチミーイフユーキャン、ターミナル、テレビドラマを入れればバンドオブブラザーズで共同制作をするほど互いを信頼しあい、映画史に残る作品を作り続けた間柄ではないでしょうか。
元々はテレビのコメディアンから映画に進出しましたが、後にフィラデルフィア、フォレストガンプ、アポロ13とシリアスな作品に立て続けに出演し、気がつけばアカデミー賞常連のオスカー俳優にまで上り詰めました。
そんな彼と満を持して初のタッグを組んだプライベートライアンも見事アカデミー賞に多数ノミネート、受賞した作品であり、
その後も、グリーンマイル、キャスト・アウェイと、ヒット作、賞レースにノミネート、と彼の中での黄金期だったのではないでしょうか。
もちろん、その後の人気も変わらず、ダ・ヴィンチ・コード、ものすごくうるさくてありえないほど近い、クラウド・アトラス、キャプテン・フィリップスなどあらゆるジャンルの作品に出演し、あらゆる監督と作品作りに精を出しています。
近々の新作で言うと、ダ・ヴィンチ・コードのラングドン教授シリーズの第3弾が控えているとのこと。トムとしては唯一のシリーズものだけに今作同様期待したいですね。
ユー・ガット・メールと同じキャストですけど、あっちはトムが子憎たらしいのと、こっちのほうがロマンチックだなぁ、と。
妻を亡くした建築家のサムの一人息子が、落ち込む父のために新しい母親を探すためにラジオに電話相談、半ば無理やりサムは亡き妻との思い出を夜な夜な語るハメに。それを聞いていた新聞記者のアニーが見ず知らずの彼に魅かれていく、というもの。
もう典型的なロマコメですし、運命を信じてる女性向けと片付けてしまうのもあれですが、やっぱりこの頃のメグ・ライアンはステキですし、そんなにイケてねぇのに運命だとか言われちゃうトムもずっちぃ~なぁ!と思っちゃうくらいある意味お似合いのカップルで。でもって、息子がまたうまく引き合わせるってのもいいアクセントで。
女性はもちろんのこと、胸の奥にある小さな乙女心を抱いてる女子力高めな男性でも一人でムフっと思える作品なんじゃないでしょうかww
他キャストにマーク・ライランス、スコット・シェパード、エイミー・ライアンなどが脇を固めます。すいません、誰も知りません。
そんな、ターミナル以来久々のタッグを組んだスピルバーグ×トム・ハンクスが贈る、失敗すれば戦争が勃発するという中でたった一人立ち向かった男の映画の感想は、
あらゆる壁を乗り越えた不屈の男!素晴らしい!
以下、核心に触れずネタバレします。
そうだよコーエン兄弟脚本って忘れてたよ!
上映時間が2時間半という長丁場、しかも派手な演出もない会話劇を如何に飽きさせずに人物像を描き作品として成立させるかを考えて作られてると思いました。
スピルバーグもインタビューで同じようなことを心がけて作ったと言ってました。
で、よくセリフが頭に入ってこない映画ってたまにあって、あれ、何だっけ?って。
特にこの手の映画ってそんな症状に冒されることが私はあったりするのが悩みのタネだったりするんですが、
今作はやけに長時間にもかかわらず、セリフが理解しやすく尚且つ食い入るように見てしまったのには、コーエン兄弟の巧みな脚本が存在してたからなんだなって。
冒頭書いときながらすっかり忘れてたよ!
んでもって、スピルバーグのマジックが要所に施されてるからセリフと同時に意味のある映像が飛び込んでくるから飽きずに楽しく見ることが出来、トムハンクスが活きてきたんだな、と。
もう最強のトライアングルでしたね。
ドノヴァンの信念を目に焼き付けろ!
冒頭、映画のお約束どおりに主人公がどんな人物像なのかを説明するかの如く、保険会社の弁護を原告代理人と話す場面が流れます。
御察しの通り屈しませんw
何て言ったか忘れちゃいましたが、確か被告人じゃなく依頼人と呼べ!みたいな。
何度も訂正させるんです。
そこを見て、あーしつこい人だなぁ、とww
でもって、向こうが5件の訴訟という言い分に、ドノヴァンは「いや、1件だ!」とこれまた訂正させる。
どうやら、5人に損傷を負わせたのだから、保険会社は5人=5件分の保険金を払えっていう言い分だったんですが、
ドノヴァンはそれを1件だと主張します。
ボウリング10ピン倒してストライクだろ?ストライクが10個つくんじゃねーんだよ!と。
竜巻で家が吹っ飛んだら家具を1個ずつ数えんのか?と。
そんな少々強引な例えをぶつけて代理人の頭を悩ませますが、
そんなこと認めちゃったら会社つぶれちゃうんだよ!と、依頼人を守るのが俺の仕事だ!と彼は訴えるわけです。
この件数の件が後々の彼の行動、言動として活きてくるので見逃さないでください。
そんなドノヴァンに、マジかよっ!と思ってしまう案件が舞い込んでくるわけです。
そもそも無茶苦茶な話です。
上の決定で君に敵国のスパイの弁護やってもらうことになったからって理由でやらされるハメになったわけですから。
まぁ、細かく言えば、アメリカはカタチだけでも、即刻殺したりなんかしないでちゃんと法廷に立たせて審判しますよーってソ連に見せつけて優位にたちたいわけです。
だから、真剣にやんなくていいからさ、負けってレッテル貼られちゃうかもしんないけど、仕事なくなっちゃうわけじゃないし、敵のスパイは死刑って相場は、決まってっから、頼むよ〜、と。
この時点で敵国スパイの肩を持つことになるドノヴァンはもし死刑より軽い刑になるものなら自分や家族が危険にさらされることはわかってた上で、一応家族にも相談するんだけど、彼の中にある揺るぎない信念のもと引き受けるわけです。
その後、CIAからもつけ狙われ、あいつの情報よこせと言い寄られることになるんですが、彼はスパイの弁護士として職務を全うするわけです。
おいおい、アメリカのためなんだぞ!なんで頑なになるんだよ!と詰め寄られますが、それに対してドノヴァンは、
「君はドイツ系かい?僕はアイルランド系なんだ。そんな僕らが何をもってアメリカ人としていられるんだい?それは、憲法という方の名の下にあるからだよ。」
と言い返します。
もともと移民で出来たアメリカなんで100パーセントアメリカ人なんかいないんですよ。
アメリカの憲法にも、全ての人が平等であると記されてるそうで、決してアメリカ人が、とは書いてない、
だから、ソ連の人でスパイだけど彼にもきちんと法で裁かれる権利があると主張するわけです。
おぉー、痺れました!正に何者にも屈しない信念を貫く男!
と、感心したのも束の間、どんどん彼に無理難題が降りかかってくるんですねー。
敵国スパイ役のマーク・ライランスがめちゃいい演技!
ソ連のスパイとして画家に成りすまし、アメリカの情報を自国に流していた男アベルは、FBIの不当な捜査によって逮捕され、二重スパイになれば助けてやると取引きを持ちかけます。
しかし、彼はそれを拒んだことで裁判にかけられ、その弁護としてドノヴァンと会うことになります。
まぁ、昨今のぉ、スパイ映画っつったらぁ、隠密が基本なのにも関わらずぅ、派手にブチかます輩がぁ!まぁ多い!!
んでもって、女にモテるイケメンと来たもんだ!!
ナンセンス!!実際のスパイってのはなぁ!アベルみてぇなハゲたおっさんでジミぃ〜に絵描いて、入れ歯ハズして一服するチョーいけてない奴なんだよ!!
ってスピルバーグが言ってるようなキャスティングなんですが、
このアベル演じるマーク・ライランスの演技がまぁ飄々としてるというか淡々としてるというか、
それでいてドノヴァン同様、愛国心という名のダンコたる決意みたいなものが沸々とセリフから表情からにじみ出ていて引き込まれました。
ドノヴァンの悪戦苦闘してる姿を見て、自分を敵国スパイなのに守ってくれてる彼を見て、いつしか友情が芽生え始めるんですが、これまた顔色一つ変えない演技で淡々と言葉にするのがまたよく、なんかほっとけない人に見えてくるんですよねー。
なんだあの包容力ww
見た目、笑う犬シリーズの、コントに出てくる沼田と高田の沼田だよなぁwww
アメリカ対ソ連だけじゃない!
1番の焦点はスパイの交換なので、なんとかその辺りまで事は進むわけですが、そこへもう一つ問題と壁が生じるわけです。
その頃、ドイツはソ連が管理する東とアメリカが管理する西と別れていて、強行手段でソ連が壁を作ってしまうわけです。
で、壁ができる前に西側に逃げようと東にいる恩師を迎えに行ってる間逃げ遅れアメリカ人て理由で捕まってしまう学生が出てくるんですが、
ドノヴァンは彼も救おうとCIAの言うことを聞かず奔走します。
でも、これがまた無理難題でアメリカのスパイを捕らえてるのはソ連で、学生を捕らえてるのは東ベルリン。
でもって、こっちはソ連のスパイ1人。
そう2対1で交換することになるんですが、まあ釣り合わないっすよねー。
それをドノヴァンがどうやって交渉していくか、
やはりそこに彼の不屈の精神と揺るぎない信念があったわけです。
どうなったのかは見てのお楽しみってことで。
もうほぼほぼ解説っぽい内容でしたが、こんな男が存在して国の危機を救った事実に基づいた話を、ここまで組み立てたスピルバーグとコーエン兄弟、その男を演じたトムハンクス、じわじわとこの作品の良さが見終わった後から胸にしみてくる熱い作品でした。
このタッグはやはり鉄板でした。
武力ではなく、情報での水面下での争いの中、二国の架け橋となって奮闘した弁護士がもしいなかったら歴史は変わっていたし、それを映画にしたスピルバーグはえらい!と世界の隅っこでふんぞり返って見ていた私は思ったわけで。
2016年一発目からいいモノ見させてもらいました!
去年の反省をふまえ、満足度10段階にしましたσ(^_^;)
満足度 ☆☆☆☆☆☆☆★★★