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ショタ青黒でセクピスパロ

高邑きゆ

2013年9月3日 19:28

illust/38227299から　▼　無いなら作ればいいじゃない、がモットーのアッパー系腐女子です。　▼　（9/7追記）ランキング入りさせていただいていたようです、ありがとうございます。事務局からのメールなんて久々で何が起こったかと思った。みなさんコメレスとかってどこでしてるんですかね？コメ欄にてレスさせてもらってます。続き…というか、青峰視点と緑間との話とかぽろぽろと書きたいので頑張ります。　▼　頑張りました。novel/2849507　▼　緑間の話もできました。novel/2857465

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セクピスはパロディを読んだだけの知識しかないにわかです。
そんなにわか野郎がウィキ先生とかじった程度の知識と独自解釈や妄想や捏造で書いたものです。
設定だけ借りた状態。
そして青黒でやる意味もなかった。オリジナルでやれ。
ただケモナーと二次元ショタコンの血が騒いだ結果、こうなった。
続かない。

以上を踏まえたうえでどうぞ。

[newpage]

　一月の末日。その日生まれたボクは、未熟児でとても体の弱い子だった。
　生まれてすぐにボクは保育器に入れられて、母に抱かれることのないまま産後の肥立ちが悪かった母は亡くなったと聞いた。
　ボクが保育器から出られたのは数ヵ月後のことで、その頃には母を亡くした父は父ではなくなっていた。
　まだ物心着く前の頃のことなのでよく覚えていないが、その当時受けた虐待がきっかけでボクは人間ではなくなった。正確には、動物の遺伝子を受け継ぐ人間になった。
　ボクのような動物の遺伝子を持つ存在は『斑類』と言うらしい。そして、それらは本来は生まれながらに『斑類』であるのだが、時たま、ボクのように偶発的な衝撃により人間から『斑類』になる場合がある。そんなボクのような存在を、『先祖返り』と言うらしい。
　更に『斑類』の中にも種族があり、その中で行くと体に残るオセロットという動物のDNAから、ボクは猫又に当たるのだという。

　ボクが『先祖返り』の『斑類』になった日、父は獄中の人となった。
　どういった経緯かはよくわからないが、ボクは通報してくれたアパートの隣人のおかげで一命を取り留めることができたらしい。
　妻を亡くした父は、彼の母親とボクを育ててくれていたらしいが、祖母はその日、実の息子の手により還らぬ人となったそうだ。
　両親も親族も失い天涯孤独の身の上となったボクは、たまたまボクが運び込まれた病院に勤めていた『斑類』の医師、緑間氏の計らいによりその邸宅にて保護されることになった。
　というか、たまたま運び込まれた病院が表向きは普通の病院ながら、同類にとっては有名な『斑類』専門の病院で、緑間氏はそこの院長だった。
　緑間氏の家は代々続く蛇の目の家系であり、他の種族と交じることを良しとしない家柄だったため、ボクは保護されただけで済んだ。
　物心がつく頃、ボクは魂現のコントロールや『斑類』について学ぶため、緑間氏の母である女性と共に離れに移り住んだ。
　日本一の蛇の目の家系であり、『斑類』のコミュニティの中ではその医療関係において世界的にもトップクラスを誇る緑間家現当主の緑間氏には、一人息子の真太郎くんがいた。しかし彼はボクと同い年だったが緑間氏の後を継いで家督を継がねばならないとかで、ボクのような拾われっ子とは扱いが違って当然だった。
　緑間家の人は蛇の目らしく寒さに弱い人ばかりだったので、部屋の温度は一年中一定に保たれていて、元より大人しい性分だったのと、人様の家に厄介になっているという遠慮から一日中部屋で本を読んでばかりだったボクは汗をかいたことがあまりない。
　真太郎くんも大人しいタイプというか大人びた人で、緑間氏の計らいで彼の遊び相手としての任務を授かっていたボクだが、結局二人でする事は読書か、彼がピアノを弾くのを聞いているだけだった。
　小学校へ上がる前の年、真太郎くんは真新しい制服と通学用のカバン、革靴をおばあさんに買ってもらっていた。
　ボクはその頃、緑間家の上層部の方々の中で将来の嫁ぎ先を決められており、そちらに気に入ってもらえれば今後はそちらの家にご厄介になることが決まっていたので、小学校へ上がる準備などは何もなかった。
　真太郎くんは気難しいがとても頭の良い人で、そして優しい人だ。大人たちがボクをどう利用するか話し合っているのも知っていて、それでもボクの友人でいてくれた。
　蛇の目にしては珍しく情の篤い彼は、それゆえに酷く傷つきやすく繊細だ。きっと、彼は蛇の目である自分に好悪両方の感情を抱いているのだろう。
　直接聞いたことはないが、一族を誇りに思いその理念の元に生きようと徹する彼が、ときたま年にそぐわない疲れた表情をするのを、ボクは知っている。

　緑間家で覚えたのは『斑類』に関することばかりではない。魂現のコントロール、一般的な常識、人間社会に紛れて生活するという事、その他一般教養はもちろんだ。
　他には人間観察の癖。これは少しでも迷惑をかけまいと必死に相手の機微を伺い考えているうちに身に付いた。
　二つ目は影の薄さ。これは観察をするのにじっと見てしまい、それを嫌がられたため相手に気付かれないよう観察するために身に付いた。今では視界に入っていても気付かれないし、隣にいても声をかけるまで気付かれない。
　そんなボクをおばあさんはあまり好いてはいないようだったが、それもあと一年もせずにお別れとなるのだから気にしないことにしていた。

　年が開けて数日、新年の挨拶や片付けが一通り落ち着いた頃、ボクは緑間家を出ることとなった。
　おばあさんに嫁ぎ先の話を聞きながら思ったことは、予想よりも早かったな、というぐらいのものだった。
　お別れの日の朝。この真冬の寒さの中、わざわざ神社まで行って買ってきてくれたお守りを渡してくれた真太郎くんは、目元を赤くしてたとえ離れても友人だと言ってくれた。嬉しかった。とても嬉しくて、ボクは少しだけ泣いてしまった。
　お守りを握りしめて、おばあさんと共に車に乗り込んだ。
「よろしいですか、テツヤさん。ちゃんと教えたとおり礼儀正しくするんですよ」
　車内ではおばあさんが念を押すようにもう何度もされた注意を繰り返す。
「返事」
「……はい」
　ぴしゃりと叱られて小さく答えた。
「はぁ……、本当にあなたって人は出来が悪いから心配です。良いこと、これから会うのはあなたにとって――――」
　ボクの荷物は小さな旅行鞄に簡単に収まる程度の衣類しかなく、それを膝に乗せて抱えながらボクはおばあさんの話に生返事をしつつ、これから厄介になるという家のこと、そしてボクの夫となる人のことを考えた。

　到着した家は、緑間邸とはまた違う大きなお屋敷だった。
　洋風の緑間邸に対し、こちらは和風のお屋敷だ。大きくずっしりとした見るからに重そうな門扉は来るものを拒むかのようにそびえ立ち、そこから左右に伸びる背の高い塀も威圧的だ。
　おばあさんは歳以上に寒さで思うように動けないため、車を運転してきた若い犬神人の男の人が支えながら歩いている。ボクは二人のあとを追って、迎え入れられた門の内へと入った。
　足を踏み入れたそこは門からお屋敷までの道しるべのように飛び石が配置され、砂利が敷き詰められていた。左右には塀に沿って等間隔に大きな木が植わっている。今はひっそりと枝を寒風にゆらし物悲しげに立っているが、きっと夏になれば生を取り戻したかのように葉が青々と生い茂り木陰を作るのだろう。
　緑間邸よりも広い庭は、この屋敷に住む人々の活動性を垣間見せている気がした。

　お屋敷に上がると迎に出てくれたのはお屋敷のご当主の娘さん、つまりボクのお義母さんとなる人で、この荘厳なお屋敷の雰囲気にはあまり似合わない明るく溌剌とした美人だった。
「この寒い中わざわざすみませんね。さ、どうぞお上がりになって、客間を温めておきましたから早くそちらに行きましょう」
　はきはきと気持ちの良い話し方をする女性は、着物以外の着衣を持たないおばあさんに比べると着物に慣れていないようで、普段は洋服を着ているらしかった。
　挨拶もそこそこに女性に連れられ入った部屋は確かに暖かく、ボクも知らず寒さで強張っていた肩の力が抜けてほっと息をついた。
「今お茶をお持ちしますから、お寛ぎになっていてくださいな」
　そう言っておばあさんと運転手、そしてボクの三人を残して彼女は部屋を出て行った。
　少しだけ、緊張が解ける。
　けれど、その解けた緊張はすぐに張り直さなければならなかった。
　足音もなく客間の襖を開いたのはおばあさんよりも年嵩の男性で、顔に刻まれた深い皺が厳格な雰囲気を醸し出していた。
　深い色合いの着流しに羽織を着た男性は、ボクらの向かいに腰を下ろすと一度ボクを見たあと、おばあさんへと向き直った。
　そこからは大人の会話というやつで、ボクはただ失礼のないように大人しく、静かに、正座した足が痺れても背筋を正しておばあさんの隣りに座っていた。
　途中、一度席を外した女性がお茶を持って戻ってきたが、彼女は静かに湯呑を置くとまた部屋を出て行ってしまった。

　小一時間ほどだろうか、おばあさんたちの話が終わった頃、お茶を出してくれたときと同じように静かに入ってきた女性は、しかし先程とは違いその後ろにもう一人、ボクとそう変わらない年頃の男の子を連れて来た。

　ああ、とすぐに理解した。
　この子が、ボクの旦那になる人なのだ。
　ボクは、この子の子供を産まなくてはならないのだ。

　引きこもってばかりで日の光をあまり浴びたことのないボクとは真逆の褐色の肌は、真冬だというのに半袖半ズボンの軽装から惜しげもなく晒されていて、そこには細かな傷や怪我のあとが見えた。
　黒にも見えるがよく見れば深い藍色の髪を短く切った活発そうな風貌の彼は、鼻の頭に絆創膏を貼っていかにもわんぱくな年相応の子供らしいオーラを全身から放っていた。
　同い年の友人と言えば真太郎くんしか知らないボクは、テレビの中でしか見たことのないような、いかにも元気いっぱいです、と言わんばかりの風貌の彼に若干気圧されていた。
　彼は子供の手足には不釣り合いな大きなボールを脇に抱えたまま、髪と同色の瞳をじっとこちらに向けていた。まるで値踏みするような視線は、警戒心の強い猫又ゆえのものだろう。

「テツヤさん、ご挨拶なさい。この方が青峰家次期当主の大輝さんですよ」
　おばあさんに促され、痺れた足でもたつきながらなんとか転ばないように立ち上がった。
　目の前の彼は、思ったよりも背が高かった。同い年だと聞いていたので少し驚いた。
「あなたはこの方の子を産むために生きているんですよ」
　おばあさんの言葉に背を押されるようにして深く、深く礼をした。
　ここへ来るまでに何度も練習させられた挨拶文を口にする。
「はじめまして、黒子テツヤです。魂現はオセロットで、中間種。先祖返りの猫又です」
　緊張だか畏怖だかよくわからないもので口の中がカラカラに乾いていた。
　足の裏はぴりぴりと痺れて痛み、正直、真っ直ぐ立つのも難しい。
　今すぐにでも冷たい水で喉を潤したかった。
　このまま座り込んで、泣いて駄々を捏ねてみたかった。
　けれどボクの口からは練習通りの言葉が淡々と紡がれるだけだった。
「あなたの子を、ボクに産ませてください」

　目の前の絶対的な存在が息を呑む音だけが聞こえた。

　これがボクと青峰大輝との出会いで、すべての始まり。

2013/09/03

セクピスはパロディを読んだだけの知識しかないにわかです。
そんなにわか野郎がウィキ先生とかじった程度の知識と独自解釈や妄想や捏造で書いたものです。
設定だけ借りた状態。
そして青黒でやる意味もなかった。オリジナルでやれ。
ただケモナーと二次元ショタコンの血が騒いだ結果、こうなった。
続かない。

以上を踏まえたうえでどうぞ。

[newpage]

ボクが『先祖返り』の『斑類』になった日、父は獄中の人となった。
　どういった経緯かはよくわからないが、ボクは通報してくれたアパートの隣人のおかげで一命を取り留めることができたらしい。
　妻を亡くした父は、彼の母親とボクを育ててくれていたらしいが、祖母はその日、実の息子の手により還らぬ人となったそうだ。
　両親も親族も失い天涯孤独の身の上となったボクは、たまたまボクが運び込まれた病院に勤めていた『斑類』の医師、緑間氏の計らいによりその邸宅にて保護されることになった。
　というか、たまたま運び込まれた病院が表向きは普通の病院ながら、同類にとっては有名な『斑類』専門の病院で、緑間氏はそこの院長だった。
　緑間氏の家は代々続く蛇の目の家系であり、他の種族と交じることを良しとしない家柄だったため、ボクは保護されただけで済んだ。
　物心がつく頃、ボクは魂現のコントロールや『斑類』について学ぶため、緑間氏の母である女性と共に離れに移り住んだ。
　日本一の蛇の目の家系であり、『斑類』のコミュニティの中ではその医療関係において世界的にもトップクラスを誇る緑間家現当主の緑間氏には、一人息子の真太郎くんがいた。しかし彼はボクと同い年だったが緑間氏の後を継いで家督を継がねばならないとかで、ボクのような拾われっ子とは扱いが違って当然だった。
　緑間家の人は蛇の目らしく寒さに弱い人ばかりだったので、部屋の温度は一年中一定に保たれていて、元より大人しい性分だったのと、人様の家に厄介になっているという遠慮から一日中部屋で本を読んでばかりだったボクは汗をかいたことがあまりない。
　真太郎くんも大人しいタイプというか大人びた人で、緑間氏の計らいで彼の遊び相手としての任務を授かっていたボクだが、結局二人でする事は読書か、彼がピアノを弾くのを聞いているだけだった。
　小学校へ上がる前の年、真太郎くんは真新しい制服と通学用のカバン、革靴をおばあさんに買ってもらっていた。
　ボクはその頃、緑間家の上層部の方々の中で将来の嫁ぎ先を決められており、そちらに気に入ってもらえれば今後はそちらの家にご厄介になることが決まっていたので、小学校へ上がる準備などは何もなかった。
　真太郎くんは気難しいがとても頭の良い人で、そして優しい人だ。大人たちがボクをどう利用するか話し合っているのも知っていて、それでもボクの友人でいてくれた。
　蛇の目にしては珍しく情の篤い彼は、それゆえに酷く傷つきやすく繊細だ。きっと、彼は蛇の目である自分に好悪両方の感情を抱いているのだろう。
　直接聞いたことはないが、一族を誇りに思いその理念の元に生きようと徹する彼が、ときたま年にそぐわない疲れた表情をするのを、ボクは知っている。

緑間家で覚えたのは『斑類』に関することばかりではない。魂現のコントロール、一般的な常識、人間社会に紛れて生活するという事、その他一般教養はもちろんだ。
　他には人間観察の癖。これは少しでも迷惑をかけまいと必死に相手の機微を伺い考えているうちに身に付いた。
　二つ目は影の薄さ。これは観察をするのにじっと見てしまい、それを嫌がられたため相手に気付かれないよう観察するために身に付いた。今では視界に入っていても気付かれないし、隣にいても声をかけるまで気付かれない。
　そんなボクをおばあさんはあまり好いてはいないようだったが、それもあと一年もせずにお別れとなるのだから気にしないことにしていた。

年が開けて数日、新年の挨拶や片付けが一通り落ち着いた頃、ボクは緑間家を出ることとなった。
　おばあさんに嫁ぎ先の話を聞きながら思ったことは、予想よりも早かったな、というぐらいのものだった。
　お別れの日の朝。この真冬の寒さの中、わざわざ神社まで行って買ってきてくれたお守りを渡してくれた真太郎くんは、目元を赤くしてたとえ離れても友人だと言ってくれた。嬉しかった。とても嬉しくて、ボクは少しだけ泣いてしまった。
　お守りを握りしめて、おばあさんと共に車に乗り込んだ。
「よろしいですか、テツヤさん。ちゃんと教えたとおり礼儀正しくするんですよ」
　車内ではおばあさんが念を押すようにもう何度もされた注意を繰り返す。
「返事」
「……はい」
　ぴしゃりと叱られて小さく答えた。
「はぁ……、本当にあなたって人は出来が悪いから心配です。良いこと、これから会うのはあなたにとって――――」
　ボクの荷物は小さな旅行鞄に簡単に収まる程度の衣類しかなく、それを膝に乗せて抱えながらボクはおばあさんの話に生返事をしつつ、これから厄介になるという家のこと、そしてボクの夫となる人のことを考えた。

到着した家は、緑間邸とはまた違う大きなお屋敷だった。
　洋風の緑間邸に対し、こちらは和風のお屋敷だ。大きくずっしりとした見るからに重そうな門扉は来るものを拒むかのようにそびえ立ち、そこから左右に伸びる背の高い塀も威圧的だ。
　おばあさんは歳以上に寒さで思うように動けないため、車を運転してきた若い犬神人の男の人が支えながら歩いている。ボクは二人のあとを追って、迎え入れられた門の内へと入った。
　足を踏み入れたそこは門からお屋敷までの道しるべのように飛び石が配置され、砂利が敷き詰められていた。左右には塀に沿って等間隔に大きな木が植わっている。今はひっそりと枝を寒風にゆらし物悲しげに立っているが、きっと夏になれば生を取り戻したかのように葉が青々と生い茂り木陰を作るのだろう。
　緑間邸よりも広い庭は、この屋敷に住む人々の活動性を垣間見せている気がした。

お屋敷に上がると迎に出てくれたのはお屋敷のご当主の娘さん、つまりボクのお義母さんとなる人で、この荘厳なお屋敷の雰囲気にはあまり似合わない明るく溌剌とした美人だった。
「この寒い中わざわざすみませんね。さ、どうぞお上がりになって、客間を温めておきましたから早くそちらに行きましょう」
　はきはきと気持ちの良い話し方をする女性は、着物以外の着衣を持たないおばあさんに比べると着物に慣れていないようで、普段は洋服を着ているらしかった。
　挨拶もそこそこに女性に連れられ入った部屋は確かに暖かく、ボクも知らず寒さで強張っていた肩の力が抜けてほっと息をついた。
「今お茶をお持ちしますから、お寛ぎになっていてくださいな」
　そう言っておばあさんと運転手、そしてボクの三人を残して彼女は部屋を出て行った。
　少しだけ、緊張が解ける。
　けれど、その解けた緊張はすぐに張り直さなければならなかった。
　足音もなく客間の襖を開いたのはおばあさんよりも年嵩の男性で、顔に刻まれた深い皺が厳格な雰囲気を醸し出していた。
　深い色合いの着流しに羽織を着た男性は、ボクらの向かいに腰を下ろすと一度ボクを見たあと、おばあさんへと向き直った。
　そこからは大人の会話というやつで、ボクはただ失礼のないように大人しく、静かに、正座した足が痺れても背筋を正しておばあさんの隣りに座っていた。
　途中、一度席を外した女性がお茶を持って戻ってきたが、彼女は静かに湯呑を置くとまた部屋を出て行ってしまった。

小一時間ほどだろうか、おばあさんたちの話が終わった頃、お茶を出してくれたときと同じように静かに入ってきた女性は、しかし先程とは違いその後ろにもう一人、ボクとそう変わらない年頃の男の子を連れて来た。

ああ、とすぐに理解した。
　この子が、ボクの旦那になる人なのだ。
　ボクは、この子の子供を産まなくてはならないのだ。

引きこもってばかりで日の光をあまり浴びたことのないボクとは真逆の褐色の肌は、真冬だというのに半袖半ズボンの軽装から惜しげもなく晒されていて、そこには細かな傷や怪我のあとが見えた。
　黒にも見えるがよく見れば深い藍色の髪を短く切った活発そうな風貌の彼は、鼻の頭に絆創膏を貼っていかにもわんぱくな年相応の子供らしいオーラを全身から放っていた。
　同い年の友人と言えば真太郎くんしか知らないボクは、テレビの中でしか見たことのないような、いかにも元気いっぱいです、と言わんばかりの風貌の彼に若干気圧されていた。
　彼は子供の手足には不釣り合いな大きなボールを脇に抱えたまま、髪と同色の瞳をじっとこちらに向けていた。まるで値踏みするような視線は、警戒心の強い猫又ゆえのものだろう。

「テツヤさん、ご挨拶なさい。この方が青峰家次期当主の大輝さんですよ」
　おばあさんに促され、痺れた足でもたつきながらなんとか転ばないように立ち上がった。
　目の前の彼は、思ったよりも背が高かった。同い年だと聞いていたので少し驚いた。
「あなたはこの方の子を産むために生きているんですよ」
　おばあさんの言葉に背を押されるようにして深く、深く礼をした。
　ここへ来るまでに何度も練習させられた挨拶文を口にする。
「はじめまして、黒子テツヤです。魂現はオセロットで、中間種。先祖返りの猫又です」
　緊張だか畏怖だかよくわからないもので口の中がカラカラに乾いていた。
　足の裏はぴりぴりと痺れて痛み、正直、真っ直ぐ立つのも難しい。
　今すぐにでも冷たい水で喉を潤したかった。
　このまま座り込んで、泣いて駄々を捏ねてみたかった。
　けれどボクの口からは練習通りの言葉が淡々と紡がれるだけだった。
「あなたの子を、ボクに産ませてください」

目の前の絶対的な存在が息を呑む音だけが聞こえた。

これがボクと青峰大輝との出会いで、すべての始まり。

2013/09/03

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