おみやさん6 2016.01.08


(牧村成一)うわっ!ああ…。
(パトカーのサイレン)
(鳥居勘三郎)
7年前資産家の牧村成一氏が自宅で殺害された
第一発見者は別棟に住む息子の牧村茂
物盗り目的の強盗の仕業かと思われたが被害者には親子ほどに歳の違う多加子という後妻がいた
(牧村茂)白々しいんだよ。
お前だろ?お前が親父殺したんだろ?
だが同じ香道教室に通う主婦渥美香織の証言により多加子のアリバイは成立
犯人につながる手がかりは出ず事件は迷宮入りし7年の歳月が流れた
そして…
(男の声)やめろー!
(星野康夫)兵さん昨夜この付近で言い争う声がしたそうです。
(兵藤兵吾)よし聞き込みだ。
(茅野太一)はい。

(会沢桂子)うん?
(吉川新平)会沢さんこっちにも。
はい。
こっちもお願いします。
(カメラのシャッター音)
(吉川)何ですかねぇ?はて…?
(七尾洋子)おはよう。
おはよう。
あっ!おたまさんの手作りプリンおいしいんだよね〜。
いただき〜。
(おたま)まあはしたないこと!うん?いつもよりおいしくない…。
何ですって?いつもどおりでございますよ。
でもバニラエッセンスがきつすぎる。
ほら。
うんちょっと多いかもしれない。
ねっ?まあ…坊ちゃままで。
まあこのおたまの作ったプリンに文句がおありなんですか?いやいやおいしいよ。
おいしいけどもバニラって加齢とともににおいにくくなってくるんだよね。
あら〜おたまさんの鼻もとうとう老化現象が始まっちゃったんだ!洋子さん。
昨夜はまあ随分お飲みになりましたのね。
えっにおう!?シャワーも浴びてちゃんと歯も磨いてきたのに。
生ビールと焼酎のお湯割り日本酒も熱燗で召し上がりましたわね?当たってる…。
おたまの鼻を見くびらないでくださいまし!恐れ入りました。

(茅野)ガイシャは牧村茂50歳。
不動産管理会社の経営者です。
死亡推定時刻は午後9時から10時の間です。
牧村茂?牧村茂…。
あった。
おみやさんガイシャ知ってるの?牧村茂さん7年前のヤマの…ガイシャの息子さん。
(兵藤)牧村家はもともと上賀茂地区一帯の大地主で貸しビル業やアパート経営を手広くやっておりましたが茂の代になって始めた投資や先物取引に失敗して所有していた不動産の大半を失っています。
(吉川)現在会社は倒産寸前。
借金返済に追われているようです。
(村井信治)昨夜のガイシャの足取りは?9時まで会社にいてこれから人に会う約束があると社員に告げて出かけています。
(高岡俊介)現場を通りかかった主婦が言い争う声を聞いたのが9時40分頃。
死亡推定時刻とも一致してます。
ガイシャが会う約束をしていた相手は誰なのかそれを突き止めろ。
(一同)はい。
おみやさんこれ何だと思います?うん?
(桂子)遺体のそばに落ちていたっていうだけで事件と関係あるかどうかもわからないんですけどね。
これ「記紙」じゃない?きがみ?うん。
こう書く。
(桂子)ふーん。
へえ〜!これさぁもともとこういう1枚のやつを誰かが破ったんじゃないかな?
(2人)はあ〜。
えっ記紙って何ですか?お香を聞き分ける席で使う。
あっお香。
お香を聞く?お香って「嗅ぐ」と言わない。
「聞く」って言うんだよ。
へえ〜!じゃあこの記号みたいなのは?これは「香の図」っていって…。
会沢君。
何で鑑識の結果を部外者の資料課に相談するんだね?責任者は私だろ?ああ〜課長失礼しました。
課長これが何だかおわかりになりますか?これは…あれですよ。
あれって何ですか?いやだから…あれですよ。
ほう…。
洋子あれの勉強に行こう。
あれ!あれ。
あれ。
(舌打ち)あれ?あれ…?へえ〜。
はあ…。
うん?はあ…いいにおい!あれっ?はい。
はい。
何?いやここさお香を作って売るだけじゃなくてお香の楽しみ方歴史とかいろんなことを教えてるの。
香道教室。
(係員)お香の原料は100パーセント天然のものですからいくら機械化が進んでも熟練の職人の技を必要とします。
では皆様次はこちらへどうぞ。
(坂野法彦)うん。
いいんじゃない。
(女将)本日は源氏香を楽しみましょう。
…源氏香って何?お香を嗅ぎ分けるゲーム。

香元が焚いたお香を参加者が順番に嗅いでいく
1周したら香元はまた別のお香を焚いて皆に回していく
それを5回繰り返した後記紙つまり解答用紙に名前を書いて5つの香りの中で同じ香りと思われるものを横線でつないでいく
全部同じにおいに思えたけど…。
そういう場合は…。
こう書く。
それぞれ52の記号は『源氏物語』にちなんだ名前が付けられてる。
だから源氏香っていうんだけど…。
あっ!この形!そらせみ?うつせみ。
洋子『源氏物語』読んだことないの?高校の時に古文の授業でやったきり。
あっうつせみ…。
うつせみってどんなセミ?
(渥美真理絵)セミではありません。
空蝉は光源氏に愛されたある女性の名前なんですよ。
あっ人の名前。
人の名前だって。
へえ〜。
すごいですね全問正解なんて。
お香のことよく勉強してるんですか?実は私調香師を目指してるんです。
調香師?お香の調合をする仕事です。
今はまだ研修の身なんですけど4月から正式に英楽堂さんの社員になれるんです。
へえ〜。
渥美さん。
(真理絵)はい。
(女将)今日の記録いつものようにとじておいてくださいね。
(真理絵)はい。
渥美さんっておっしゃるんですか?ええ。
お母さん渥美香織さん?母をご存じなんですか?お母さんも以前この教室通ってましたよね?お母さん今お元気ですか?だと思います。
私はすでに実家を出ていますので母とはしばらく会ってないんです。
仕事がありますので。
おみやさんは何で真理絵さんのお母さん渥美香織さんを知ってるの?7年前に渥美香織は子育ても一段落して自分の時間が持てるようになったのを機に前々から興味があった香道教室に通い始めた。
彼女は誰よりも真面目で勉強熱心な生徒だった。
その教室には牧村多加子も通っていた。
元ホステスの牧村家の後妻。
香織と多加子は大津にある牧村家の別荘に1泊旅行に出かけた。
その最中に自宅で夫牧村成一氏が殺害された。
多加子さんは一晩中あなたと別荘にいたと言ってるんですが本当ですか?
(渥美香織)多加子さんと私はずっと一緒にいました。
その証言で財産目的に夫を殺害したのではないかという多加子の容疑は晴れた。
ふーん。
でその多加子って人は今は何してるの?相続した遺産を元手に事業を始めて牧村家にいた頃よりも裕福で自由な生活を送ってる。
いらっしゃいませ。
すみません鴨川東署の者ですが。
社長さんはいらっしゃいますか?泥棒捕まったんですか?泥棒?
(牧村多加子)どうしたの?最近茂さんと会いましたか?2週間ぐらい前だったかしら。
主人から相続した河原町の貸しビルを売却してもいいかと言ってきたわ。
あなたが所有してる建物のほうだけ売ればいいじゃない。
(茂)先方は土地の権利がなければ買わないと言っているんだ。
会社を倒産させないためにはあれを売るしかないんだよ!あなたの会社がどうなろうが私には関係ないわ。
こんな景気が悪い時にあの土地は売りません。
忙しいの。
話が済んだのなら帰ってちょうだい。
(机をたたく音)…くそっ!ご家族が困っているのに助けてあげなかったんですか?私と主人の結婚に最後まで反対した揚げ句私を家族と認めないと言ったのは向こうなのよ。
そんな人を何で助けなくちゃならないのよ。
念のためお伺いしますが昨夜の9時半から10時の間は何をされてましたか?商工会議所の懇親パーティーに出てたわ。
いくら仲が悪かったとはいえ私は茂さんを殺したりはしてません!
(チャイム)かわいい!うふふ…。
あっ…。
これお嬢さん高校2年?1年です。
最近は家族写真を撮る機会もありません。
主人は3年前から東京で単身赴任してますし娘も今は一人暮らししてるんですよ。
英楽堂へ行ってきました。
お嬢さんにお会いしました。
真理絵が英楽堂に?真理絵さん調香師を目指しているんだそうですね。
あなたはもうお香の勉強辞めちゃったんですか?ええ。
一緒に旅行に行った日の夜に多加子さんのご主人が強盗に殺されてしまって後味が悪くって多加子さんの顔を見るのが嫌であの後すぐお教室を辞めてしまったんです。
けど多加子さんも事件の後すぐ教室を辞めてますよね。
2人そろって辞めることはなかったんじゃないですか?多加子さんがいつ辞めたかなんか知りません。
もともとあの人とはお教室が一緒っていうだけであの頃もそんなに仲がよかったわけじゃないんです。
牧村さん。
香席に入る時は香水をつけるのはやめてください!前にもお願いしましたわよね。
(多加子)すみませ〜ん。
意地悪な姑みたいよね。
ふふっ…。
ねえうちの別荘が石山寺の近くにあるんだけど今度一緒に行かない?石山寺?あなたは石山寺をゆっくり見たいから誘いに乗ったって7年前もそうおっしゃってましたもんね?ねえねえ石山寺って滋賀県の大津にある?そう。
『源氏物語』とか紫式部のゆかりのお寺。
あなたは教室で源氏香を習ううちに『源氏物語』に興味を持った。
そうですよね?もうその話はやめましょう。
思い出したくないんです。
そうですよね。
殺人事件のアリバイ証人になってしまった経験なんてあんまり思い出したくありませんもんね。
お香なんか習わなきゃよかった。
失礼します。
(香織)お気をつけて。
あれおみやさん。
どうしてここに?そっちこそ何で?牧村茂さんの携帯電話の発信記録を調べたらここのところ毎日こちらのお宅に電話をかけてるんですよ。
ええっ?牧村不動産の社長さんからの電話でしたらマンション購入のセールスだと思います。
ちょっと興味を示してしまったら何度も何度も電話がかかるようになってしまって…。
あの…牧村茂さん多加子さんの義理の息子に当たるんですがご存じでした?いいえ。
そうなんですか?知りませんでした。
犬が吠えなかった。
7年前の事件の夜。
犬?
(犬の鳴き声)多加子にしかなついてない犬が牧村成一氏が殺害された事件の夜侵入者に対してまったく吠えなかった。
だから茂さんは多加子犯行説を主張したんだが…。
でもアリバイのある多加子には犯行は無理でしょ。
そのアリバイが嘘だったら?ちょっと待ってよ。
何で香織さんが嘘をつく必要があるんですか?香織さんと多加子は香道教室が一緒だったというだけで親しい間柄ではなかったんですよ。
そんな殺人の片棒を担ぐような嘘の証言をするわけないわ。
当時我々もそう判断した。
だけど彼女に嘘をつかなきゃならない理由があったとしたらどうする?どんな理由?それはまだわかんないけど…。
お香なんか習わなきゃよかった。
おみやさんおみやさん!水でにじんじゃったほうの記紙に何ていう字が書いてあったかわかったの!こっちが2文字で「空蝉」。
空蝉…。
(桂子)うん。
で裏が3文字で上が「か」下が「り」。
真ん中がまだわかんないんですけどね。
これ「お」じゃないの?「かおり」…。
渥美香織?牧村茂の殺害現場に香織さんの名前が書かれた記紙が落ちていたってどういうこと?空蝉…。
洋子出かける。
あっ…はい!いってらっしゃい!
(香織)帰るんです!
(真理絵)痛い!もうやめてお母さん離してよ!帰るって言ってるでしょ!ちょっとちょっとちょっと…どうしたんですか?
(香織)あっ真理絵!あっ…!お嬢さんに何があったんですか?刑事さんには関係のないことですから!あっすいません。
香織さんをご存じなんですか?誰のことですか?いや今の女性。
あの…昔ここの生徒さんだったらしいんですけど。
ああ…7年前の生徒さんですね。
でも名前までは覚えてませんよ。
7年前…。
お母さんと何をもめていたの?今すぐ英楽堂を辞めろって。
えっ?母は私が調香師になることに反対なんです。
どうして?わかりません。
専門的な仕事に就きたいっていう私の考えに母は賛同してくれていたのに調香師を目指すと言った途端…。
(香織)ダメよ。
許しませんからね。
(真理絵)何で?お母さんだってお香好きで習ってたじゃない!仕事ならいくらだってあるでしょ!よりによって調香師なんて絶対にダメ!
(真理絵)お母さん!じゃあお母さんに内緒で研修を受けていたのね?私坂野さんみたいなお香が作りたいんです。
坂野さん?香織さん。
真理絵さんが調香師になることになぜ反対なんですか?刑事さん達こそどうしてあんなところに?今日は教室に行って記録を見せてもらいました。
英楽堂の香道教室ではその回ごとの香席の記録がずっと保存されてるんです。
まあその記録によりますとあなたが教室に通ってた頃空蝉って答えたことって1回もないんですね。
あなた教室以外で源氏香をどこでなさってたんですか?どうしてそんなことを訊くんですか?牧村茂さんの殺害現場に記紙が落ちてました。
空蝉っていう記号とあなたの名前が書かれた記紙。
あなたはいつどこで答えが空蝉になる源氏香をなさったんですか?お教室以外で源氏香なんかしていません。
そんな記紙私のじゃありませんから!洋子ちょっと調べてくれる?えっ?はい。
坂野法彦は高校を卒業と同時に英楽堂に入社し仕事一筋で調香の腕を磨き6年前京都の伝統文化技術展では自作のお香が金賞を受賞。
現在は英楽堂の製造責任者。
結婚歴はなし。
香道教室にも参加していて熟練者として初心者を指導。
真理絵さんが英楽堂で働きたかったのも坂野さんの下で勉強したかったからなんだって。
でも何でおみやさんは坂野さんが気になるの?彼は香織さんのことを知らんぷりした。
彼女が7年前の生徒であることを知ってるのにあえて知らないふりをした。
彼女も彼を無視した。
えっ?何で?お互いを知らないふりをしなければならない何か事情でもあるのかしら?空蝉かな…。
うん?あっ洋子読んでみる?『源氏物語』。
ああうんうん!
(小池仁美)『源氏物語』って千年以上も読み継がれているある意味日本一のベストセラーですよね。
(福島重夫)そやけど…主人公が光源氏いうことは皆知ってても全巻読み切ったいう人は意外と少ない感じしますよね。
長いもんね。
ええ。
(福島雅人)僕は読みましたよ。
女将さんに借りて。
すごいじゃない雅人君!お前漫画しか読まへんのかと思ってた…。
いやいやいや…。
(仁美)あら。
『源氏物語』は漫画にもなってるんですえ。
読まはるのやったら貸してあげましょか?うん!あっ…バカにしないでよ。
私文学少女よ。
ねっおみやさん。

(鼻歌)渥美香織は牧村茂からの電話はマンションのセールスだったと言ってるんですが調べたところ現在牧村不動産はマンション販売を扱っていないんです。
それで近隣に聞き込みをかけたところ茂は何度も渥美家の前に来ていたんです。
(チャイム)いるのはわかってるんだよ…!
(ドアノブを回す音)
(ノック)おいいるんだろ!出て来い嘘つき女!嘘つき女…。
7年前のアリバイ証言を何で今頃…。
渥美香織という女とガイシャの接点を調べろ。
だったらおみやさんに訊いたほうが早いんじゃないですか?あのな…頼むから資料課を当てにするな。
ああっ課長!例の泥棒の件はどう思いますか?それは今回のヤマとは関係ないだろ。
泥棒って何?先週牧村多加子の店の社長室に泥棒が入ったんです。
通報を受けて二条署の盗犯係が出向いてるんですがね。
別に盗られた物は何もありませんわ。
盗られた物はない?はい。
現金の入った金庫は社長室の隣の事務室にあるんですが事務室には侵入の痕跡はなかったそうです。
牧村茂が殺害された時刻の多加子のアリバイは成立してるわけですから…。
まあ課長の言うとおり泥棒と今回の殺しは関係ないのかもしれませんが。
(吉川)何か気になるんですよね。
(兵藤)ええ。
洋子出かけよう。
洋子?洋子。
洋子!この石山寺は紫式部が『源氏物語』を思いついた場所だっていわれてる。
現に物語の中でも光源氏がこの石山寺を参拝する場面が何度も描かれてる。
香織さんは7年前このお寺を見るために多加子の誘いに乗ったと言ってましたね。
鴨川東署の鳥居さんでしたよね?はい。
わざわざご足労いただいてすみません。
うちの別荘をご覧になりたいってどういうことかしら?7年前香織さんあなたのアリバイ偽証したんじゃないんですか?彼女がそう言ったの?違います。
じゃあ誰がそんなことを…。
茂さんです。
香織さんのことを嘘つきだって言ってました。
(ため息)茂さんの言うことなんて真に受けないでよ。
あの人は借金に苦しむあまり私が相続した財産を狙ってたのよ。
そうですよね。
もしあなたがご主人を殺した真犯人ならあなたの相続権はなくなって茂さんがその分を相続するってことになりますもんね。
もしもよ。
もし私が犯人でその夜のアリバイを香織さんに偽証してくれと頼んだとして彼女がそれを引き受けると思う?いえ…普通あり得ないでしょ。
でしょ。
そんなことをしたら自分も罪に問われる。
彼女は私のためにそこまでしてくれる人じゃないわ。
いやあなたのためじゃなくて自分のためだったらどうします?刑事さんは何か確証があってそうおっしゃっているかしら?確証を得たいんです。
だから別荘を見せていただけますか?いいわよ。
別荘を見たところで何かがわかるとは思えないけど。
ご案内しますわ。
この別荘は主人の父親が建てたものですの。
香織さんと来た時はこの部屋で2人並んで寝たわ。
あれ?おみやさん?おみやさん?帰ろうか。
えっ?何かわかったの?うんわかったっていうか…うん。
「新しい伝言1件です」「多加子です」「7年ぶりに石山寺へまた行きたいわね」「連絡待ってます」
(チャイム)ちょっと散歩しませんか?大津の牧村家の別荘へ行ってきました。
お香の道具もみんなそろってる。
7年前あなたあの別荘で源氏香をやったんじゃないんですか?ただあなたも多加子さんも初心者だ。
2人だけじゃ心もとない。
だからもう1人の人物が参加した。
やめてください!そんな話聞きたくありませんから。
その方って…。
この方?真理絵さんのために一緒に来てほしいって言うから来たんですよ。
これは何の真似ですか?7年前の真実を明らかにすることは真理絵さんのためでもあるんです。
調香師になることをお母さんが反対する理由がわからなくて真理絵さんは悲しんでます。
7年間あなたは罪の意識に苛まれてきた。
偽証した罪…家族を裏切った罪…。
『源氏物語』に出てくる空蝉は夫も娘もいる貞淑な人妻です。
ですがある日年下の光源氏の押しの強さに負けて過ちを犯してしまいます。
たった一度の過ち。
ずっと後悔してました。
ずっと…。
主人に不満があったわけでもなく真理絵のことも大切に思ってました。
でも坂野さんのそばにいると…。
(坂野)いつも熱心ですね。
こうやって自分のためにお勉強する時間が今はとっても楽しいんです。
何でお香を勉強しようと思ったんですか?名前が「かおり」だから。
ふふっ…単純でしょ?ふふふっ。

(多加子)香織さんは本当に勉強熱心ね。
ねえ坂野さんうちの別荘で源氏香の個人レッスンをしてくれないかしら?私と香織さんのために。
(香織)えっ?もっと源氏香を勉強したいって言ってたじゃない。
坂野さんも協力してくれるわよ。
ええ僕はいいですよ。
主人に聞いてみないと…。
(香織の声)そう言いながらも行くって決めていました。
3人で行くのだからいいのだろうって。
でも別荘に着いてみると…。
(多加子)ごめん。
私用事ができたからいったん帰るわ。
(香織)えっ?明日の朝迎えに来るわ。
(香織)ちょっと多加子さん!もう…。
どうしましょう?私達も帰りますか?ええ…。
でもここまでお支度をしていただいているんで源氏香だけやって帰りませんか?そうしましょうか。
出香。
空蝉…。
坂野さん…。
坂野さんやめて。
今だけ…。
今だけこうさせてください。
坂野さん…。
翌朝多加子さんが迎えに来る前に坂野さんは帰りました。
多加子さんには気づかれていないと思ってました…。
ありがとう。
楽しかったわ。
あなた別荘に忘れ物したでしょ?
(香織)忘れ物?男と女2人だけの濃密な10時間。
浮気かなぁ。
これは私が預かっておく。
だから昨日の夜は坂野さんとじゃなくて私とずーっと一緒にいたことにしておいてね。
じゃあね。
その翌日あなたのもとに刑事がやって来た。
多加子さんと私はずっと一緒にいました。
私のせいです。
私が香織さんへの気持ちを止められなかったせいで…香織さんは嘘の証言をしなければならなくなってしまった。
私は多加子に頼みに行きました。
(坂野)香織さんに嘘をつかせるのはやめてください。
(多加子)あら私はあんたに感謝されると思ってたんだけど。
感謝?世間知らずな主婦と仕事一筋の職人2人が互いに惹かれ合ってるのに気づいたから別荘に誘ったのよ。
2人だけになればさすがに奥手のあんたも手を出すと思ってお膳立てしてあげたのよ。
(ため息)あんたと香織がいいことしてる間私にはやらなきゃならないことがいっぱいで大変だったわよ。
やっぱりあんたが…。

(成一)おおっ…。
(刺す音)
(成一)うう…ああっ…。
うわっ!ああ…。

(坂野)自分のアリバイを作るために香織さんと私を利用したのか?警察に言います。
そんなことをして不幸になるのは香織よ。
ああいう家庭の中しか知らない女はたった一度の浮気でも家族にばれたら生きていけないわよ。
それ以来3人が会うことはありませんでした。
ところが先週多加子さんの店に泥棒が入った。
何も盗られたものはないっていう話ですが実は記紙が盗まれてた。
盗んだのは牧村茂さん。

(香織)以前から私の証言を疑っていた牧村さんは記紙を見つけて私と多加子さんの間で7年前どんな取引があったのかを知りたがりました。
(ノック)
(茂)おいいるんだろ!開けろ!嘘つき女!
(茂)おい!わかってるんだよ。
(香織の声)私はもうどうしたらいいかわからなくなって多加子さんに7年ぶりに電話をかけました。
(多加子)わかった。
こっちで何とかするから。
(ため息)それで多加子さんはあなたに連絡してきた。
ええ。
記紙を取り返してこいって言われました。
香織さんが困ってるからって。
私は牧村さんを呼び出し…。
だからその紙には何の意味もありません!そんなわけない。
多加子は鍵のかかる引き出しで大事に保管してたんだ。
香織って女が多加子をかばうのはこの紙と関係があるんじゃねえのか?いや…香織さんは7年前の事件には何の関係もありません。
彼女に付きまとうのはもうやめてください。
(茂)何するんだこの野郎!何やってるんだ!
(坂野)やめろ!
(茂)この野郎!
(殴る音)
(坂野)ううっ…!
(茂)オラーッ!俺はな借金がかさんでどうにもならねえんだよ!多加子が持っていった遺産を取り戻さなきゃいけねえんだ!この野郎!
(坂野)やめろー!うっ…。
(咳)牧村さん…。
警察に行くわけにはいきませんでした。
すべてが明るみに出れば香織さんが苦しむことになる。
7年前2人の秘密を守るためについた香織さんの嘘は犯人隠匿につながりました。
僕はそれを肯定できません。
ですが2人の秘め事はある賞をもたらした。
賞?伝統文化技術展金賞タイトル「うたかたの恋」。
香織さんへの思いがこの作品を作らせたんですよね。
お香を作る以外に取り得のない私にほんの一瞬でも香織さんは振り向いてくれた。
あの日のことは私にとって忘れ難い幸せな思い出なんです。
坂野さん…。
同行願います。

(茅野)さあ…。
今日は戻らないからよろしく。
はい。
(兵藤)7年前の牧村成一さんが殺害された事件のことでお話が。
署までご同行願います。
私が調香師になりたいと思ったのはねお香を勉強しに行ってた時のお母さんが輝いてたからなんだ。
あの時お母さんは恋をしてたんだね。
ごめんね…。
子供の時に知ってたらショックだったかもしれないけど今ならお母さんの気持ちわかるよ。
坂野さん素敵な人だもんね。
ありがとう。
ありがとう…。
帰ろうお母さん。
(泣き声)2016/01/08(金) 09:55〜10:53
ABCテレビ1
おみやさん6[再][字]

【第12話】殺人現場に落ちていた一枚の紙きれ。そこには記号のようなものが書かれていて…。源氏香、石山寺など“源氏物語”の世界へ誘う愛憎の殺人トリックをお楽しみに!

詳細情報
◇番組内容
京都鴨川東署資料課の窓際課長・鳥居勘三郎(渡瀬恒彦)が、部下の七尾(櫻井淳子)と迷宮入りした難事件に挑む!
◇出演者
渡瀬恒彦、櫻井淳子、七瀬なつみ、不破万作、林泰文、片桐竜次、小野寺丈、一條俊、相本久美子、菅井きんほか
【ゲスト】藤吉久美子、菅原大吉、金子さやか、久世星佳

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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